すごいプレゼン・すごい資料をつくる「違い」を計ってみよう:書評「仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする」

とにかく数字にこだわろう

この本はまず、表面的な仕事につかえるTips集として非常に優秀だ。坂口氏は製造業での資材調達に関わった経験から現在は調達・購買コンサルタントとして活動している。タイトルから手に取り、読みやすさに誰だこの人…と著者名を確認して「これは間違いない」と思った。以前からラジオでよく聞いていたキレの良い人だ!という印象から購入決定。

そう、タイトルから受けた印象で「なるほど」と思い手にとったのだった。「150字」という点に惹かれたのだ。仕事の速さよりも文章の読みやすさを考えた時に、一段落150字程度のカタマリを並べると論理構成が目に飛び込んでくるようで、つかみやすくていいな……と、様々なブログを読みながら感じていたのだった。

このように、実際に効果的だと感じることを一つの型に落としこむために必要な事が「計る」「数える」「記録する」事なのだとこの本で坂口氏は語っている。定性的な情報を定量化する、と言い換えるとなるほど、と思える。この本では徹底的に数えること、素晴らしいと思えるものを自分の型に落としこむ事を説いている。

特にショックを受けるのが、文章における漢字の比率について。総文字数の約25~28%を漢字にする事で「ちょうどいい」堅さと読みやすさを兼ね備える事ができると、様々なベストセラーを裁断し、スキャンして解析することによって探り当てたというのだ。ここまではっきりと基準が見えると、あとはその型にはめて量産ができる。

私が読んでいて学びたいと感じたのは、計って数えて記録したあとの事である。できれば自分なりのやり方で進めたいと考えてしまうから、自分なりの形にアレンジをしたくなるのだけれど、そこを堪えてそのままの形で、むしろスライドの型などであればmm単位で合わせるようにしなければいけないとこの本では強く訴えている。

違いを生み出す違いとは?

自分が良いと感じた資料や語り口を徹底的に真似ること、これは芸事に通じる。強く訴えかけてくるものの「違いを生み出す違い(DMD)」を収集し、それを徹底的に分析し、その分析した型に自分を合わせる。そうすれば自らが感じた感動を等しく伝えることができる。意外と単純で、多くの人が仕事を通じて無意識にやっていることを意識化することでムラをなくし、大量の仕事につなげることができる。

芸事であれば「無理ヘんにげんこつ」で叩き込まれるところであるけれど、中途半端に自我が育ってしまった私達には「計る」「数える」「記録する」ことが大事なのだ。私達のめんどくさい自我を納得させ、さらにその型に自らを従わせるためのルーティンをつくることこそが、良い仕事を量産する上で非常に大事なのではないか、と強く感じさせてくれた本だ。

さらに、そのためにはフリーランスという立場は非常に難しいのだなとも感じた。優秀な会社の強みとは、このDMDを持った非常に優秀な資料が読み放題であり、人にその極意も聴きやすい環境があるという点にあるのだ。よい資料をつくり伝えたいという思いが身の回りに気として充満していないと、一人では優秀な資料を探すことだけでも結構な労働だ。会社勤めの方は、ぜひその恵まれた環境を活かしきってほしい(ダメなら出よう)。

SNSや資料のシェアサービスが発達したことで、ある程度は優秀な発表を入手できる機会も増えているとは思う。ただし、その資料はエモーショナルなものに偏ってはいないか、企業が意思決定をする際に必要となる型はそれこそ企業の中からは容易には出てこないのではないかという印象がある。そこをいかにカバーできるか、そのためにいかにその分野の優秀な人や資料に触れ続けることができるか……そこに「売れるフリーランス」となるための要点があるように思う。

営業や講演についても、身も蓋もなく効率的に「伝える」ための型を大量に教えていただける本であり、とてもありがたい。それでもめんどくさい自我を持ち続けたい方は、変な営業や講演にひっかからないための方法としてこの本を読んでも良いかもしれない。でもやるならバチッと、いい仕事につなげてみませんか。そのための極意を「計って」みましょう。

目次
第1章 プレゼンのうまい人は、何ポイントで資料を作り何分話すのか?
第2章 文章がうまい人は、メッセージをどう絞るのか?
第3章 営業がうまい人は、 一 ヶ月に何回顧客に会いに行くのか?
第4章 講演がうまい人は、何パターンネタをもっているのか?