業界に関係なく、新入社員が覚えた方がいいこと。
それはお金をためることと、お金の使い方を覚えることです。
はじめての給料日の前に、社会人としてお金の使い方を覚えておきましょう。
新社会人・若手社員が知っておきたいお金の話
毎月お金がもらえる会社員ですが、社会に出ると毎月の出費も給料の範囲で賄わなければいけません。
社会人生活をはじめたばかりであれば、スーツや靴などのオフィスで働くための服装を買いそろえる必要がありますし、技術書などを購入して知識を獲得するために投資をしなくてはいけないかもしれません。
給料を手にしたあなたは、意外に自分の思い通りにできる金額が少ないことに気がつくことでしょう。
また、生活費以外にも出費のためはつきません。生活費のやりくりは毎月の給料で賄うことができても、大きな出費はあらかじめ積み立てておく必要があります。
20代だけに限定しても、失業しても死なないための生活防衛資金、学生時代の奨学金の返済、一級建築士をはじめとした資格取得の費用など、大きな支出をともなうイベントが目白押しです。
年収の半年分を生活防衛資金として貯金しよう
社会に出たあなたは、お金に対して大きなリスクをとることが難しい状態にあります。
退職や会社倒産、病気などであなたが働けない状態になっても、なんらかの手段で食いつなぐための備えをしなくてはいけません。
年収の半年分は生活防衛資金として、早い段階でためておきましょう。失業した後にも住民税や年金や健康保険などの社会保険料の支払いは続くからです。
失業すると失業手当が貰えるのですが、退職事由によっては待機期間が発生します。転職先が決まらないまま、やむを得ず退職となった場合、退職日から3~4ヶ月間は貯金を切り崩して生きていく覚悟をしておかなくてはいけません。
入社半年後に返済開始!日本学生支援機構の奨学金の話
キャリアカウンセラーの私の元に寄せられる相談のなかにも、金銭面での相談が多く、とくに奨学金の返済は主要な関心事の1つとなっています。
日本学生支援機構の奨学金を活用している方は増加傾向にありますが、返済の負担感というのは返すときになってみないと実感できないものです。
具体的にどの程度の負担になっているのでしょうか?
奨学金は卒業後半年後から、20年間一定額で返済していくシステムです。金額をシミュレーションしてみましょう。
大学卒業までの4年間毎月8万円の奨学金を借りれば、384万円になります。
月々の返済金額は、利率0.2%で計算すると16,338円、奨学金の上限利率の3.0%ですと21,531円となります。
大学院修了までの6年間毎月8万円の奨学金を借りれば、576万円になります。
月々の返済金額は、利率0.2%で計算すると24,508円、奨学金の上限利率の3.0%ですと32,297円となります。
奨学金の返済が開始されるのは、卒業後半年が経過した10月からです。入社当初から奨学金の返済を見込んだ生活レベルにしておかないと、突然生活が苦しくなることになります。
入社1年目の4~9月は、奨学金返済額分を貯金に回して生活レベルをあげすぎないようにしましょう。
遅くとも3年目には受験!一大イベント、一級建築士の取得費用
以前のコラム「建築学生・新入社員必読!建築業界入社5年の過ごし方」では、入社3年目までに一級建築士の試験を受けることを必須条件にあげています。
一級建築士の試験は年々難しくなり、働きながら独学で合格するのは非常に難しい資格になっています。
日建学院や総合資格などの大手資格学校に通う場合、1年間学科と製図に通うと70~100万、1年目に製図を落ちて2年目に設計製図だけ受験すると50~70万くらいかかります。
資格学校によっては直前講習などのオプションプランがあるため、最初に提示された金額よりも更にお金がかかることになります。
資格学校サイドにも話を聞いてみると、若手設計者でお金に困って一級建築士の準備費用も捻出できないということも多く、受講費のローンの審査が通らないケースも増えてきているということです。
学科試験は努力が報われる試験といえますが、製図試験は努力は前提ではあるものの優秀な人も足をすくわれがちな試験といえます。大きい金額ですので計画的にお金をためて、ローンのお世話にならないようにしましょう。
確実性のない資格をローンで取ろうとすると不合格になったときのファイナンシャル的なダメージが大きく、あなたの資格取得後の目標を阻害する要因になりかねませんので。
お金のリテラシーを高める厳選5冊!
お金の使い方にはコツやルールのようなものがあります。早いうちに身につけておくことで、大きな差が生まれます。
「新入社員必読!失敗しない社会人生活を送るためのたった1つのコツ|建築業界入社1年目の教科書」では、技術書とビジネス書を紹介しましたが、今回はお金のリテラシーを高める本を紹介します。
お金の参考書|入門編
お金に関するリテラシーを高める本は、たくさん並んでいます。
多くの本が著者の得意な分野について重点的に書かれていたり、時代に合わない方法(昔の勝ちパターン)について書かれているものが多いものです。今回のテーマに合わせた入門編にふさわしいホントして、厳選した2冊の本をご紹介します。
〇20代から知っておきたいお金のルール
お金のリテラシーがまったくない!お金のことを考えたことがない!という人にオススメです。
給与明細の見方や家計の予算配分の目安、給料の中で貯金をどのくらいした方がいいのかなど、基本的な事から書かれています。
はじめての1冊としてオススメです。
〇図解 ゼロからわかる!最新 お金の教科書 (お金のきほん)
「20代の」というくくりが外れたお金の教科書です。住宅購入や結婚、老後など、「20代から知っておきたいお金のルール」よりも先を見通した構成になっています。
ただ、6章の生命保険や8章の資産運用については、あまり参考にならないと思いますので、その部分は割り引いて読むとよいでしょう。
お金の参考書|初級編
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2015-11-28)
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貯金の習慣ができた。もしくは、社会人になる以前からある程度貯金がある方は、山崎元さんの本を読むといいでしょう。
〇お金に強くなる! ハンディ版
山崎元さんのお金の本は、ロジカルでわかりやすいです。
入門編の2冊ではカバーできなった資産運用についても真っ当なことが書かれています。
貯金の習慣がついたあとにどのようなことをすればいいのかが書いてありますので、必ず一読しておきましょう。
また、著者は会社員経験も長いので、「サラリーマンの資産運用」という観点から、あくまで稼ぐのは本業というスタンスで書かれています。建築・不動産業界で言えば、アトリエ事務所勤務だったら入社半年後から、デベロッパーや組織設計事務所やゼネコンに入社した人ならすぐに読むとよいでしょう。
大きな会社に入ったら、早く資産運用の習慣をつけましょう。お金が自然に廻っていく感覚がみにつけば、転職や独立などリスクも取りやすくなるはずです
お金の参考書|中~上級編
お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ
幻冬舎
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初級編まで読んだあなたはお金のリテラシーが十分高まったはずです。たとえば「複利運用」の強さを知ったあなたは、具体的にどう運用したらいいのかという疑問にぶつかるはずです。また、投資に対する税制や控除などの制度も複雑で、どれを使いこなせば最終的に利益が残るのかを真剣に考えなくてはいけなくなるはずです。そうした時に実践的な本が欲しいと思うのではないでしょか。
〇お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ
橘玲さんの本は、社会における制度のゆがみを指摘して、なるべく楽な方に行こうというスタンスで書かれています。
資産運用という観点からは、一番重いのは「税金」であると指摘し、合法的にそれを回避する方法について論じています。
また、給料や報酬などのお金の貰い方についても、どういった方法がよいのかも論じています。
同じ金額をもらうにしても、会社員よりもフリーランスやマイクロ法人といった小さいオーナー会社の方が手元にお金が残るといったようなことも指摘しています。小さい会社の経営者やフリーランスの社長・事業主個人のためのお金の教科書という側面もあります。
小さい会社の経費の使い方などウラガワもわかるので、建築業界であればアトリエ事務所で働く人は読んでおくと、小さい会社の「しくみ」的なものがわかることでしょう。
〇ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇 2016
資産運用時の利益に対する課税をいかに最低限にするかに着目して、金融商品の選び方を解説しています。
2014年にNISAという少額投資家(我々のような会社員やフリーランスで株や投資信託を買う人)向けの非課税制度や2016年に改訂される債権や公社債投信の税制変更など、資産運用に関する大きなイベントが起こっています。
利率より税率の方がはるかに高いですから、多くの投資や資産運用の本が陳腐化してしまったのはこの制度変更によるものです。
本書は、貯金がある程度できて、初級編までの本を読んだ上で、「じゃ、いったい何に投資すればいいの?」という段階で読むべき本です。
いい投資先を見つけたのに、間違った金融商品を買ってしまったがために高い課税をされて利益がパーになってしまうなどということをさけるために読んでおきましょう。
おわりに|キャリア形成が上手くいくためにも必要なお金の知識
フリーランチでは、キャリア相談を受けているのですが、20代後半~30代の進路選択に「お金」という要因が大きく絡んでいることを実感しています。
お金がないからいまの事務所をやめられない、お金がないから子どもを持てない、スキルも技術も十分あるのにお金がないから独立できない、仕事はあるのに完了時の入金までの運転資金がないなど、ライフサイクルのいろいろな段階でお金がないことがボトルネックになってしまっています。
ただ、一方で先を見越してお金のことを考えておかなくてはいけないというリテラシーが十分に養成されているかともいえず、お金に対する教育は必要性を強く感じています。
みなさんのオススメの本やノウハウがあれば、ブコメやtwitterなどでご紹介ください。お金との付き合い方を早く身につけて、賢く生き抜きましょう!