はじめて会社を設立する場合、役員報酬の勘どころをよくわからずに設定してしまうことがあります。
創業1年が経過して、やっぱり役員報酬を見直したいという気持ちになるかもしれません。少なくとも僕はそうなりました。
役員報酬の変更自体は、株主総会や取締役会などで決定しますが、役員報酬が変わると社会保険料も変更になります。
社会保険料は、報酬の平均額となる「標準報酬月額」をベースに算出されます。
標準報酬月額から年金と健康保険料の等級が決まり、毎月の支払額が決定するのです。
役員報酬を変更すると、標準報酬月額の見直しが必要となります。
社会保険料の再算出を行うため、「報酬月額変更届」の届出を出さなくてはいけません。
今回の記事は実体験を交えて、役員報酬の変更に伴う報酬月額変更届の手続きを解説します。
実際にやってみると社会保険労務士さんの手をわずらわせるまでもなく、思いのほか簡単な手続きでした。
役員報酬変更にともなう報酬月額変更届提出時に用意するもの
役員報酬変更にともなう報酬月額変更届を提出時に必要となる書類は、以下の4点でした。
標準フォーマットの報酬月額変更届に加えて、役員報酬が変更となったエビデンスを提出する必要があります。
1,報酬月額変更届(正式名:健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届)
年金事務所のホームページで書式をダウンロードすることができます。
freeeのようなクラウド給与計算ソフトでは、この報酬月額変更届の書式に対応して出力してくれる機能がついているものもあります。
東京都の場合、記入例もダウンロードできますので、記入自体は迷わずできるはずです。
2,役員報酬を変更を決議した株主総会議事録の写し
フォーマットは、顧問の税理士の先生にいただきました。
株主総会関連は、社会保険より上位の概念ですので、より経営に近い税理士さんに聞くのがよいです。長くなるので別途記事を書く予定です。
株主総会の議事録は保管義務がありますので、原本を提出しないように注意しましょう。
3,役員報酬の変更後の金額が記載されている報酬の写し
株主総会で役員報酬の金額を具体的に定めている場合は、株主総会議事録だけで大丈夫です。
こちらも会社の公式の書類ですので、原本を提出しないように注意しましょう。
4,9~12月の給与明細の写し
賃金台帳の写しの代わりに給与明細の写しを提出しました。
変更前と変更後3ヶ月分の計4ヶ月分の給与明細の写しを持参して、受理してもらいました。
懇意にしている社労士さんからは、これに加えて出勤簿が必要であるとアドバイスをいただいたのですが、管轄の年金事務所に問い合わせてみると経営者の場合は出勤簿は不要ですよと言っていただきました。
もしかしたら年金事務所によって対応が異なるのかもしれません。無駄な書類をつくる手間を考えると、電話一本入れて問い合わせてみたほうが安全です。
担当者によって見解が異なることもあるので、担当者の名前を控えておくのも忘れずに。
少なくとも中央区の年金事務所はこの手の問合せに慣れているようで、あれこれ説明しなくてもすぐに教えてくれました。
標準報酬月額届の提出のタイミングは、役員報酬変更4ヶ月目
この変更届は、役員報酬の変更をしてからすぐに提出することはできません。
社会保険料は基準となる前3ヶ月の平均で算定するからです。
私の場合、8月末決算で9月末に株主総会を開催し、10月末支払い分の10月分の役員報酬から、役員報酬の変更を適用することにしていました。
10~12月の3ヶ月間変更となった役員報酬を自分に支払い、1月頭に標準報酬月額届等書類一式を年金事務所に提出しました。
引き落とし額が変更になるのは、2月末からです。
引き落とし金額の変更手続きが反映されるまでに時間を要するので、4ヶ月目の上旬(10日くらい)までには提出するといいそうです。
月額変更届の提出先:東京都中央区の場合は中央年金事務所
社会保険は、年金と健康保険にわかれていますが、多くの自治体では年金事務所に一元化されているようです。
「標準報酬月額届 年金事務所」「標準報酬月額届 提出先」等で検索してみてください。
東京都の特別区(23区)の場合は、各区に年金事務所があり、そちらで標準報酬月額届を受理してもらえます。
提出は郵送でも受け付けていますが、僕の場合は万が一ミスがあって再提出となるのが嫌なので持参しました。
役所関係の届出は、経験上印鑑を持ってその場で訂正印を押せるような準備をしていくと、間違いがあってもその場で訂正して受理してもらうことができます。
参考リンク:東京都内の年金事務所管轄区域一覧
豆知識:提出書類は正本(提出用)と控え(保管用)の2部持っていこう
標準報酬月額届に限らないのですが、税務署や年金事務所などの役所系の申請書類は、正本(提出用)と控え(保管用)の2部持っていくといいです。
控えを持っていくと、受付印を押してもらえるのでエビデンスが手元に残ります。
控の書類はカラーコピーでも白黒コピーでも教えてくれますので、当日気がついてもコンビニでコピーをとるなどして、控えを持っていきましょう。
実際にやってみて
社会保険関係は、会社の規模が大きくなれば社労士さんにお願いするのも手だと思います。
しかし、5人くらいまでの中小企業の場合、発注額も少ないですし、社労士さん探しも大変です。
社労士さんの本領が発揮されるシーンは、就業規則の作成だったり、問題社員への対応策練ることだったりします。
役員と少人数の社員しかいないような会社の場合、社労士さんをはじめとした専門家のパフォーマンスに差が出にくい手続きに関しては自社でやってしまうのがいいと思います。
参考資料、参考リンク
・日本年金機構
東京都の場合は、日本年金機構のページを見ながら、わからないことを管轄の年金事務所に連絡するだけで概要は把握できました。
・改訂 最新 小さな会社の給与計算と社会保険事務がわかる本
起業すると誰でも経験する給与計算と社会保険関連の届出は、1冊レファレンスがあると重宝します。