KADOKAWA/中経出版
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この本はタイトルの通り文章術の本ですが、非常にバランスがいい本です。
特に、定期的に本を読んでアウトプットしたいと考えている人におすすめしたいです。難しいことをシンプルに解きほぐし、身に付けるべき技術を具体的に手に入れられる本だと感じました。
著者の印南氏はライフハッカー(日本版)で週5本の書評を連載しているプロ書評家です。週5本ということはつまり、平日は毎日書評を上げていることになります。私は以前様々なブログメディアのコンテンツ量を調査したことがあり、ライフハッカーというサイトのコンテンツ量は恐ろしいと唸らされたことがありました。2008年に開始されて約7年のサイトですが、どこにどんなエントリーが残っているのか分からない。多すぎるのです。総エントリーが何本あるのかという基本的なことすら簡単には把握できません。それでいて、ライフハックとは何か?という本質を捉えて、時代に合わせた内容にそったコンテンツが現在も積み重なっている。そのコンテンツ量のヤバさの一端を印南氏は担っているわけです。なぜそんなことが可能なのか?日々大量の本を読み、アウトプットできるのか。
印南氏は、大量の本を読むために大事なこととして、流し読みで良い本と熟読すべき本を区分して読書体験を増やしていくことを勧めています。これは衝撃です。ある意味、読まなくてイイ本は読まないでイイと言っているわけですから。しかし、この本を読んでとても気持ちが楽になったというのが正直な印象。ちなみに私はこの本を銭湯に行った帰りに2時間で読んで書いています。という意味で言えば、この本も正しく読み流すべき本であり、正しく読み流す実習ができるという塩梅になっています。
彼は幼い頃から「活字の虫」だったと回想する中で、こんなことを述べています。
とはいえ私は、どう考えても読書のエキスパートではありません。それどころか、読書に関して自分に決定的な弱点があることも、中学生当時から気付いていました。それは読書速度の遅さ。もちろん無理なく入り込める本もありますが、最大の問題は、「なんとなく興味の持てないもの」「文章が難解なもの」「義務として読まされているもの」、そして「おもしろくないもの」だった場合、読む速度が著しく遅くなるということです。
そして、そういうタイプの本はなかなか頭に入ってこないため、わかりにくい箇所を何度も何度も読み返してしまうことになります。気にせず読み進めればいいのですが、それができない。だから、ちっとも進まない……ということは日常茶飯事。
そんな印南氏が週5冊の本を紹介しなければならなくなり、追い込まれて気付いたこと。それが、
「別に隅から隅まで読まなくても、内容は把握できる」
ということでした。私もこの文章を読んでやっと、「あ、そうか。」と気付くことができました。同じ悩みを持っている方は、ぜひこのくだり、具体的には26ページから39ページまでを読んでいただけると共感できることばかりだと思います。その上で、どのような本は流し読みすべきで、さらに難しい本、面白くない本の要点を効率的につかんで伝えるかということまで伝授してくれます。
この方法の良さは、「より多くの素晴らしい本との出会いをつくることができる」事にあります。自分には難しくても挑戦してみたいと思える本、グイグイとページをめくらせる本…といった素晴らしい本に出会うためには、ただ難解な本、面白くない本を大量に通り抜けなければいけないのです。ただそれは切り捨てるだけではダメで、その本の伝えたい事を短い時間の中で、本から必要な情報が飛び込んでくるよう意識を集中させて読む。そうすれば瞬間にハッと気づくものが得られる…それをレコード屋でのジャケット買いになぞらえているのがらしいですね。
具体的な文章の技法については非常に基本的な事をおさえる内容になっていますが、なによりも「センス」が大事だと伝えています。そしてセンスを磨くための方法としては、
①読む習慣を身につける
②他人の視点に立つ
③好きな書き手の真似をする
という3つを取り上げています。「読む習慣を身につける」というトピックの中で、「特に読書の中で何かを感じ取ろうとしなくても良い」と説くのには少し疑問が湧きましたが、返す刀で「必要なことは自然とインプットされていくはずだから」と語っていてさらに納得しました。自然とインプットされるというレベルまで思い切り良く読み続けることによって自分にとって大切な文章を出会えるということなのでしょう。そこまでの習慣化、気楽な読書の積み重ねを大事にしたいですね。
最後に、これだけの読書を重ねているからこそ印南氏が出会うことができた大切な本、文章を作るために欠かせない本などが本文中に散りばめられています。中には入手しにくいものもありますが、なるほど、こういった本のエッセンスを受け取りながら日々書き続けているのだなというリアリティを感じることができました。お題目だけの本では伝わらない、こういう細かい所を感じ取るのもいいかもしれないですね。ぜひ読んでみてください。
KADOKAWA/中経出版
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伝わる文章を書く技術 目次
はじめに
STEP1 プロ書評家が教える読書術・時間術
隅から隅まで読む必要はない
ビジネスジャンルにおける、読み込むべき本と流し読みでいい本
「まえがき」と目次で判断せよ
効率的な斜め読みのテクニック
STEP2 読み手の視点に立つ
ターゲットの見極めとイメージの構築
”刺さる”を考える
読み手と時間の関係性
STEP3 大切なのは「伝える」こと
「表現する」のではなく、「伝える」
ウェブメディアが殺したデリカシー
伝えるための文章表現
大切なのは「つかみ」
「まとめる」テクニック
「引用」と「地の文」のバランス
書き手にとっての「編集(edit)」
STEP4 「読ませる」文章の書き方
「読ませる」文章に必要なもの ①センス
「読ませる」文章に必要なもの ②文法
「読ませる」文章に必要なもの ③リズム
「読ませる」文章に必要なもの ④簡潔さ
「読ませる」文章に必要なもの ⑤削ぐ力
時間をかければいいわけではない
書けなくなったらどうすればいいか
「黄金時間」を設定する
メールは短文の練習に最適
「ですます調」か「である調」か
漢字と仮名のバランス
「格好いい」と思える文章を書く
SPECIAL対談 「ライティングで大切なことって何ですか?」
ライフハッカー[日本版]編集長・米田智彦×印南敦史