これ1本ですべてわかる、これから設計事務所を経営するために知っておきたい労働時間・残業代の問題・解決方法まとめ

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長時間労働に対する規制が強まり、残業について、法律で定められた基準を守らない会社に対して未払い残業代の請求などで厳しい追求がされることも増えてきました。2016年になってから、安倍内閣も長時間労働の是正や三六協定のあり方の見直しを明言し、本格的な労働環境の改善が行われる見通しとなりました。

こうした状況に先行して、これまでフリーランチ流仕事術では、残業や労働環境について基本的な知っておきたい情報をお伝えしてきました。

今回はこれから設計事務所を経営していこうという方へ、スタッフを雇うにあたり、合法的に残業をしてもらいながら健全な経営を進めていくために必要な情報をまとめていきます。

すでにスタッフを抱えている方、就業規則や三六協定などの労働法に関する知識に不安がある方にもお役に立つと思います。

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そもそも8時間以上の残業は違法です――労働時間と残業代の基礎の基礎

建築業界で働き続けるために知っておきたい、労働時間と残業代の基礎の基礎

最初に、会社が労働者に対し8時間を超えて労働させることは違法だということを知っておきましょう。

基本的に残業は「違法」ですが、届出や制度を活用すれば「合法的に活用することができる」のです。 これから紹介する残業に関わる規定はすべて、違法な残業とみなされないようにするために必要な手続きです。
これらの手続きをきちんと実施していれば、未払い残業代というリスクを負わなくても合法的に人件費を大きく節約することができるのです。

また、労働時間の実態にあった残業代を支払わないといったケースについても、未払い残業代を請求されることも増えてきています。 こちらの記事では、残業時間をどのようにカウントするかという基準と、実際に残業代がどのような計算によって求められるのかということをご紹介しています。

 労働時間・残業代の基準を就業規則で必ず決めておこう

就業規則を10名未満の会社経営者が定めるメリットを解説|建築士のための労働法入門

また残業代の計算に必要な労働時間の算定基準や、残業代の割増賃金についての規定などは就業規則で定めておくことが重要です。

就業規則は常時10人以上を雇用している事業所では作成が義務付けられていますが、小さな事業所でも作成することにはメリットがあります。

労働基準法で定められた残業代を下回る独自の基準を設けている場合は、その差額を支払わなければいけません。このようなトラブルは設計事務所としての信用にも関わってくる問題なので、労働基準法を理解した上で基準を定めておきたいところです。

まずは就業規則に、自社の労働時間に対する基準を定め、きちんと残業代計算の基礎を理解し、人件費が経営を圧迫しないよう考えて効率的な働き方やスタッフの人員配置などを計画しましょう。

スタッフに合法的に残業してもらうためには「三六協定」の提出が必要です

設計事務所がメリットを得られる三六協定の作成方法

また、残業代をきちんと払っていても、スタッフに残業させること自体が違法とみなされる場合があることに注意しましょう。 事業所で1人でも人を雇い、1日8時間、または週40時間以上の労働をさせる場合には「三六協定」と呼ばれる協定を結ぶ必要があります。

これは労働基準法36条で定められた規定で、労働者の代表と、残業をさせる時の基準を話し合って協定を結び、労働基準監督署に提出することを義務付けています。この協定がなければ違法というわけです。

小さな設計事務所の場合は三六協定を労働基準監督署に提出していない場合も多いようですので、労働基準法違反のリスクを防ぐためにも必ず協定を作り、提出しましょう。

三六協定を結ぶ中では、スタッフを働かせる限界の時間として、残業時間の限度が定められています。 基本的には1ヶ月に45時間、1年で360時間という基準を超えて残業させることはできません。繁忙期は例外的に長時間残業させることはできますが、それも恒常的になってはいけないという決まりになっています。

このような残業時間についての基準を理解して、スタッフの健康にも気を配りながら、忙しくてどうしても働いてもらいたい時にはしっかり働いてもらう、バランスの取れた協定をつくることが設計事務所の経営のために重要となります。

三六協定の内容についても、押さえておきたいポイントをご紹介してますのでぜひご覧ください。

設計事務所の経営のための労働基準法まとめ

残業時間が60時間を超えた時に、有給休暇として振り替える方法も

もしも非常に忙しく、残業時間が長くなった場合には人件費の負担が大きくなります。 労働基準法では、一ヶ月の残業時間が60時間を超えた場合には、残業代を計算する際の割増賃金の割合を50%以上にすることという基準が設けられています。

例えば、時給1500円(月160時間働くと考えると月給24万円)のスタッフが月80時間残業した場合の残業代は、

 1500×60×1.25 + 1500×20×1.5 = 157500

157,500円となります。非常に高くなることがわかります。 だからと言って、残業代を支払わないという選択をとることはできません。 この場合、残業代を給与として支払う他に、「60時間を超えた分の残業時間は有給休暇に振り替えることができる」という規定を利用することができます。 60時間を超えた分、20時間に対して、割増賃金の上昇分、25%を有給休暇として繁忙期以外にとってもらうことができるのです。この場合、上に挙げた計算でいうと

 1500×20×0.25 = 7500

7500円分の残業代を抑えて、有給休暇を取ってもらうことができるということです。 ちなみにここで振り替えられる有給休暇は働き手が必ず取ることができる年次有給休暇の日数とは別になりますので、注意が必要です。

有給休暇制度が無い建築設計事務所で休むための現実的方法とメリット

スタッフの健康や精神的なリフレッシュを考えた上でも、スタッフと話し合い、有給休暇を上手に取得してもらうことも考えましょう。

残業代を有給休暇に振り替えることができる規定は、三六協定に設けることで適用できるようになります。設計事務所の働き方の実態を考えて、長時間の残業をしなければいけないという事務所ではスタッフと話し合って基準を定めてみてはいかがでしょうか。

人件費とスタッフの働き方を考えて、設計事務所の経営方針を立てる

労働法の運用は、政権による労働政策のポリシーが大きく反映されることになります。最近では長らく放置されていた、中小企業の社会保険の未加入が狙い撃ちされていて、現在も進行中です。

これまで自民党政権ではホワイトカラーエグゼンプションの導入など、比較的企業側に有利な労働政策の導入を進めてきましたが、ここに来て労働者を守る政策へとシフトしてきています。

長時間労働・残業代の未払い、就業規則や三六協定の運用についても、運用が厳しくなることが見込まれています。特に残業代の未払いは金銭的なインパクトが大きく、事務所運営に大きな影響を与える要因となりますので、先んじて是正しておくことをお勧めします。

建築設計事務所は、仕事の成果がスタッフの働きの質によって左右される業態です。モチベーションの面でも、給料などの待遇の面でも、どうしても避けることはできない残業についてきちんと基準を定め、働いた分に対してはしっかり応えることができることで、事務所としても成長することができると考えます。

これらの残業・労働環境の整備に関する規定をきちんと理解して、充実した職場環境で素晴らしい成果が生まれることを願っています。フリーランチでは、小規模設計事務所の経営課題の解決支援やマーケティングのコンサルティングも行っています。

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