1年経ってみて、あらためて考える社会保険料負担
この社会で暮らす中で、必要な時に医療や年金などの社会保障を受けるために支払うのが社会保険料。年金や健康保険料、企業の場合であれば労働保険料などが主なものとして取り上げられます。
この中で、健康保険料については特にフリーランスとして働く方であれば、自分にあった形を選択することによって大きく負担が変わってきます。
会社を退職し、フリーランスになる際の健康保険の選択については以前「退職し、フリーランスになる時に考えたい健康保険の選択肢」にてまとめました。
その際は一般的な「国民健康保険」への加入、前職の健康保険組合の保険内容を引き継ぐことができる「任意継続」、そして職能別の団体に加入することによって受けることができる「職能団体健康保険組合」という3つの方法について詳しく述べさせていただきました。
「任意継続」では国民健康保険にはない、健康保険組合の福利厚生も含めて前職での保険内容をそのまま受けることができることがメリットでしたが、保険料は企業が負担していた分もかかることになるため、純粋に2倍になることがデメリットでした。
また、任意継続の場合は2年まで保険内容を引き継ぐことができるということもお伝えしましたが、今回はフリーランスとして働く中で、実は2年目を迎える年の健康保険選びが大事なのだということをお伝えできればと考えています。
なぜ2年目の選択が大事なのか?
フリーランス1年目はほぼ必ずといっていいほど、収入が減るからです。
基本的に収入源が安定しているわけでもなく、資金のやりくりについても暗中模索という日々が続きます。そんな状況の中で、これまでの企業型の保険内容をそのまま求めるのはよっぽど余裕がなければ難しいでしょう。
もし1年目から成功を収め、ほぼ同じ収入を得ることができたとしても……。
その場合も健康保険の選択を改めた方がお得になるケースが多いようです。
今回はそれぞれの場合について、できるだけ分かりやすくご説明したいと思います。
以下の健康保険料計算では、介護保険料金を含まない39歳までで東京都中央区在住の方……という設定で計算しています。自治体によって保険料率や個人・世帯ごとにかかる保険料が変わってきますので、お住まいの自治体の健康保険に関するサイトをご確認ください。
また、全国の健康保険料を簡単に計算できるサイトから各自治体の健康保険料算定について知ることもできます。
「国民健康保険計算機」というサイトは特に便利だと感じました。
肝心の計算については所得控除についての計算が間違っているようで若干異なった金額が出るのですが、保険料の算定方法は非常に分かりやすくまとめてありますし、健康保険料が安い自治体を探すこともできます。
フリーランス2年目で取るべき選択とは?
1.フリーランス1年目で収入が減ってしまった場合
この場合、独身の方は国民健康保険に変更した方がお得になる場合が多いです。
なぜなら、国民健康保険料は過去1年の所得によって決定されるため、収入が低い状態であればその状況に即した保険料を納めることで任意継続よりも保険料を抑えることができるからです。
例えば前職での給与所得が400万円だった方が、1年目の事業所得が100万円しか上がらなかった場合。(給与所得者の健康保険料を算定するための標準報酬月額は均等割で340,000円とします)
この場合、任意継続であれば月額33,864円となりますが(参考:平成28年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表)、1人世帯で国民健康保険に切り替える場合は月額8,084円と大幅に抑えることができます。
この事から言えるのは、確定申告によって昨年の所得を確定させた段階で、国民健康保険に切り替えるのが有効な手段だと言うことです。
扶養家族がいる場合は、家族の人数によっては保険料金が変わらない任意継続の方がお得になる場合もありますが、夫婦2人世帯の場合で事業所得が100万円、相方のパートでの給与所得が120万円であるとしても、国民健康保険料は月額13,056円となります。
前述の任意継続での場合の月額33,864円と比較すれば半額以下です。
これでも相当お得になるので基本的には国民健康保険に切り替えることをオススメします。
任意継続期間中に国民健康保険に切り替えるためには、任意継続保険料の納付を停止することによって資格を喪失する方法があります。この場合は一時的に無保険となる期間ができるため、早急にお住まいの都道府県にある協会けんぽ支部に資格喪失証明書を請求して、資格喪失証明書を持参して各自治体の窓口で国民健康保険への加入を行うことを強く推奨します。
また、相方の勤務先で社会保険に加入することができる場合は、相方さんの扶養家族となれば保険料が企業と折半になるので、むしろ自分が扶養に入ることを選択した方がよいかもしれません。
この場合も任意継続健康保険の資格を喪失してから勤務先の社会保険に扶養家族として加入する必要があります。
また、パートタイマーが健康保険の被保険者となるためには労働時間・日数の条件があります。選択肢として考えましょう。
2.フリーランス1年目から収入が確保できた場合
この場合は「職能団体健康保険組合」に加入することを検討するべきでしょう。なぜかと言うと、事業所得には給与所得と同様の控除が受けられないため、収入の額面が同じでも健康保険料が増加してしまうからです。
先ほど挙げた給与所得400万円の方が、フリーランス1年目で事業所得400万円を得ることができた場合。この場合、1人世帯であれば保険料は月額28,834円になります。
任意継続の場合の月額33,864円に比べれば安いと言えるかもしれませんが、例えば職能団体健康保険組合の中でもフリーランスのライターやSE、Web関連のクリエイターなどが入ることができる「文芸美術国民健康保険組合」であれば月額16,900円で健康保険に加入することができます。
1人世帯で当面暮らしていく形であれば、きちんと職能団体に加入した上でその団体の健康保険組合に加入するのがお得な選択です。
2人世帯の場合は「文芸美術国民健康保険組合」に加入する場合単純に2人分の保険料として月額33,800円がかかることになるので、2人世帯で事業所得400万円の場合の国民健康保険、月額32,284円よりは若干高くはなります。
しかし、今年もさらに事業所得が増加することが見込まれるのであれば、翌年には切り替えられるよう準備を進めておく必要があります。
また、フリーランスとして働いているのであれば、さらによい環境で働くための設備投資を行うことによって、事業所得を抑えることも可能です。
個人事業主の場合、1件あたり30万円未満の少額減価償却資産を一括して経費に計上することで事業所得を抑えることができます。
これで上記の文芸美術国民健康保険組合の保険料と同程度まで抑えるためには事業所得を約230万円まで抑える必要はありますが、生活費や今後の貯蓄に影響が出ない程度で少しでも投資を行っていくのが社会保険料負担の面から見ても賢い方法です。
コスト意識が高まった今だから見直せる
これまで説明してきたように、フリーランス1年目では試行錯誤の中で収入が減ってしまうことも考えた上で、2年目を迎えるタイミングで自分がどのような事業計画を持ち、社会保険料を負担するかという意識を高めることが重要です。新しい春、退職し1年の節目を迎える方も多い中、より一層社会に対するコストを意識して、自分のこれからをより深く考えてみてはいかがでしょうか。