残業時間の計算方法を転職や在職中、体調不良を回避するなど目的別に解説

残業時間や残業代の確認など、働き方を考える上で多くの方が悩んでいるテーマが「残業」です。

この記事では残業時間が気になる方に向けて、状況別に確認方法や対処方法をまとめました。

転職活動における待遇の確認や、所属している会社で残業代が支給されているのか、長時間労働が続いているので健康への影響が気になるなど、多くの方が残業に関する知識が必要となるケースを想定し、解説しています。

残業時間の知識が必要となる状況は大きく分けて3つ

残業時間や残業代に関する知識が必要となるのは、大きく分けると3つに分類することができます。

それは

・転職活動における残業を加味した年収を調べたい場合
・残業代が正しく支給されているのかを確認する場合
・自身の体調を守りたいと思う場合

です。それぞれ簡単にご紹介します。

転職活動における残業を加味した年収を調べたい場合

1つめは、転職活動で複数の転職先候補や現職との待遇の比較など残業代を考慮してどの会社が有利なのかを確認する場合です。

転職活動でさまざまな企業の求人を比較したり、内定先企業から提示された労働条件通知書や労働契約書に記載している条件から、本当の年収を知るために残業代計算の知識が役に立ちます。

残業代が正しく支給されているのかを確認する場合

給料や残業代の計算は複雑なため、残業代を加味して正しい給料が支払われているかを直感的にわかる方はあまりいません。

小さい会社では給与明細が提示されない会社もあるそうですし、裁量労働やみなし残業代の制度などが正しく運用されていない会社も多いようです。

正確な知識で残業代の計算をしてみると、実は支給額が間違っていたということも多いため、残業に対する正しい知識を身につける必要があります。

自身の体調を守りたいと思っている場合

長時間労働が続いていて、体調への影響が不安だと悩む方も多いようです。

自分の働き方をこのまま続けても大丈夫なのか。休みを取った方がいいような状態なのか。

体調への影響を与えうる基準をあらかじめ知っておくことで、自分を守ることができます。

これらの3つの悩みに応じて残業時間の計算の仕方や考慮したいポイントが少しずつ変わってきます。この記事では、目的別にそれぞれ解説していきます。
残業時間を調整した人のイメージ

残業時間の定義は2種類ある

それぞれの働き方の相談について触れる前に、残業時間のとらえ方について簡単に解説します。

一般的に残業時間と呼ばれている中には定義が違う2種類のものがあります。

残業代が気になる場合は「所定外労働時間」を、健康面への影響が気になる場合は「法定外労働時間」をチェックすることが必要です。

それぞれ定義が違うので、残業時間の計算方法も変わってきます。

以下ではそれぞれの残業時間の計算方法をご紹介します。

所定外労働時間の考え方

所定外労働時間とは、会社が定める「定時」を超えて働く時間のことです。

会社が就業規則の中で1日の労働時間を定めている場合は、その時間を超えて働いた時間が所定外労働時間となります。

たとえばある会社で所定労働時間が7時間の場合、10時間働いた場合の残業時間は3時間となります。

所定外労働時間

もしも就業規則がない会社の場合でも就職する際の労働条件通知書などで1日の労働時間について記載されています。

法定外労働時間の考え方

法定外労働時間とは、労働基準法で定める「法定労働時間」を超えて働く時間のことです。

法定労働時間は1日8時間、1週間40時間と定められています。
これはどの会社でもかわらず一律です。

たとえば上と同様に1日10時間働いた場合、法定労働時間は8時間なので法定外労働時間は2時間となります。

法定外労働時間

所定外労働時間とは計算が異なってきますので、この点で注意が必要です。

あらためて確認しましょう。

・残業代が気になる場合は「所定外労働時間」をチェック
・健康面への影響が気になる場合は「法定外労働時間」をチェック

この点を踏まえて、それぞれの相談のポイントについてここから解説いたします。

転職時の年収を左右する残業代

転職を考えているときにまず気になるのは転職先の給料が今の職場よりも良くなるか?ということではないでしょうか。

転職先の給料がいくらになるか?ということを考えた場合、基本給として提示されている金額ではなく、ボーナス・残業代を含めた年収を計算しなければ比較できない場合があります。

つまり、残業代がどの程度支払われるのかということが大きな要素になってきます。

残業代がいくら支払われるかということは求人広告からある程度探ることができます。

求人広告から残業代を計算する

たとえば下のような条件の求人広告の場合で考えてみましょう。

基本給+残業代別途支給の求人の場合

月給=基本給 250,000円
勤務時間 9:00~18:00(休憩1時間、勤務時間8時間)
月平均残業時間 40時間
時間単価 1,563円(基本給/160時間で計算)
ボーナス 基本給2ヶ月分

この場合、一月あたりの残業代を計算すると78,125円となります。

毎月同じだけの残業代がつく場合の年収は、基本給12ヶ月分にボーナス2ヶ月分を加えた350万円に残業代93.75万円分がついて443.75万円となります。

基本給+残業代の場合の年収総額と計算結果

年収総額 443万7500円
基本給 25万円×12ヶ月分=300万円
残業代 1,563円×40時間×1.25(割増賃金)×12ヶ月=937,500円
賞与 25万円×2ヶ月分=50万円

では次の場合の求人広告では年収はいくらになるでしょうか?

月額支給額に固定残業代が含まれる場合

月給 250,000円(固定残業代40時間分含む)
勤務時間 9:00~18:00(休憩1時間、勤務時間8時間)
月平均残業時間 40時間
時間単価 1,190円(基本給/160時間で計算)
ボーナス 基本給2ヶ月分

先ほどの場合とほぼ同じですが、「固定残業代」が月給に含まれているという点が異なっています。

この場合は40時間分の残業代が先に基本給と合わせて支払われているということになるので、月40時間の残業では追加で残業代はつきません。

月給は250,000円と記載されていますが、残業代をのぞいた基本給は190,400円と残業代59,600円となります。

さらに、ボーナスの算定基準は残業代を除いた基本給なので、ボーナスの金額も低くなります。

固定残業代が月給に含まれる場合の年収はボーナス込みで約339万円となります。

固定残業制の場合の年収総額と計算結果

年収総額 338万円800円
基本給 19.04万円×12ヶ月分=228.48万円
残業代 1,190円×40時間×1.25(割増賃金)×12ヶ月=714,000円
賞与 19.4万円×2ヶ月分=38.08万円

残業代がつく場合に比べ、年収で約106万円の差がつくということになります。

「固定残業代」や「みなし残業代」には要注意

ここではわかりやすい形で紹介しましたが、固定残業代として残業代を基本給に含めている求人は多いので注意が必要です。

固定残業代については「40時間分を含む」などという時間で表している場合と「60,000円含む」などという金額で表している場合があり、それぞれ実際の残業代に影響してきます。

また固定残業代と同様のものとして「みなし残業代」と表記してある場合もありますので注意しましょう。

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残業代が正しく支払われているか?を知るための時間確認

1.1日あたりの所定外労働時間を確認する

会社の就業規則や労働条件通知書から1日あたりの所定外労働時間を確認します。

2.月間残業時間を確認する

所定外労働時間を1ヶ月分足し合わせて月に何時間残業しているかを確認します。

この時重要なのは毎日の所定外労働時間を分単位で求めることです。

毎日の所定外労働時間を足し合わせると1ヶ月分の残業時間となります。

会社によっては毎日の残業時間のうち15分未満や30分未満の時間を切り捨てて計算しているところもありますが、労働基準法上は正しい方法ではありません。

このように自分で調べてみた上で、実際に支払われている分の残業時間と比較してみると残業時間の違いが現れてくる可能性があります。

体調を守るための基準は残業月45時間と80時間の2つ

体調が気になる方には、法定外労働時間で月45時間・月80時間という2つの基準を覚えておきましょう。

残業月45時間を越えると脳・心臓疾患が発症する可能性が高まっていきます。残業月80時間を越えると発症との関連性は強いとされています。

この残業月80時間の基準は一般的に「過労死ライン」と呼ばれています。厚生労働省が様々な労働災害のケースから導き出している数字です。

残業月80時間超では精神疾患への影響も

また、長時間労働が精神疾患を引き起こす可能性も指摘されています。

残業時間が恒常的に月80時間を超えると精神疾患にかかる可能性が高まるとされています。

一度心身の健康を損なってしまうと、あらためて働き始めるためにはこれまで以上に労働環境に気を配る必要があり、復帰するまでにとても長い時間を要します。

自分では現状でなんとかなっていると感じていても、客観的な数字として法定外労働時間で月45時間、月80時間というラインを覚えておいて、常に健康な状態を自分でキープするという意識は必要です。

残業時間の改善をした人のイメージ

残業時間は働き方の悩みの重要ポイント

残業時間は働き方についての様々な悩みに深く関わってくるポイントのひとつです。

自分が働いていてつらいと思っている中ででも、残業時間に着目して改善ができないか考えてみると、解決の糸口が見えてくるかもしれません。

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