新入社員必読!失敗しない社会人生活を送るためのたった1つのコツ|建築業界入社1年目の教科書

新入社員になったあなたは、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。
入社後の感想は、「仕事がつまらない」「会社が効率的に廻っていない」「辞めたい」などと感じるかもしれません。
これは大学と会社が、異なるルールで動いているためです。

失敗しない社会人生活のスタートを切るため何が必要か。重要な考え方と具体的な方法をご紹介します。

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1,大事なのは「周囲に貢献する意識」があること

徹底した傾向と対策を練った就職活動にくらべて、入社後を十分にイメージしないまま、4月を迎えてしまったという話を良く聞きます。
入社前に知っておかなくてはいけないことは、どのようなことなのでしょうか。

1-1 なぜ優秀な学生が、新入社員時代につまづくのか?

個人の能力だけを評価されていた学生時代とは違い、会社員生活では周囲に対する貢献意識が評価につながっていきます。
評価軸の違いが、学生時代優秀だった人でも、社会に出ると十分に評価されないというジレンマを産んでいるのです。

それは、建築学科の課題は、設計課題をはじめとして個人の能力を測るものだったからです。
また、就職活動においても、練り込まれたポートフォリオを評価したり、入社試験で即日設計を課すなど、個人の能力を重視するものでした。

しかし、実務において学生時代の「設計ができる」という能力を発揮するまでには時間がかかるものです。

考えてみてください。建築学生は、課題や卒業設計において自由な裁量権があり、それぞれが主体性を持って完成まで係わることができました。

しかし、社会に出るとクライアントや会社・上司がいますから、関係者から信頼を獲得しないと、こうした能力を十分に発揮するようにはならないのです。
周りを巻き込んでプロジェクトを動かすためには、個人の能力だけでは不十分なのです。

1-2 会社が期待するのは、周囲とうまくやる能力

若手に対するメッセージとして、多くの著名人が周囲とうまくやる能力が重要だと指摘しています。

例えば、ライフネット生命の岩瀬大輔さんは、新入社員向けに書かれた『入社1年目の教科書』で、最初の段階での評価は能力は関係なく、「社会人として当たり前のことを、ちゃんとやれる人物か」であると指摘しています。
さらに、コンサルタントの山口揚平さんは著書の『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと 答えのない不安を自信に変える賢者の方法』で、学生と社会人との最大の違いを「(周囲に対して)貢献意識があるかどうか」だと指摘しています。

社会に出て最初に学ばなくてはいけないことは、周囲に貢献する意識を身につけることです。これは技術的なものではなく、社会性や人間性が問われるものです。

2,貢献は成長への近道?貢献することのメリット

2-1 努力する時間が最短になるから

新人の育成は、会社の務めではあるのですが、教えるべき技術を持っているのは会社ではなく、先輩の設計者・技術者です。
会社にとって新人の育成が義務であっても、そこで働く先輩方にそこまでの意識がある人は少ないのです。

建築のプロジェクトは他業界と比べても長く、成長するまでに非常に時間がかかります。
早く成長するためには、周りから吸収できる環境を自分で創りあげなくてはいけません。

ここで貢献意識が重要になってくるのです。
直属の上司だけでなく、周囲の先輩のために貢献意識をもってサポートすれば、知識・技術の伝授という形で返ってくるはずです。
貢献するといっても技術や知識だけでなく、相手のためになることであればなんでもかまいません。

仕事を覚えると1つあたりのタスクにかかる時間が目に見えて短縮していきます。
仕事が早くなれば、数年後多少力を抜いても仕事を廻していけるようになりますし、できた余裕時間で新しいスキルを獲得できるようにもなるのです。

2-2 最初の1年の過ごし方が、その会社での評価を決める

人の評価はあっという間に決まります。会社員生活の最初の1年で人の評価はほぼ固定化されます。
いったん「できないやつ」という評価を受けてしまうと、その評価を覆すには何年もかかってしまうのです。

頑張るのは最初の1年間でいいのです。ですが、最初の1年は自分が意識している以上にいろんな人があなたのことを見ているのです。
周りがみてくれる環境というのは、実は自分の頑張りが周りに伝わりやすい効率の良い環境でもあるので、こうした機会を無駄にしないようにしましょう。

2-3 面白い仕事を任せてもらえる

若手時代は、成長するに従って仕事の質はどんどん高くなっていきます。
仕事というのは巡り合わせもありますが、大抵は上司や周囲が普段のあなたの行動をみていて、少しずつレベルの高い仕事を任せていくようになります。
仕事を頼まれたときに、相手の期待値を上回るものを出すことで、次のオイシイ仕事への扉が開きます。

ただ、チャンスである仕事は時にわかりやい形をしていないこともあります。
意外にも「周りが嫌がる仕事」にチャンスは隠れていることを覚えておくと損はないでしょう。
みんなが嫌がる仕事は、実はライバルがいない仕事でもあるのです。

2-4 一級建築士の合格の布石になる

一級建築士受験時を見据えて、周囲に貸しを作っておくことも大切です。貢献している状態が認められていれば、ある程度のわがままは許容してもらえるものです。

フリーランチでは、一級建築士は2年目もしくは3年目での受験を推奨していますが、一級建築士は計画的に知識を身につけたとしても、直前期はやはりまとまった時間があった方が有利になります。

3,仕事を覚えるために必要な建築+ビジネスという視点

建築業界で働くために必要なスキルは、建築の技術者とビジネスパーソンという、2つの面から学んでいくことになります。

3-1 建築技術者としてのスキルを磨こう

3-1-1 基礎的な本を買う

まず買うべきは、建築実務に関する本です。
以下の本は買っておいて損はありません。

検査員が明かす 建築確認の誤解 (NA一生BOOK)
ビューロベリタスジャパン
日経BP社
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法律
・『建築基準法 目からウロコの確認申請
→法律の1冊目はまずこれです。どのように法規を使いこなせばいいのか、困った時のレファレンスとして使います。
・『確認申請マニュアル コンプリート版 2015-16 (エクスナレッジムック)
→確認申請提出前に使うマニュアルです。目からウロコとは使い方が違い、こちらは確認申請の書類をいかに作成するかに力点を置いて解説されています。
・『検査員が明かす 建築確認の誤解 (NA一生BOOK)
→コラム形式で法律に関する「もう一歩」がわかりやすく解説されています。分厚い解説本だと頭に入ってこないので、こちらで法律に関する知識を補完するとよいでしょう。

○建築設備、建築技術
・『建築設備パーフェクトマニュアル[集合住宅・オフィスビル編] (エクスナレッジムック)
→建築設備のまずは一冊です。木造以外のビルディングタイプを担当する人、必携。木造住宅系の仕事をしている人は、同シリーズの『建築設備パーフェクトマニュアル2013 (エクスナレッジムック)』を買うといいでしょう。
・『サクッとわかるRC造のつくり方 (エクスナレッジムック)
・『サクッとわかる鉄骨造のつくり方 (エクスナレッジムック)
→このシリーズは、現場の写真を交えながら、RC造や鉄骨造の施工プロセスが理解できるようになっています。

・『公共建築工事標準仕様書 建築工事編 平成25年版
→建物の標準的な建設プロセスがルールとして規定されています。品質を保持するための方法とその確認(検査)方法が定められています。

建築の実務書は、積極的に購入するべきです。
建築業界の知識はあまりウェブに乗っていないので、検索ではどうにもならない部分が多いからです。
上記にあげた書籍以外で何かを買うとしたら、以前私がまとめた『建築ビジネスブックガイド100 ~実務経験がなくてもわかる100冊の実務本(建築+ビジネス書)~』か、会社の先輩のデスクに置いてある本を参考にするといいでしょう。

3-1-2 先輩から教わる

教えてくれる存在をたくさん作りましょう。
少し大きな会社であれば、部署が違う先輩まで広げていろいろなことを聞いてみるのもいいでしょう。

ただし、ある程度基礎知識を覚える気が自分にないと、先輩も自分の時間を削ってまで教えてくれませんので、実務書を通じてキチンと身につけておきましょう。

先ほど貢献意識が大事だと書きましたが、これは自分が困った時に助けてくれる相手をつくるという側面もあります。

例えば自分がプロジェクトの一員でなくても、先輩が抱えている〆切前に出力や製本を手伝ってあげるような些細な心配りでもかまいません。
知識がある人を助け続ければ、自分が困っているときにも手を差し伸べてくれるはずです。

3-2 ビジネスマンとしてのスキルを磨こう

建築技術者は、技術者でもありますが、ビジネスマンでもあります。
建築学生は建築に関しては学んできていますが、ビジネスマンとしての知識は皆無です。
30代になってもビジネススキルが十分に培われていない人がたくさんいる業界ですので、この分野については自分で積極的に投資していく必要があります。

3-2-1 ビジネスマナーを学ぶ

礼儀作法や身だしなみ、メールや手紙の書き方などがここに含まれます。
建築業界を対象とした専門書とは違い、新入社員向けの本もたくさんでていますので、それらを手に取ってみてもいいでしょう。

入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

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岩瀬 大輔
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○心構えを学ぶ
・『入社1年目の教科書
→新入社員の基本的な心構えが書かれています。ある程度取り入れられれば、周囲からいい評価を得られるでしょう。

○マナーや基本スキルを学ぶ
・『さすが!と言われる ビジネスマナー 完全版
・『いちばん伝わる!ビジネス文書の書き方とマナー
→ビジネスマナーと基本文書の文例集は、入社前に目を通しておきましょう。
・各種オフィス系、DTP、CADの本
→とくにExcelはよく使うので、何かしら本を買っておきましょう。

3-2-2 タスク管理、チームで仕事する方法を学ぶ

社会に出ると複数の細かなタスクを効率的に捌いてく能力が求められます。
設計演習や卒業設計、論文など、大きなタスクを中心に日常生活を過ごしてきたため、建築学生はマルチタスクが苦手な傾向があります。

全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
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○タスク管理について学ぶ本
・『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
→タスク管理の王道の本です。いちばん体系化されています。私はこのシリーズを何度も読み返しています。
○チームで仕事をするにあたって読みたい本
・『自分の小さな「箱」から脱出する方法
→早めに読んだ方がいい概念です。今回の貢献意識に通じる考え方でもありますし、社会人生活の心構えとして必読です。

4,おわりに

4-1 1度しかない新卒時代を有意義に過ごしてほしい

新卒というのは仕事を覚えるうえでは本当に恵まれた環境です。
けれど、働くということにネガティブな感覚を持ったままで入社してしまい、出だしから出遅れてしまう人が数多くいます。
最初にマイナスのイメージを与えてしまうと、その会社での評価を挽回するのはとても難しくなるのです。はじめが肝心です。

例えば、今回の「貢献する」という言葉に違和感を持つ人も少なくないでしょう。
この「貢献する」という考え方は、建築の技術的なことの前に、一緒に仕事をしたいと思えるかという当たり前の視点にすぎません。

貢献意識を持って効率よく成長していくと、会社はあなたのことを手放したくなくなります。
成長すれば、会社とあなたの立場が逆転するのです。
早く価値のある人材に育ち、転職カードをちらつかせながら会社と交渉できる人材になれば、結果的に早く楽になるはずです。

貢献意識の大切さを知っている若手社員は少なく、受験勉強や就活に比べてライバルも少ないので、成果も出しやすい。いいことずくめだと思いませんか。

4-2 なぜこの記事を書いたのか

私は転職エージェントをやっているので、公式にも非公式にもたくさんの相談を受けてきました。
若手から相談を受けることもありますが、職場とうまい距離感をつくれておらず、出てくるのは愚痴ばかりということもままあります。

仕事を紹介する立場から見ると、会社の不平を言うだけだったり、やる気がない状態で何年も過ごしてきた人を推薦できる会社はあまりないんですよね。

この状態の人をなんとかすることもできるのですが、入社して数年が過ぎると軌道修正にかなりの時間を要します。
手遅れになる人をこれ以上増やしたくないので、このエントリーを書こうと思いました。

4-3 会社と自分の距離感をまずは見極めよう

私たちは頑張ったのに報われなかった人を、職場を変えることで本来その人が受けるべき正当な評価が受けられるようにすることはできます。

正しい努力をしてもうまくいかないようであれば、職場とあなたの適正がマッチしていないだけです。
転職するにしても、その職場で吸収できることはしてからのほうが、次の職場探しでもいい出会いに恵まれる確率は高まります。

だまされたと思って、1年間だけ頑張ってみてください。きっと来年の4月には違う景色が見えているはずです。
それでもどうしても困ったことが起きたら、フリーランチのキャリア相談を受けに来てください。
この記事を最後まで読んでくれたあなたなら、きっと打開策を一緒に見つけることができるはずです。

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