計画を成し遂げるための力とは?:書評「『計画力』を強くする」

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今回取り上げるのは加藤昭吉・著「『計画力を強くする』 あなたの計画はなぜ挫折するか」です。現在まで続くプロジェクトマネジメントの計画手法の原点を日本に伝えた方が、実は計画を立てるだけではうまく実行できないのではないか?という思いから作り上げた本で、現代的な悩みに答えてくれる定番だなと思い、取り上げてみました。

計画というものは立てている時が一番楽しくて、いかにして実行したかを振り返るターンが一番辛いものだと思います。振り返りをいかに気持ちよく進められるかということが自分の計画力を高めることになるのではないか…と思いながら、実際に進めることができない。ただ計画は立てるのが楽しいので、複数の計画がすこしずつかぶっていき、そしてそれぞれの予定がぶつかって調整に追われてすべて失敗してしまう結果になってしまいます。

…と私が陥りがちな失敗を例としてあげてみましたが、計画を立ててその計画に沿って動く中で陥りがちな間違いをまとめて、実際に実行力があり成果が上がる計画とはどのようなものか?と言う事について詳しく語ってくれているのがこの本です。

著者・加藤昭吉氏は「PERT」と呼ばれる計画手法を1960年代にアメリカから輸入し建設現場などに浸透させた経歴の持ち主。ネットワーク図に代表されるような計画の立て方、管理の仕方は広まったけれど、その計画は何のために立てているのか、その計画を意味のあるものにしていくために必要なことは何かということが語られています。

特に第一章「”計画力”とはいったい何か」では人間が人間らしく生きる根源に計画性を持って生きることを説き、私達がさらに目的を持って生きることの必要性についても触れています。そう言われれば毎日家を出て仕事をし、食べたいものを選んでお店に入るなり作るなりして食べて、時間を気にして寝る。その一つ一つの行動についてほぼ無意識のうちに計画が組まれ、その計画に合わせて生きています。例えば認知症になりこのような無意識的な計画的行動を取れなくなると、それが人間的な暮らしを送る上で大きな支障になる訳で、そりゃあ地味に痛いよな……と感じます。ただ物忘れをするだけではないのですね。「”計画的思考”は人類が長い進化の歴史を通して自然に獲得してきた思考様式」だと言うのも納得ができます。

その中で、著者はイギリスの社会学者が述べたこととして「中流とは自分の人生を計画的に生きられる人のことだ」と言います。ある程度の豊かさを手に入れるためには人生の分岐点をいくつか想像し、それぞれの選択を並べた上で自分が求めるものを選択していく計画的思考が必要になると思います。仕事を変えたり新しい場所で暮らしたりすることは分岐点の中でもとても大きなものです。そこにどのような目的、目標を持つか。

全体的に著者が想像しているのはサラリーマン的生活の中での生きがいとその後の老後の余暇というステージであり、そこに至るまでの貯蓄などと言った事への興味が強いようです。近年の中流意識の低下については計画性が衰えているからではないかと著者は主張しているが、私自身の事も考えてみるとそれは目標が設定しにくい時代になっているからではないかと感じます。

私は貯蓄などの数値的目標を持つより、どれぐらいの規模の家を建てるかという目標よりも、周りの人達と楽しく仕事をして地域で生活を送るということの「実感」を得ることのほうが目標になりうると考えて人生の選択をしています。また、その目標設定で迷っている人たちのために様々な生き方を説く人たちが出てきているのではないでしょうか。ただ、そこで目標を考えずにガムシャラに進んだり、過大な夢を持ったりする事は良くない。「実感」を得るという事をいかにして具体的な目標に落としこむかという事を考えなくてはいけないのです。しかし、その目標はあくまで個人的なもので、社会的に共有しにくいということが、現代の抱えている悩みなのかなとも感じたりしています。

近い未来に何が起こるのか、想像しにくくなっている時代だと言われます。だからこそ自分の中にある信念ともいえる目標を持ち、その目標への計画を立てて適切にフォローアップをしていくことによって、柔軟に計画を遂行していくという意識が大切です。第二章「あなたの計画はなぜ失敗するか」は非常にわかりやすい。なぜ計画が失敗するか、その理由を9つ挙げているのでここではそれを引用したいと思います。

  1. 計画の目的・目標がはっきりしていない
  2. 頭のなかだけで組み立てた計画になっている
  3. 状況判断を誤って計画している
  4. 目先の問題解決を積み重ねただけの計画になっている
  5. 複数の計画案の中から選びぬかれていない
  6. 計画通り実行する熱意に欠けている
  7. 計画実行の勘所を外している
  8. 終わりからの逆算ができていない
  9. 計画の適切なフォローアップができていない

それぞれの項目について気になる方はお読み頂きたいと思いますが、特に私がいつもそうだな…と深く反省するのが「複数の計画案の中から選びぬかれていない」という項目。計画はざっくりとした方向だけでよいので複数作成し、関係するメンバーと必ず話し合って選択するというターンを必ず作ることですね。自分一人で動かすことができる計画なんてないのだから、そこで自分が進めたい計画に対する思いを強めることと、オルタナティブを考えることによってひとりよがりにならないということを常に考えていないとな、と感じます。

このように計画の失敗からフォローアップし、よりよい目標とそこに至る決意をさらに強くするということが大事なのだと気づかせてくれます。初めてこの本を読んだ時は具体的な計画の建て方について学ぶところがあったが、数年経った今読んでみると計画を立てる時の根本を思い出すことの重要さを感じます。

 

「『計画力』を強くする」目次

はじめに

第1章 ”計画力”とはいったい何か
生きるための能力/人間は計画する葦である/計画し実行する力/衰えた計画力/達成感の正体

第2章 あなたの計画はなぜ失敗するか
計画が失敗する九つの理由/1.計画の目的・目標がはっきりしていない/2.頭のなかだけで組み立てた計画になっている/3.状況判断を誤って計画している/4.目先の問題解決を積み重ねただけの計画になっている/5.複数の計画案の中から選びぬかれていない/6.計画通り実行する熱意に欠けている/7.計画実行の勘所を外している/8.終わりからの逆算ができていない/9.計画の適切なフォローアップができていない

第3章 目的・目標をどう扱うか
計画のステップ/目的・目標を扱う三つのポイント/1.計画の目標・目的を明確にする/2.目的・目標と手段を取り違えない/3.目標に期限を設定する

第4章 目的・目標を実現する計画をどう作るか
計画立案のための五つのポイント/1.想像力を働かせて構想する/2.正しい計画のステップを踏んで立案する3.複数の計画案を練る/4.計画案を正しく評価する/5.不確実差のリスクをできるだけ回避する

第5章 プロジェクト・マネージャーに求められること
計画実現のキーパーソン/プロジェクト・マネージャーに求められる四つのこと/1.計画の本質を捉えられること/2.システム思考に基づいて物事が進められること/3.迅速な意思決定ができること/4.関係者を説得できること

第6章 計画をどのように実行するか
計画実行の四つのポイント/1.計画の勘所を押さえる/2.計画の人間的側面に配慮する/3.段取りと手順を大切にする/4.計画の実行をフォローアップする

おわりに

 

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