会社と働き手との間には「雇用契約」が交わされます。
労働契約は、働き手が会社のために求められる指示に従って労務を提供し、会社がその労務に対して給料を支払うことを約束するための契約です。
雇用契約のなかでは、労働時間や給料の支払い方など、さまざまな事柄がルールとして約束されますが、そのルールには最低基準として「労働基準法」が適用されます。
雇用契約や労働基準法は、一見すると難しく、会社を経営する上で足枷のように思われてしまいます。しかし、労働基準法をよく理解し、うまく活用することで、経営者と働き手の双方で納得できるルールを作ることができ、経営者にとって有利なメリットもあります。
とはいえ、そもそも労働基準法は働き手有利な構造をしているため、就業規則をしっかり決めておかなければ違法扱いにもなりかねません。
この記事では、そのような雇用契約・労働基準法について丁寧にひもときながら、会社運営の環境をより良くするためのルールの作り方を教えてくれる本『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』をご紹介します。
今回『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』をご紹介する理由は、このような雇用契約における労働基準法の解釈の方法と、契約時の書類への具体的な記載の方法を、重要な事柄ごとにわかりやすく教えてくれる点にあります。
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「働く」ことのルールをどのように確認するか
今回ご紹介する『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』は、社会保険労務士である著者が、経営者から相談を受けることの多い残業代や給料の支払い方、労働時間、問題社員への対応などについて、その対策を労働基準法の解釈を含めて解説している本です。
この本が訴えていることの本質は、「経営者は、会社と働き手の雇用契約時に、重要な事柄についてきちんと労働条件として労働条件通知書などに記載する」ということに尽きます。
とはいえ、大事であることはわかっていても、何が重要な事柄で、どのように内容を確認し、どのように記載すればよいのでしょうか。
労働基準法の解説本などを読んでも、こうした点についてわかりやすく教えてくれる本に出会うことは難しいものです。
しかし今回『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』をご紹介する理由は、このような雇用契約における労働基準法の解釈の方法と、契約時の書類への具体的な記載の方法を、重要な事柄ごとにわかりやすく教えてくれる点にあります。
労働基準法には「幅」がある
雇用契約における労働基準法の解釈の方法とは、どのようなものなのでしょうか。
『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』が教えてくれることのなかでもっとも重要なことは、労働基準法には「幅」があるということです。
労働基準法は、労働時間や最低賃金など、働き手の命や生活を守るために設けられている最低基準で、会社と働き手との間で交わされる雇用契約において、一定の内容については法律の基準の範囲内でルールを決める必要があります。
労働基準法の「幅」とここで呼んでいることは、労働基準法で定められている基準には、原則として守らなければいけない基準と、危険なため絶対に守る必要のある基準との間に、ある手段を利用すれば特例として認められる契約のことを指しています。
この本は、雇用契約における重要な事柄において、この「原則として守らなければいけない基準」と「絶対に守る必要のある基準」のラインがどこにあるのかを教えてれるので、その幅のなかで、会社と働き手の間で適切なルールを作るための方法を理解することができます。
例)労働時間のルールの作り方
『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』が教えてくれる労働基準法の幅について、実際に記載されている項目のうち、例として労働時間についてご紹介します。
原則ルール | 特例ルール | 絶対ルール |
---|---|---|
1日8時間以内・1週間40時間以内 | 社員代表(もしくは労働組合)と時間外協定を締結し、労働基準監督署に届出をすれば、法定労働時間を超えて仕事をさせることができる | 法定時間外労働は月80時間以内 |
(表は『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』p.16-17をもとに作成)
労働条件通知書には、原則ルールの範囲内で労働時間について記載する必要がありますし、原則ルールを超えて働いてもらう必要がある場合には、特例ルールを適用するための手続きをおこない、その旨を記載する必要があります。
「会社に有利な」ルールの大枠を理解するために
労働基準法は、とてもむずかしい法律です。
しかし、そもそも働き手にとって有利な法律になっているので、しっかりと理解して就業規則を定めないと、違法な労働契約となってしまいます。
しかし、労働基準法の「幅」を活用することで、経営者にとってのメリットを受けることもできます。
経営者の役割は、細かな法律を理解することではなく、労働基準法の大枠を理解し、実際の部分は専門家に任せることにあります。大きな考え方の枠組みを理解するために、今回ご紹介した『トラブルにならない「会社に有利な」ルールの作り方』をぜひ一度読んでみてください。