労働条件について悩みを気軽に相談できる労働基準監督署の活用ガイド|建築士のための労働法入門

労働時間や給料などの労働条件について不安や疑問をもっているとき、どこに相談すればよいかわからないという方は多いのではないでしょうか。

労働条件について一番気軽に相談ができ、役に立つのは労働基準監督署です。

労働基準監督署では、具体的な労働時間や給料などの悩みについて、労働法の専門家の視点からアドバイスをしてもらえます。それだけではなく、今後会社と対応していくにあたって必要となる資料についてなど、働く人の立場に立って相談に乗ってくれるのです。

この記事では「労働基準監督署」の活用法をご紹介いたします。
※2017年2月21日追記(2016年7月26日公開)

建築の働き方の悩み、プロに相談しませんか?

労働基準監督署ってどんなところ?

労働基準監督署は労働時間・休日についてのことや残業代などの支払いなど、働く環境を改善するために設けられている国の機関です。

実際にみなさんが働いている中ではあまりかかわりをもつ機会は少なく、労働基準監督署がどのような動きをしているのかわかりにくいというイメージをもっている方も多いかもしれません。あまり労働問題の解決のために動いてくれないというイメージもあるかもしれません。

しかし、電話で相談してみると非常に親切に対応してもらえます。働き手の側が何も知識がない状態でも、会社と対応するために必要な知識やおさえておきたい資料を紹介してくれますので、「門前払いされるのではないか」と心配することはありません。

労働基準監督署では

・労働時間、休日

・給料の支払い

・働く現場の安全や衛生面での問題(労働環境)

・勤務中や通勤中のケガや病気(労働災害)

といった労働条件についての問題について、専門の労働基準監督官が相談を受け付けています。

また、具体的な労働基準法違反が疑われる場合は会社に対して立ち入り検査を行い、実態に対して行政指導を行うこともあります。

労働基準監督署

労働基準監督署に相談する方法

少しでも労働条件についての疑問があれば、どんなことでもまず労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。
労働基準監督署に実際に相談するためには電話での相談と、実際に窓口で相談するという2つの方法を取ることができます。

電話での相談

電話での相談は基本的に平日の朝8時30分から夕方5時15分まで受け付けています。相談自体には特に込み入ったことでない限り、労働基準監督署の職員さんが10分ほどで答えてくれます。

お昼休み中でも電話を受け付けていますので、平日の日中は仕事が入っている方でも気軽に相談することが可能です。

電話で相談する場合は、特に必要となる資料はありません。
また、具体的な社名やあなた自身の氏名などを伝える必要もありません。

実際に何度か代理として働き方についての相談を労働基準監督署に電話して相談したことがあります。どのような問題を抱えているか相談していく中で、実際に会社と労働条件について交渉する際に必要になる資料とその入手方法を教えてもらえます。

建築士の方から私へ残業代についての相談があったので、代理として労働基準監督署へ相談した時のことです。

その時は、その建築士の方が専門労働型裁量労働制の労働契約を結んでいたということから、労働契約書で規定されているみなし労働時間や、深夜の残業時間がわかる資料があればより詳しく相談に乗ることができると教えていただきました。

電話で対応する職員さんの雰囲気も、より詳しく相談を受けるために必要な情報を丁寧に教えてくれます。対応する職員の方にもよりますが、上司や社長の性格に合わせた対策のすすめ方のヒントを教えてもらえることもあり、気持ちが楽になりました。

窓口での相談

窓口での相談も基本的には電話での相談と同様ですが、労働時間をまとめた資料や労働契約書など、労働条件に関する資料をまとめている場合は窓口で実際の資料を持っていくのが有効的です。

会社との交渉の手順についてのアドバイスや後ほどご紹介する申告のための手続きについて、より詳しく説明してもらうことができます。

窓口に相談する場合は先にアポイントを入れる必要はありませんが、必要な資料について事前に電話で聞いておいて、資料をもって相談しにいくのがおススメです。

会社への立ち入り検査「臨検」とは

労働基準監督署は時々、「臨検」と呼ばれる職場への立ち入り検査を行います。ここで調査した労働時間の記録などの状況によって労働基準法違反であることが明確になれば、労基署は会社に対して労働環境を改善するよう指導を行います。

この「臨検」は一般的に全ての会社の中から抜き打ちで検査をするのが一般的です。ですが、社員から労働基準法に違反しているという申告を受けて対応する場合もあります。

臨検の結果行政指導が必要となる場合、規模の大きい会社であれば、対外的なイメージを考慮して行政指導に従い、実際に労働環境が改善されることも考えられます。

労働基準法違反の申告は匿名でも行うことができます。労基署は会社に臨検に入る際、基本的に誰から申告があったのかということを会社に伝えて検査に入ります。

申告書に依頼者の名前を匿名にするよう記入しておくことで、労働基準監督署は名前を明かさずに検査をしてくれます。

匿名でも申告できるとは言え、小さな会社の場合は社内の人間関係にも影響が出ることが考えられますので臨検はあくまで一つの手段として覚えておいてください。

労働基準監督署としても、なるべく会社と社員との間での話し合いで状況が改善するように対応しているとのことでした。

賃金・労働時間の客観的な記録をつけておこう

労働基準監督署に労働基準法違反の申告を行う時には、実際に労働基準法の条文のどこに違反しているかということを示すための明らかな証拠が必要になります。

現在働いている状況が苦しいと感じている方は、自分が現状働いている環境を自ら記録していくことが大切です。

記録がない状態でも労働基準監督署に相談することは可能ですが、会社に対して何かがあった時に対抗できる手段をもつことで精神的に落ち着く効果もありますので、自身の働き方について記録をしておくことをおすすめします。

例えば、労働時間については労働基準監督署に相談を行う中で、具体的に以下のような資料が必要になるという事を伺いました。客観的で、外部から調査する際に参考になる資料であることが重要です。

タイムカードのコピー

紙のタイムカードで記録しているのであればコピー、または写真で記録を取っておきましょう。

勤怠管理システムの記録

グループウェアを使用している会社で、スクリーンショットを撮影して保存して資料として提出したという方もいました。

勤務記録を自分でつけた資料

会社の資料と比較できるよう自分で記録をつけましょう。日記やエクセルの表などで労働時間がわかり、外部に提出できる形で保存しておくことが大事です。リアルタイムで記録できるよう手帳に手書きしていたという方もいました。

実際に支払われた給与明細

給与明細には残業時間が記載されますので、自分で記録した分との比較が可能です。

会社の就業規則、または労働条件通知書

勤務時間の比較を行う際には、あなた自身がどのような勤務形態で働いているのかということを改めて確認する必要があります。残業時間の捉え方は働き方の形態によって変わってきますので、労働基準監督署に相談してみましょう。会社で働く女性

働き方の悩みがある方はまず電話で相談から

労働基準監督署の方にお話を伺う中で、電話口での簡単な内容から具体的な労働条件についての相談まで、働く悩みに対して働く人の立場に立って対応してくれるので、世間のイメージよりも敷居が低いという印象を感じるようになりました。

実際に悩みを抱えながら働いている方はまず一度電話で相談してみてはいかがでしょうか。

※労働基準監督署は東京都内に19箇所、また各都道府県の主要都市に設けられています。東京都内の労働基準監督署の電話番号を以下にまとめました。会社の所在地を管轄している労働基準監督署へご相談ください。

東京都内の労働基準監督署の電話番号をまとめました

現状の労働条件を知ってよりよい職場への足がかりに

労働基準監督署を活用することにより会社自体の働き方を変えようとすることももちろん可能です。しかし、そこにエネルギーをつぎ込むよりも、相談する中で現状の労働条件を確認して、今後よりよい条件の職場で働いていくことも考えられます。

転職にかかわる情報については業種ごとに状況が違うため、それぞれの業種をきちんと理解し相談に乗ってくれる転職コンサルタントに相談するのがおススメです。

フリーランチのキャリア相談では実際に建築設計業界に精通し、具体的な求人情報から様々なキャリアパスを提供できるようにしています。小さな設計事務所で働いていて現状の働き方では未来が見えないなど閉塞感を感じている方はぜひ悩みをお聞かせください。

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