会社を退職し、新しい仕事を探す際には収入がなくなるので、雇用保険による保障として「失業給付」を受けることができます。失業給付は、業界関係なく受給できる国の制度です。例えば建築業界でも、どんな小さい会社や設計事務所を退職しても、退職後にハローワークで申請すれば、もらえるのです。この失業給付が具体的にいくら受け取ることが出来るのか、いつまでもらうことができるのか、ということを具体的に解説します。
失業給付の振込で、振り込まれる金額はいくらになる?
一日あたり基本手当 | 振込金額(28日分) | 初回振込金額 (21日分で計算) |
|
月収20万円 | ¥4,747 | ¥132,916 | ¥99,687 |
月収30万円 | ¥5,705 | ¥159,740 | ¥119,805 |
月収40万円 | ¥6,666 | ¥186,648 | ¥139,986 |
まず、失業給付の振込の際にいくら受け取れるのかを計算しました。
失業給付はこれまで働いていた会社での給与を基準として一日あたりの基本手当日額を計算し、その金額から振り込まれる金額が決定します。
「備えがなければ不安…。急な解雇でも、失業給付の振込までには最初のハローワークでの手続きから最短40日かかる」では失業給付の手続きを説明しましたが、失業認定日は4週間ごとになるので、基本手当の日額を28日分(28倍)にした金額が振込額となります。
この表から分かるように、月収20万円の場合の給付金額は一回あたり132,916円となります。一月30日として考えると約14万円です。これまでの給料に比べると給付金額は7割程度となりますので、全てがまかなえるわけではないのですが、仕事がない中でもこれだけの手当があると思うと安心できます。
ただし初回の振込に限り、7日間の待機期間を含むのでその分の基本手当は支給されません。21日分として受給される金額を計算すると、月収20万円の方の場合は99,687円となります。この差に注意していただけるとよいでしょう。
失業給付の基本、基本手当を知ろう
雇用保険の保障には様々な手当がありますが、失業給付として支払われるものは「基本手当」と呼ばれています。基本手当は失業して求職している日、1日ごとに日額いくらというかたちで支払われます。
この基本手当はどのようにして計算されるのか、ここからご説明します。
基本手当は退職前半年分の収入によって決定する
基本手当の日額を計算するためには、退職前の賃金が関係していきます。ここで大事なのが、退職前半年分の収入によって決定するということです。退職前半年間に支払われた賃金総額を30日×6ヶ月分の180日分で割って賃金日額が決定します。基本給や業績給など一般的に給与として受け取る金額に加えて、賃金総額には残業代や通勤手当など、日常的に得られる手当も含まれます。しかし、ボーナスや退職金などは含まれません。
また、賃金総額は天引き後の金額ではなく、あくまで給与の総額であるというのが大事なポイントです。この点を勘違いして手取り額で提出すると、その分だけ基本手当が減ってしまいますので要注意です。この賃金総額は退職時に会社から送付される「離職票」に「離職の日以前の賃金支払状況」という項目で記載されています。自分の賃金総額がいくらになっているかはハローワークに離職票を提出する前に必ずチェックしましょう。
この賃金日額に、賃金日額によって50~80%の給付率をかけたものが基本手当の日額になります。基本日額手当の計算は以下のとおりになります。
勤務期間と退職理由で失業給付の給付日数が変わってくる
失業中でも一定の給付が受けられる失業給付ですが、いつまでも給付が受けられるわけではありません。この給付日数を決定するのは、会社の勤務期間と退職した理由によります。退職の理由は主に、自己都合退職の場合と会社都合退職や特定の理由で自己都合退職をした場合のふたつに分けられます。
自己都合退職の場合
10年未満 | 10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
自己都合退職の場合は、年齢に関係なく在職期間によって給付の上限日数が変わってきます。
例えば在職期間8年で月収20万円の方の場合は、一日の基本手当は4,747円、受給日数は90日となるので、受給できる総額は427,230円となります。
また、6月末に会社を退職すると考えると失業給付の最初の振込は11月9日前後となりますが、最終の振込は翌年1月18日前後となります。ここまでは支給がありますが、その後は失業給付の支給がなくなってしまうことを念頭に、転職活動を進めていきたいですね。
また、在職期間11年で月収30万円の方の場合は、一日の基本手当は5,705円、受給日数は120日なので、受給出来る総額は684,600円となります。このように在職年数と基本手当の金額が分かれば、そこから計算して給付金額の総額もわかりますので、自らの貯金と合わせて転職時の生活資金計画を立てやすくなるのではないでしょうか。
会社都合退職や特定理由で退職した場合
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上 35歳未満 |
90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
倒産や解雇によって退職を余儀なくされた場合や、疾病・怪我・妊娠・出産など正当な理由があって自己都合退職をした場合にはより手厚い保障を行うために退職時の年齢に合わせて給付の上限日数が変わってきます。また、在職期間についても上限日数に変化があります。
特に転職を希望していない時に退職しなければいけないことになった場合は転職に向けた態勢を整えるまでに時間がかかります。そんな時に少しでも時間に猶予が持てるようになっています。
自分の身を守り、持続的に働くためにも、制度を味方につけよう
キャリア形成の立場からも1つの会社で長く働くことにこしたことはありません。しかし、身体を壊したり、精神を病んでしまうことだけは避けなくてはいけません。建築業界や建設業界は、激務なイメージがありますが、中小企業に労働基準法を守る意思がない経営者が多いだけで、まともな待遇で働ける会社はたくさんあります。
きちんと情報収集し、仕事探しにもう少し熱心になれば、必ずあなたにあった職場に出会うことができるはずです。失業給付を受け取るための手続きやスケジュールを把握し、給付される金額をきちんと把握することで、退職後の計画が立てやすくなります。とくに、急に職を失ってしまうことは残念ではありますが、その場合でも国の制度として誰でも保障を受けられるということは覚えておきましょう。