没入し、売り込むことで「ない仕事」が仕事になる:書評「『ない仕事』の作り方」

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「ない仕事」の作り方

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みうら じゅん
文藝春秋
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まさかこの人が仕事術の本を……!?

「マイブーム」「ゆるキャラ」など、お仕事はある程度知っているつもりだったけれど、実際になにをやっている方なんだろう?と不思議に思っていたところに発行されたのが本書。

そういえば、みうらじゅんさんといえば小学校の頃に宝島のVOW!がブームになって、子供ながら看板の誤植とか面白がっていた頃に挿絵を描いていた人だというのが最初の印象ですね。

思い返すとエロいのエグいの描いていたよなー。このままの形で世間に響くようになっている姿が自分の頭のなかでちゃんと結びつかなくて、この人はすごいのだろうか……と思っていたのが正直なところであります。

しかし、今になって考えるとVOW!は凄いよね、あの本で名前を覚えたおじさんおばさんは大体今もスタンスを変えずに活躍しているからなあ……。もっと年上世代の方からは「ビックリハウス」が凄かったと聞きますが、当時まだ読めるほどの歳ではなかったですね。

実際に本を読むまでは「仏像」や「ゆるキャラ」がどうして仕事になるのか、もしくはそれは果たして仕事なのか?と考えていました。それこそ「ない仕事」は「ない」ものだと思っていたからですね。
自分が面白いと思ったことを提案して仕事にしていくというのは、ある意味当たり前のことなんだと思います。

それにしても、相当突飛な事を打ち出すことが世間を動かすことに繋がるわけで、そこにどのような動きがあるのかはとても知りたかったところだったので、いいタイミングで出版してくれたなあと感謝しております。

みうらじゅんも努力していた……!

この本で出てくる言葉として面白いのは「一人電通」ですね。
まさに自分が電通マンになったつもりで自分だけが売り込めるものに着目し、メディアに対して売り込む。本当に仕事に繋がりそうな媒体の編集者やディレクターに対して、接待を自分から仕掛ける。確かに人をもてなすということは強い印象をもたらしますよね。

本当に仕事が欲しいと思うかどうか、自分が伝えたい媒体でやりたいことを決定すれば、直接向かい合うことがとても大事だなと思います。

具体的な売り込みではないにしても、自分が興味のある界隈で稼げるようになりたい、という思いがあれば、会いたい人に会いに行くという経験があると思います。それをより戦略的に、具体的なメディアを定めて入り込んでいく。
ただ遊んでいるように見えてもれっきとした「営業」なんですよね。

 

また、例えば天狗にハマる過程に見えるように、自分の中でこれが面白いと思うことは自分の周りにグッズで埋め尽くすことで自己洗脳をかけるようにするなど、本当に面白いということが見えてくるまで努力をしているということが非常に面白かった。

そこで「ナチュラルにものが増えていったんですよね……」という人だったら「ああ、そうですか」と思うだけでしたが、彼の言葉として「努力」という単語が出てきたことにハッとしました。

ああ、これはやっぱり努力なんだ、努力と呼んでもよいものなのだと。

さらに、その努力を努力と見せないように一つネーミングをひねったり、その注目するポイントを見つけて行ったりというところにみうらじゅんさんなりの面白さがあるんだなと改めて感じることができました。

その意味で、自分はそこまでの努力ができているか、コストは抑えながらも自分だけの仕事につなげるだけの環境を作り出しているだろうか……?という問いかけることもできるなと感じました。

自分をなくすことで世間に響く仕事が生まれる

もう一つ、この本を読んでいて納得したのが「忘我」という境地の楽しさですね。

同時に自分は結構前からサブカルチャーという区分について勘違いをしていたのではないかと思います。サブカルチャーにハマる人の中にどうしても感じてしまう「自意識」が強いからなのでしょうが、「今はまだマイナーなものにハマっている私」という自分を大切にしている人が多いから、何かにハマると言うこと自体に後ろめたさを感じることもありました。

しかし、本当は自分をなくしてしまうほどハマる対象にのめり込むことが大事なのだなと思います。

そして、「忘我」の境地に至っているかどうかがすなわち面白さに繋がってくるのかなと思います。そこには守るべき自分と言うものがないので、自分の恥ずかしいところも含めてそのまま出てくるからでしょうね。

「忘我」に至るほどそのものが面白いかどうか、そしてそこに自分が至るだけの集中できる環境があるかどうか、その両面が揃ってこそこれまで世間に見えてこなかったものが「仕事」として立ち上がるのではないかと思います。

そんな面白いものに出会えているか、なぜそれを面白いと感じるか、そしてその面白さに没入できる環境を生み出しているか。
そこがチェックするべきポイントなのだと感じます。

 

ただ、あとがきに彼が本当の「ない仕事」として取り上げている「エロスクラップ」に取り組んでいる姿は本当に「忘我」というか、ものすごい俗なものにまみれながら空になっている様がとてもとてもおかしくて、ああこの人すごいわと改めて感じさせられました。

すごくなくても、本当に忘我に至れるほど自分が売り込みたい何かに出会えれば幸せだと思います。そこに仕事は生まれ、生きるための原動力になるのではないかと感じます。

 

「ない仕事」の作り方

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もくじ

まえがき すべては「マイブーム」から始まる

第1章 ゼロから始まる仕事~ゆるキャラ

第2章 「ない仕事」の仕事術

1 発見と「自己洗脳」

2 ネーミングの重要性

3 広めることと伝わること

第3章 仕事を作るセンスの育み方

1 少年時代の「素養」が形になるまで

2 たどり着いた仕事の流儀

第4章 子供の趣味と大人の仕事~仏像

あとがき 本当の「ない仕事」~エロスクラップ

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