経営者のための残業を減らすノウハウがわかる『労働時間を適正に削減する法』

経営者として実用的な「労働法の運用がわかる本」が知りたいと思ったことはありませんか?

労働基準法は経営者の立場からみると非常に複雑な法律で、とくに解雇と残業については厳しく定められており、合法的に運用することが難しい法律です。創業まもない経営者にとって、社会保険労務士に相談する余裕もなく、独自に運用すると、知らず知らずのうちに労働基準法違反の状態になってしまっているというケースも多いものです。

労働時間を適正に削減する法
労務リスクソリューションズ
アニモ出版
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この本は『労働時間を適正に削減する法』というタイトルですが、大きく分けて2つの方法を教えてくれます。1つは合法的に「残業代」の支払額を減らす方法、もう1つは労働時間を減らす方法です。経営者にとってもきれい事ではなく、実用的なノウハウが詰まった本です。

労働時間を削減する方法は、法律的に定められている便利な制度や、社内制度として運用されている事例など、多種多様に存在します。

そうした労働時間削減対策をわかりやすく教えてくれるのが『労働時間を適正に削減する法』です。
この記事では、なかなか人に相談できない労働時間に関する疑問を解消してくれるこの一冊をご紹介します。

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『労働時間を適正に削減する法』の特徴

難しい労働基準法を解説するため、この本ではちょっと無茶を言う社長「べらんめえ社長」と頼りになる労務の専門家「ソリュー先生」との対話形式をとっています。社内制度設計や労働時間についてのむずかしい話を、読み手の代わりに「本当のところどうなの?」というぶっちゃけた疑問を専門家にぶつけてくれるため、とても初歩的、かつ実用的な知識が身につけられます。

登場人物のひとり「べらんめえ社長」は、建設会社を経営していて、工事部門20名、事務部門5名の従業員をかかえる社長です。べらんめえ社長は、すこしおバカキャラというか、そそっかしいのですが素直なのでどこか憎めないキャラクターです。
もうひとりが「ソリュー先生」。労務問題のプロフェッショナルで、べらんめえ社長が抱える疑問を丁寧に解説してくれます。

もうひとつ、本書の大きな特徴が、実際の判例を交えて法的に解説してくれる点です。
労働時間については、経営者(使用者)と働き手(労働者)のあいだに交わされる契約に基づく部分が大きいですが、契約に明記されていないことに関しても問題になることが多々あります。
そうしたわかりにくい裁量を、実際にあった裁判の事例を参考にすることで、丁寧に解説してくれているところが、本書の大きな特徴のひとつです。

実際の判決を事例に労働時間を適正に理解する

この本、『労働時間を適正に削減する法』は、べらんめえ社長のもとに先月会社を辞めた元社員から、2年分の未払い残業代400万円を支払うことを求める通知書が届くところからはじまります。

べらんめえ社長は、夜遅くまで残業していた社員に対して、残業代としてではなく、給料やボーナスを多めに与えていました。正式に残業代として支払っていたものではないため、多く払っていた分は残業代として認めてもらえないかもしれないとソリュー先生。

わかってたはず、という願望ではなく、きっちりと適正な手続きを経るようにとソリュー先生に諭されたべらんめえ社長。まずは社員の労働時間について正確に記録することからはじめることにします。

ソリュー先生によると、「労働時間」については、労働基準法等の法律には定義規定がありません。本書『労働時間を適正に削減する法』は、こうした法律に記載されていないあいまいな部分を、実際の判例に沿って、適正に解説してくれます。

たとえば、「労働時間」とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であると、2000年3月9日の最高裁で判決された「三菱重工業長崎造船所事件」に基いて決まっていると説明されています。

ほかにも、作業前の作業服への着替え時間も労働時間に含まれますし(三菱重工業長崎造船所事件/最高裁/2000年3月9日)、始業前に行なう点呼(東急電鉄事件/東京地裁/2002年2月28日)なども労働時間です。

逆に、通勤時間は労働時間には該当しませんし、会社の寮から工事現場までの時間も労働時間には含まれないという判例もあるそうです(高栄建設事件/東京地裁/1998年11月16日)。

このように、この本を読めば、労働時間に関する事細かな判断を、実際の判決を事例に、適正に確認することができます。

労働時間を適正に削減する法

労働時間を適正に削減する方法

本書『労働時間を適正に削減する法』は、労働時間に関する解説だけでなく、労働基準法についての詳しい解説や、どこまでが時間外労働にあたるかの紹介、また前回『設計事務所がメリットを得られる三六協定の作成方法|建築士のための労働法入門』で解説したような、適正に労働基準法で定められた労働時間を延長することのできる「三六協定」についても丁寧に教えてくれます。

『労働時間を適正に削減する法』では、前半で上記のような労働時間に関する決まりごとを解説したのち、後半では法律や規定をうまく使いながら適正に従業員の労働時間を削減していく方法を、具体的に紹介してくれます。
こうした具体的な解決策に関して、べらんめえ社長はどんどん素直になっていきます。

ソリュー先生「残業を事前申請・許可制にする一方で、残業の禁止命令を発することも効果がありますね。ただし、その際の留意点はありますが」
べらんめえ社長「なるほど、それはぜひ知りたいね」

めちゃめちゃ素直です。

長時間労働対策のための社内制度設計の見直しをソリュー先生に勧められるべらんめえ社長。
ソリュー先生は、こうした制度設計の具体的な方法だけでなく、変形労働時間制や裁量労働時間制などを活用して法的に認められた労働時間の削減方法、タスク管理や事務所の片付けなど単純な業務効率化の方法まで解説してくれます。
べらんめえ社長の素直さを見習って、すこしずつ確実に労働時間を減らしていきたいと思える本になっています。

『労働時間を適正に削減する法』は、経営者向けの長時間労働対策指南書

本書は、時間外労働などを減らして、利益を減らすことなく生産性を上げたい経営者のために書かれた本です。経営者向けの労働法の本としては、1番実用的な本です。社会保険労務士はまだお願いできないけど、労働法違反で痛い目にあわないポイントが知りたいという経営者のみなさんにぴったりな本です。

労働法は複雑な法律ですが、制度を駆使すると合法的に人件費が削減できる意外なメリットもあります。経営者の最初の労働法の1冊として、『労働時間を適正に削減する法』をぜひ本棚に置いておいてくださいね。

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