就業規則を10名未満の会社経営者が定めるメリットを解説

会社が定める働き方のルールを「就業規則」と呼びます。労働基準法では、常に10名以上のスタッフを雇用している会社では経営者は就業規則を作成し労働基準監督署に届け出ることと定められています。

では10名未満の会社の場合は就業規則が必要ではないかというと、そうでもありません。

就業規則を定めることは、会社経営者として得られるメリットも大きいので早めに作成しておくことが得になるといえます。

この記事では経営者にとってメリットのある就業規則をまとめるための具体的なポイントを解説しています。
※2017年4月5日追記(2016年8月23日公開)

10名未満の会社が就業規則を定めることのメリットとは?

会社を運営する上で必要になるのはその職場の実態にあった働き方のルールづくりです。会社が定める働き方のルールのことを「就業規則」と呼びます。

就業規則は10名以上のスタッフが働く会社であれば作成して労働基準監督署に提出する義務があります。しかし10名未満の会社では提出する義務はありません。

そのため10名未満の会社では就業規則を作成していないという会社もよく見うけられます。

10名未満の会社であっても就業規則を定めることにはメリットがあります。

義務だからではなく、就業規則を定めるメリットを確認しよう

就業規則を定めることで会社が受けられるメリットにはどのようなものがあるでしょうか?

まず、就業規則を定めることにより労働時間や残業、休日出勤などスタッフの給料や健康に対しての明確な基準を設定することができることです。

経営者が会社の明確なルールを設けて一律的にスタッフに対応することにより、人事や経理にかかるコストを低減することが可能になります。

働く際の給料や休日などの基準が明確であることで、新しいスタッフを求人する際にも求職者の不安が少なく、採用がスムーズに進むというメリットもあります。

また、労働条件や雇用関係を続けるうえでのルールが整備されることで、裁判に訴えられるリスクを軽減することができます。

経営者にとっては、時間的や金銭的な負担を減らすことができるのも大きなメリットです。

これらのメリットは会社の規模に関係なく受けることができます。

10名未満の会社であっても、就業規則を定める意味はとても大きいといえます。

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就業規則を定めないことのデメリットは?

とはいえ10名未満の会社では策定義務はない就業規則。もし就業規則を定めなければ、経営者にとってどのようなデメリットがあるのでしょうか?

就業時間や給料の支払いなど、スタッフに働いてもらう上で基本となる項目について就業規則を定めていない場合は、労働基準法の原則に沿った対処が必要になります。

基本的に労働基準法は労働者を一律に保護する性質を持つため、常識では考えられない、いわゆるモンスター社員のような存在があらわれてしまった時には経営者にとって大きなデメリットとなります。

デメリットをメリットに変えるルール作り

経営者は労働基準法に定められている働き方の原則を理解した上で、スタッフとの協定を結ぶことで例外規定や様々な制度を活用することができ、経営面でのメリットを受けられるようになります。

たとえば、スタッフが自分の有給休暇の日数内で休暇を取る場合には、相応の理由がない限り会社は休暇の日時を変更する「時季変更権」を行使することはできないとされています。

しかし、就業規則で有給休暇を利用する際には基本的に書面での事前申請が必要であると定めることは有効な手段です。

スタッフが事前に有給休暇申請を提出してもらえれば、部署内でフォローする体制をつくる余裕を持つこともできるからです。

結果として有給休暇を取りやすい環境となり、スタッフにとっても気持ちよく働ける環境となります。

もちろん急病などで休む場合に有給休暇を充てたい場合は対処するというかたちで柔軟に利用できるルールにすることも重要です。

他にも様々な項目で、経営者にとっても合理的に人件費や予期せぬリスクを抑え、スタッフにも納得してもらえるルールを定めることが可能になります。

就業規則を定めましょう

経営者が就業規則に盛り込むべき3つのポイント

労働基準法では、就業規則には・労働時間と休憩時間、休日、休暇について
・賃金について・退職について、の3点は必ず定めなければいけないとされています。

また、働く上での安全・衛生や働く上で起こる災害に対しての規定、表彰や懲戒処分についての規定、通勤手当や住居補償などの手当についての規定や転勤や配置転換についての規定など、会社が定める様々な規定をまとめることができます。

これらの内容については厚生労働省のホームページに「モデル就業規則」としてまとめられているのでこれをひな形として自社の就業規則を作成するのが簡単です。

しかし、モデル就業規則の中では考慮されていない、会社経営者にとってメリットのあるポイントがいくつかあります。ここでは会社のルールとして定めておきたい内容をご紹介します。

会社経営者として、モデル就業規則に少なくともこれだけは加えておきたいという重要なポイントは3つあります。

1. 昇降級・解雇についての規定を定めること
2. 退職時の引き継ぎについての規定を定めること
3. 残業代を抑えることができる就業時間の規定を定めること

以下ではそれぞれのポイントについて解説していきます。

昇降級・解雇についての規定を定めること

会社として望ましい働き方で成果を出すスタッフにはきちんと応え、採用時に気づくことができなかった問題を抱えるスタッフに対しては、降格や解雇といった対応が取れるようにルールを定めておく必要があります。

このような問題社員の存在を労働法では想定していませんので、就業規則がない場合には対応に手間がかかり会社もダメージを受けます。会社として、個別の社員に対処できる仕組みが必要です。

10名未満の会社の場合、ひとりの問題社員が周囲のスタッフにも悪影響を与えることもあります。

もし、降格や解雇といった社員にとって不利益になる内容について、明確な対応方法をルールとして定めていなければ、会社から不当な扱いを受けたとして裁判に訴えられてしまうとこともありえます。

経営者とスタッフの双方が納得する範囲内で就業規則に盛り込みたいポイントです。

就業規則ではスタッフに対するメリットも、定めることができます。成績に対する報酬や、経営上の良いアイデアに対する報奨制度など優秀なメンバーに対する処遇を明確化することでモチベーションを高める効果が見込めます。

仕事の質・量に対する評価や経営方針の理解度に合わせて、昇降級を可能とする判断基準を明確にすることが大切です。

退職時の引き継ぎについての規定を定めること

退職するスタッフが業務の引き継ぎをまったく行わずに、有給休暇の消化期間に入ってしまうこともあります。

10名未満の会社の場合は1人のスタッフが抱えている仕事は広くなりがちなので、いきなり出社しなくなってしまったということになれば大変です。

きちんと仕事が新しいスタッフに引き継がれるよう、ルールとして就業規則に盛り込むことで対処が可能になります。

モデル就業規則では、退職の事項の中には業務の引き継ぎについて配慮はされていませんので「退職時には業務の引き継ぎを行うこと」と記載しておく必要があります。

また、退職届の提出時期を有給休暇の日数に加えて引き継ぎができる余裕を加えて、たとえば「退職日の30日前までに提出すること」などと定めるとよいでしょう。

加えて退職前に業務引き継ぎを行うことで退職金の支払いや有給休暇の買い取りを行うなど、スタッフにとってメリットとなる条項を盛り込むことも考えられます。

実際に現場で業務引き継ぎが行われるように、制度面でスタッフのモチベーションを支えることも有効な手段です。

残業代を抑えることができる就業時間の規定を定めること

就業時間についても就業規則による規定がなければ経営者とスタッフとの意見の相違が起こりやすいポイントですので、きちんと就業規則に定めておくことが大切です。

「フレックスタイム制」や「裁量労働制」などの就業時間のとらえ方を見直す制度を適用することもできます。

たとえば業務量が繁忙期とそれ以外で大きく違ってくる場合にはフレックスタイム制を採用するのが有効です。

この場合スタッフが自分の裁量により業務量が少ない時期に勤務時間を減らすなど業務時間を調整することができるようになります。経営者にとっては業務時間を減らした分支払う残業代を抑えることができます。

このように就業時間についての制度を改めることにより、経営者もスタッフもメリットを得ることができます。

就業規則をつくる時は労働基準監督署に相談するのがお得

ここまで就業規則に盛り込みたい、会社がメリットを受けられる項目について解説してきました。

しかし、それぞれの会社で具体的なルールを作成する段階になると、一人でルールを作り上げるというのは難しいかもしれません。

これらのポイントを就業規則に盛り込むときには、具体的に作成した就業規則の案について労働基準法に抵触しないかということを労働基準監督署の窓口に相談することが可能です。

労働基準監督署では就業規則の内容について無料で働き方のプロフェッショナルに相談することができるので、社労士に依頼するコストを抑えることができ非常にお得です。

経営者とスタッフがともにメリットが受けられるルールを

それぞれの会社に特有の事情があると思いますが、その事情に合わせたルールをつくり、運用することで人事や経営についてのコストをおさえることができ、経営者とスタッフがお互いにメリットを受けられるようになります。

10名未満の規模の小さな会社であっても、これから社内のシステムを整備していきたいと考える時には働き方のルールも合わせて整備していくのが今後のためになるといえるでしょう。ぜひ就業規則の定め方を参考にしてください。

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