近年の建築学科の人気と偏差値は建築業界の好況とともに着実に回復中

2000年代に建築学科を受験した世代にとって、大学入試の傾向として建築学科は不人気であると思われていました。しかし実際は近年、建築系の学科は志望者数が増加しており、偏差値も上昇傾向にあります。

近年は景気が持ち直しており、建築業界は活発化しています。建築学科の偏差値もそういった建築業界の動向と連動していると考えられます。

建築学科の人気の傾向を検証するために、京都大学・東京工業大学・神戸大学・九州大学・大阪市立大学の5つの国公立大学を対象に、建築学科の偏差値を1995年から2015年まで5年おきに調べてグラフにまとめました。

(参考:『大学入試難易ランキング』、代々木ゼミナール著、1995年度、2000年度、2005年度、2010年度、2015年度)

2010年以降の国公立大学の建築学科の偏差値は上昇している

以下のグラフは京都大学・東京工業大学・神戸大学・九州大学・大阪市立大学の建築学科の偏差値を示しています。1995年から2015年まで、5年おきの偏差値をグラフにしています。

5大学偏差値

全体的に1995年-2010年の偏差値の変動は、どの大学も下降や横ばいの場合が多く、低迷しています。この期間が長いため、今も「建築学科は人気がない」というイメージが強いのではないかと思われます。

しかし2010年以降はどの大学も偏差値が上昇しており、建築学科の人気が回復していることを示しています。

河合塾の大学入試情報サイト「Kei-Net」で発表されている「2017年度入試直前動向」によると、工学系の「建築・土木環境」分野は、工学系の他の学科と比べて人気が突出しています。

2017年度の入試においては「建築・土木環境」分野は国公立・私立ともに志望者が前年から1割程度増加しています。さらに女子だけをみると2割増加しています。

建築学科に入ることを夢見る子供

2010年頃から偏差値がV字回復している京都大学

以下のグラフは先に示したグラフを大学ごとに示し直したものです。各大学について、個別に傾向を解説します。

京都大学偏差値

京都大学の偏差値はグラフ全体を見ると、2010年を底としたV字回復の形になっています。最も偏差値が高いのは1995年で、そこから2010年まで偏差値が下降しています。

最も偏差値が低い2010年から2015年までの偏差値の上昇はかなり大きく、5年間で一気に1995年の偏差値の水準近くまで回復しています。京都大学の建築学科の人気が大きく上がっているのがうかがえます。

2010年頃から偏差値がU字回復している東京工業大学

東京工業大学は学科による分類ではなく、研究領域を「類」で分けています。全部で7類に分かれており、建築系・土木系は6類です。

東京工業大学偏差値

東京工業大学のグラフは全体的には浅いU字回復の形になっています。1995年から2000年にかけて6類(建築系・土木系)の偏差値は下がり、2000年から2010年は横ばいで、緩やかな低迷状態であると言えます。

2010年から2015年にかけての偏差値はやや大きく上昇しています。東京工業大学での建築系・土木系の人気が回復しているのがうかがえます。

2005年頃から偏差値がU字回復している神戸大学

神戸大学の建築学科は1992年に土木系の学科とまとめられ、当時は建設学科という名称でした。2007年に改組され現在の建築学科になったため、グラフの1995年から2005年の偏差値は建設学科のデータになっています。

神戸大学偏差値

神戸大学建築学科の偏差値は、全体としてはやや浅めのU字回復の形になっています。1995年から2000年はやや大きめに下降しており、そこから2005年までは横ばいなっています。

2005年以降は徐々に偏差値が上昇し、1995年と同じ水準にまで回復しています。着実に建築学科の人気が回復している様子がうかがえます。

2005年頃から偏差値がV字回復している九州大学

九州大学の建築学科の偏差値は全体としてはやや浅めのV字回復の形になっています。偏差値は1995年が最も高く、それ以降は2005年まで偏差値は下がり続けています。

九州大学偏差値

しかし2005年以降の偏差値は上昇を続けています。2015年の偏差値は1995年の水準に迫っており、建築学科の人気は回復傾向にあります。

2010年頃から偏差値が回復の兆しをみせている大阪市立大学

大阪市立大学の偏差値は全体的に見ると、山と谷がある形になっています。偏差値のピークは2000年に来ており、それ以降の2005年から2010年は偏差値は下がっています。

大阪市立大学偏差値

しかし2010年以降は偏差値が上昇しており、回復の兆しを見せています。

建築業界の変化のポイントを押えてチャンスを活かす材料に

調査した大学のほぼ全てで建築学科の偏差値は近年V字回復あるいはU字回復していました。特に2010年頃から偏差値は上昇傾向にあります。

2010年以降は景気が持ち直しており、建設業界の転職市場も活発になっています。大学入試における建築学科の人気もその流れに連動し、偏差値が上昇していると考えられます

2000年代に学生だった現在30代の方には意外かも知れませんが、現在多方向で建築業界が追い風を受けていて、学生だった当時より状況は好転しています。

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