地方創生の目玉政策である「地域おこし協力隊」。地域おこし協力隊員として、富山県氷見市に移住した私が感じる「地方移住のメリット」を語ります。
地域おこし協力隊の一員として過ごした1年間のイベントや活動の写真を交えながら、地方移住の魅力を具体的にお知らせします。
地域おこし協力隊の活動に興味がある方はもちろんのこと、地方創生や地方移住に興味はあるがきっかけがなかった方に、東京にはない地方移住の魅力が伝わればうれしいです!
地方移住で、氷見ならではのこだわりのグルメを思う存分満喫!
なんといっても食は魅力的な要素です。
都会では頑張って入手しなければ手に入らない食材が、近くでとれて、無理せずに食べることができる環境があるんです。
いちばん美味しい旬の時期にその素材の魅力を堪能することができるのです。
まず、魚は家から徒歩10分の漁港で採れた定置網漁の魚を朝から食べることができます。
定置網漁の漁師が集まる番屋でイワシの煮物とお刺身をいただく。鮮度最高のイワシはまったく臭みがなくてうまい!
コダイのマース煮 。マース煮とは、沖縄風の塩だけで味付けした煮物です。自分でつくったので見た目はもう少しですが、味は好評でした。
定置網ではマグロも捕れます。中落ち丼が970円。すごいボリュームです
これは宴会のために買い込んだ魚たち。下にもきっちり魚が詰まって一箱3000円ぐらいでしたか。カワハギの肝和えが非常に美味でした。
協力隊の仲間が定置網で採れた様々な種類の魚を、包丁を奮って紹介してくれる事もあります。だいぶ魚の種類に詳しくなってきたと思うんですが、名前が思い出せない魚も沢山あって恥ずかしい……。
氷見といえば寒ブリが有名ですが、昨年度は記録的な不漁でした……。
それでも近くで採れる魚は非常に種類が豊富で、別に高いブリを食べなくても十分豊かだなと感じることばかりでした。
去年一年だけで、食べたことのない魚を何十種類といただきました。
また魚といえば、あまり気負わずに美味しい回らないお寿司が食べられるので、これまでの寿司に対するイメージが少し変わりました。
この写真は氷見ではないのですが、能登の穴水町にある「幸寿司」。
地魚だけのセットがとてもおいしいんです。ランチだと2000円程度で鮮度の高い地魚のお寿司がいただけます。
野菜は周囲で自然農業に取り組んでいる農家が多いですね。
谷間の土地が多く大規模な農業に取り組めない分、多品種で付加価値の高い農作物を作る意識が高いので、うまい野菜づくりにこだわってるのです。
野菜を活かした料理をまちの料理屋さんで研究していて、その勢いには驚くばかりです。
無農薬野菜のソテー。「氷見元気やさいの会」という無農薬・無肥料の自然栽培で野菜づくりをする農家のグループと市内の飲食店が手を組んで、手軽に自然栽培の野菜を食べることができます。
トマトのゼリー寄せ。新しいメニュー開発も盛んに行っていて、驚きでした。
また、まだまだあまり知られていないのですが、耕作放棄地で自然放牧の豚を育てている「氷見ぶーぶーファーム」という養豚場もあります。地元ワイナリーでしぼったぶどうカスを餌にしていて、あっさりとしているけど柔らかくておいしい豚肉です。
お米も無農薬の玄米の美味しい炊き方を教えてもらいました。玄米というと硬いイメージがあったけど、やわらかくおにぎりにできる玄米を食べると、身体にやさしいというのはこういうことかと感じるばかりでした。
自然栽培玄米でおにぎりをにぎります。
うちの家のある地区では普通に肥料などを使う農法で米作りをしていますが、その稲刈りを手伝ったりもしました。生まれて初めての稲刈りでした。
耕作放棄地が増えている事もあり、地区で営農組合と呼ばれるグループを作って10人ぐらいで野球グラウンド1つ分ぐらいの田んぼを耕作しています。この日は富山特産の品種「てんたかく」の刈り取り作業をしました。 栽培がはじまって20年ほどの新しい品種ですが、粒が大きくて甘みの強い美味しいお米です。
直接流通だから自分で刈り取ったお米が30kg7000円で買えるのです。普通スーパーで買うと安くても10kg3000円だから、30kgにすると9000円ですよね。
さらに刈り取りの時のアルバイト代も出るのでどれだけお得なんだという話ですよ。
ちょっと暑いけれど風が吹けば心地よいし、なにより米の流通のシステムがわかります。いわゆるJAを通すお米の収穫から流通までのシステムは半端ないですよ。
シェアハウスのメンバーで集まって自炊をすることもあります。
普段はもらった野菜を生かして安く自炊しながら、時々いいものを食べに外食する、そういうリズムが作れると食費を抑えながら、充実した食生活が送れます。
地方には活用を求める空き家がたくさん、氷見では広い住居が安く手に入る
特に氷見市は持ち家の平均広さで全国の市町村中2位というデータもあるほどで、家にかける情熱がとても熱いんです。
私の住んでいる家は15DK です。「15DK」って響きの非日常感が好きです。大体びっくりされます。庭には立派な枝垂れ桜もあってかなりの御殿なのですが、氷見ではこれぐらいの家は珍しくありません。
この家を4人でシェアハウスにして、さらに仏間はときどきイベント会場として使っています。50人で宴会できる大きさといえば、その広さがわかると思います。
50人で宴会をやってみた図。
私の家は家賃8万円で、4人で割って1人2万円というところなのですが、すぐに住むことができる住居で考えると8LDK程度の家で5万円程度、町中に住む場合は5LDKで4~5万円ぐらいと考えていただけるといいかと思います。大きくて内装も整っている分、住居についてはびっくりするほどの安さはないかもしれませんがクオリテイは素晴らしいです。
山間部の集落に住むのであれば、地代さえ払ってくれれば家賃はタダでもいいよという家も出てきます。ただし、それなりに補修は必要ですが……。それでも近くに大工さんがいたり、製材所があったりと、費用をかけずに改修する手段は揃っています。
娯楽はなければ作れる土壌がある、地方移住ならではの楽しみ方
地域に娯楽はないといいますが、それでもいいなと思っています。
個人的には都会的な娯楽はネットが繋がってスマホでゲームができれば十分ですし、氷見に来て、たまに都会に行った時の情報の吸収度がさらに上がった気がします。
遠くから来たというだけで出会う人も優しくしてくれますしね。例えば「富山からきたもちのやさん」というだけで、都会ではじめて会う人からするとキャラが立っていて覚えてもらいやすいんです。
また、無い娯楽は簡単に手づくりできるのも地方の良さです。
うちのほぼ物置だった納屋では音楽ライブを開催してみました。この「納屋」というのが2階建てで改修すれば十分ひと家族は住めるような大きさなのです。これが使われてないのはもったいないと思って少しずつ片付けたり改修したりしています。
このライブはほぼ野外で行うイベントでしたが、地区のみなさんも受け入れてくれて心地よく歌ってもらうことができました。
この納屋でのイベントですが、移住者を増やすために、都会では叶えられないライフスタイルを実現するための場所として民家にある納屋を活かそう、と思い立ってはじめました。工芸品のアトリエにしたり、映像のアーカイブとしてつかったりと、いろんな利用法があると思っています。
さらに、移住してきた若い層と新しい動きに敏感な地元の人たちでFacebookを使ったネットワークができていて、年に数回イベントを開催したりもしています。
「チームパンプキン」を結成し開催した氷見の収穫祭。地元の秋の恵みをみんなで楽しみました。ほぼすべて自分たちで手づくりするからこそ、楽しさもひとしおです。
市の施設を借りて、手づくりビアガーデン「TEAM BEERGARDEN2016」を開きました。
人力かき氷機をつくっちゃった人もいました。
その時によって関わり方は変わってきますけれど、自分たちの手で娯楽を作り出せるのは面白いものです。
ちょっとやる気の出ない時にコーヒーでも飲んでボーっとできる場所があればいいんですが、いまのところ足りないのはそういう場所ぐらいですかね。
地方に住む人は少し控えめだけど、見た目から攻めると気を許してくれる
ご近所付き合いについては、近くにどんな方が住んでいるかが全てなのであまり一般化はできないのですが、氷見に住んでいてよく感じるのは付き合っていて心地いい人が多いということですね。
基本的にあまり出たがりなタイプの人はいないので、こちらから働きかけなければご近所付き合い自体があまりないのですが、周りに迷惑がかかるかもということを企画するので、前もって日常的な関係を作っていくことが大事だなと思っていました。
でも気安く受け入れてくれて、ありがたかったです。
受け入れてくれるために大切なことは何よりも「掃除」と「草刈り」でした。
地域の方達は荒れた雰囲気の場所が招く負のイメージをとても嫌うので、最低限自分が住む家の庭と道路沿いの草を刈る程度でもとても喜んでくれます。
きれいに保っておかなければ地域のコミュニティが簡単に壊れてしまうということを周囲を見てよく知っているのです。
そこに気付いてからは自分で草刈機のメンテナンスもして、なるべく草を刈るようにしました。
「地域の人は体面を重んじる」という言葉の奥にある意味をようやく感じることができ、結構深いものだなと感じましたね。
また草刈りの後の団子がうまいんです。
祭りも独特で、獅子舞を地域の若い衆で踊ります。獅子の中に5~6人が並ぶ「ムカデ獅子」と呼ばれる大きな獅子で、それと天狗という獅子を退治する役が1人、これを交代で舞っていくので相当な人数が必要です。
全身筋肉痛に襲われながら練習して、祭りの当日は一日中かけて集落を回り、獅子舞を披露することができました。
獅子舞の光景。激しい獅子と天狗の戦いを表現しています
地域の中で行われる祭りなどの出来事もこれまでの人生で経験したことがなくて楽しいものですが、さらに自分自身がやりたいことにもトライできる。ちょうどいいバランスの環境だなと感じています。
伝統を知り、情報を広めることで地方暮らしはもっと楽しくなる
私は氷見に移住して、非常に楽しく充実した日々を送っています。前職の時よりも明らかに忙しくなり、意外とのんびりできないのには面食らいましたが、その分刺激的な事に毎日出会っている感じで、退屈することがないのも意外でした。
これは地方が持っているその場所の伝統に触れる機会が多いことと、それらの伝統を掘り起こし、共有することが容易になっているからではないかと考えています。
地元の方達と移住者との間で様々な交流が起きている地域では、地域の持つ資産がさらに磨かれて多くの人に触れられるようになっています。
それは、なによりこれまで触れられなかったようなものに触れ、その地域にしか無い体験ができるということへの喜びがあって、周りのみんなにも知ってほしい!と純粋に思えるからなんです。
地方創生という言葉が広く浸透した現在でも、まだまだ広く知られていない資源や、移住者を受け入れたいと思っている地方もあるはずです。この記事を読んで、地方で楽しく暮らしてみたい!と思っていただけたら幸いです。