長時間労働や残業代未払いなどブラック企業対策がわかる本「武器としての労働基準法」

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大学では文系・理系問わずなんらかの専門領域を学ぶように、社会に出れば働き方にも当然ルールがあります。エンジニアと呼ばれる人達は、自身のスキルアップにつながる専門知識の習得には入念な方が多いのですが、自身を守る働き方の知識が不足している傾向があります。

労働基準法という法律は、基本的には労働者を守ることを目的とした法律なのですが、うまく使いこなすためにはちょっとしたコツが必要です。

働き手のために解説された労働基準法の本として、布施直春さんの著書から、「『武器』としての労働基準法」「わかる! 使える! 労働基準法」の2冊を紹介します。

この本は、一生働き続けたい人や、仕事とプライベートの折り合いをつけたい人など、働き方に悩んでいる方にぜひ読んでいただきたい本です。

働く側の立場から「労働基準法」を学べる

長時間労働や休日出勤、また給与面の問題など、企業で働いている方の中でも働く環境に不満や疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。

このような働く環境の中で最低限守るべき基準を定めているのが「労働基準法」です。しかし、この働く人たちのための法律を、働く人の側の立場から説明し、会社と交渉するための材料とするという思いから書かれている本はほとんどありません。

その中で、特に「『武器』としての労働基準法」企業に対して会社員が待遇を改善するために取るべき方法や態度について語っているのがユニークなところです。

この本でなによりも大事なのは労働基準法が会社とそこで働く人との関係を一番強く制約するものであるということを説明してくれている所です。労働基準法十三条では、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分としては無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による」と規定する部分を引き、たとえ会社と労働者の間で契約がされていても、労働基準法で定める基準を下回るものは無効となると説いています。

また例えば「用語の使い分けはしっかりと」という項目では、「会社員」も「従業員」も「パートタイマー」も労働基準法上ではすべて会社に雇用される人として「労働者」と呼ぶという事を説いています。

会社側を「使用者」と呼ぶという事も説明し、これらの用語を正しく理解して交渉することで、会社側に労働法の知識がある働き手であり、「油断できない」という印象を与えることができるという、会社側に向かうための態度といったレベルの話から丁寧に教えてくれます。

労働基準法をベースに会社と交渉、感情論はこじれるだけ

小さい会社は単に労働基準法の知識がないだけ、一緒に学ぶスタンスで

しかし、なぜこれだけの強い力を持つ労働基準法が日常的に守られていないのか?という疑問が当然出てくる事でしょう。その点については、労働基準法という法律が堅苦しく難解だという印象を持たれていることから、使用者側にも労働者側にもきちんと内容を理解している人が少ないため、労働基準法の基準にどれだけ触れているのかということをお互いに理解することが難しいからだと「『武器』としての労働基準法」では指摘しています。

小さな会社や事務所では特に人事担当者が専任でいない場合もあるので、労働問題をきちんと把握している人がいないケースもあります。業界全体が、ともすればブラックとも言える環境下では、働き手が交渉すること自体を諦める場合もあります。数人の組織の場合だと、労働組合もなく、直接経営者と交渉しなくてはいけないこともあります。

仕事でのヒエラルキーだと、どうしても労働者が不利になりますので、法律をものさしとして、最低限労働者として保護してもらわなければいけない部分を会社内で共有することから始める事も必要です。まずは同僚と問題を共有する所からはじめ、労働基準法に抵触する項目について証拠を残すことができれば会社側も対応します。

「『武器』としての労働基準法」第7章「『こんな会社、訴えてやる!』と思ったら」に詳しく書かれていますが、企業の評判が下がってしまうことは業績や採用といった面で重大な影響を与えることになります。多くの会社は労働基準法違反であることが分かれば、その状態からいかに改善するかという交渉に上がってきます。

話し合いもできない状態なら、「労働基準法違反の申告」を

労働基準法違反の申告も考える

それでも会社側が対話や交渉に応じそうにない場合や、社内での人間関係から会社側と表立って対立するのを躊躇する場合もあるでしょう。

そんな場合でも匿名で秘密裏に動くこともできるのです。労働基準法違反については、匿名の電話や手紙などを利用して労働基準監督署に「労働基準法違反の申告」を行った場合、必ず労働基準監督署が臨時検査(強制立ち入り検査)を行わなければいけないことになっています。

私はこれまで労働基準監督署については、相談をしてもその場で対応策を伝えられるだけで動かないという話しか聞いたことがなかったので、この「相談」と「申告」の違いを知っただけでも価値があると感じました。

特に匿名で行うことができ、その後申告したことがバレても、企業側はその事によって解雇などの不利益となる扱いを行ってはいけないという保障もあるという点が心強く感じます。

労働基準監督署だけじゃない、問題に対応できる監督官庁に賢く相談

また、労働基準法で判断することができないものについても、会社側との直接交渉以外の方法が取れるという事も説明されています。

たとえば解雇の合理性の判断やセクハラ、職場内でのいじめなど、会社と労働者との間での民事的なトラブルについては、「個別労働紛争解決制度」を利用して都道府県の労働局から企業への指導、あっせん、調停を求める事ができ、1~2ヶ月という短期間で解決することができるということです。

このケースでは労働基準監督署の管轄外ではありますが、労働局にきちんと受け皿が用意されています。このことを知らずに間違った監督官庁に相談にいくと何も解決しないばかりが、間違った指導を受けることもあります。

労働問題というと裁判で争うイメージがあり、そこまで大事にしたくないと考えると二の足を踏むところがあったのですが、企業と働く側の人たちとが深く対立することなく労働条件や働く環境全般について交渉するための方法があったのだと知ることができ非常に明るい気持ちになれました。

これらの制度を包括的に説明してくれていることで、ただ会社側と対立するのではなく、なんとか合意を得るための方法を探っていけるのだという可能性を感じることができます。それだけでも、余裕をもって自分らしい働き方を追求することができるようになるのではないでしょうか。

また、給与や労働時間、休暇の取り扱い方、退職や解雇についての細かな事項については特に「わかる!使える!労働基準法」で詳しく説明されています。労働者の権利を守る様々な制度の基盤にある考え方については「『武器』としての労働基準法」で理解し、詳しい制度については「わかる!使える!労働基準法」を参照することで皆さんが疑問に思っている内容についてほぼ理解出来るのではないかと思います。

フリーランチな働き方にどう活かしていくか?

ぜひこの2冊の本を読んだら、自分が今の仕事で疑問に思っていることがどんな内容なのか振り返ってみてください。もしそれが賃金や労働時間、休暇などの労働基準法に触れる内容か、それ以外の人間関係からくるものなのかをまず理解しましょう。

労働基準法に関わることであれば最低の基準を理解した上で改善していくためにどのような話し合いができそうか、もしくは該当する労働基準法の条項を会社側が理解しているかどうかを確認することができれば、その後の対応も見えてくるのではないでしょうか。

また、「わかる! 使える! 労働基準法」第10章「契約社員・パートは正社員になれる」では様々な労働形態から正社員になるための詳しい方法が書かれています。一時的に契約社員として働き、その中で正社員を目指すという方法も柔軟な働き方ではないかと考えます。

実際にフリーランチのキャリア相談でも小さい労働条件の悪い会社を辞めて、中堅以上の規模の契約社員や大手に派遣社員として入社し、その後正社員に登用される例をいくつも見てきました。

より良い条件の会社を探し、柔軟に働くための基準としてもこの2冊の本が与えてくれる情報は非常に大きいです。規模の大小にかかわらず、どんな会社であっても、労働基準法が適用されない会社はありませんので、みなさん一度は読んでみてください。

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