建築・建設業界の20代で転職される方は決して珍しくありませんが、30代以降の転職とは採用側の評価ポイントは大きく異なります。
建築業界では大学院進学率も高く、実務経験も1つのプロジェクトが長いため、5年近くならないとスキルとして評価されるレベルになりません。建築業界では20代後半でもスキルベースの採用ではなく、実務経験では図れない部分も含めて評価するポテンシャル採用になります。
この記事では、たいていの人にとってはじめての転職活動になる20代の建築業界の転職事情についてお知らせします。
採用目線での20代の転職活動における評価ポイント
ポテンシャル採用における評価ポイントは学歴・資格・所属会社の評価の3点から構成されます。
財閥系のデベロッパーの総合職を勝ち抜けるのは、この3点で抜きんでているのが前提になります。
20代の転職活動ではキャリアが十分に形成されていないので、キャリアが習熟していない部分を業務に直接関係ない部分も含めて評価するのが特徴です
「学歴」:職人タイプなのかマネジャータイプなのか、将来性をみられます
20代での転職活動では、評価できる職歴が十分ではないため、補完的に学歴も評価の対象となっています。
出身大学の学力レベルが高いが、就職活動ではうまくいかず、同級生に比べて小さい会社に就職された方にとっては学歴は有利に働きます。
就職活動での志望理由とセットで評価されることにはなりますが、職務経歴書をしっかり書き上げたり、面接で論理的な受け答えができればその裏付けとして学歴はプラスに作用します。
地頭の良さが買われてポテンシャル採用に至ることはあるでしょう。
「資格」:一級建築士は学科合格でも評価ポイントに
一級建築士を取得していれば高い評価ポイントとなります。日頃の業務をこなしながら、一級建築士を取得することは高い計画力や強い意志がないと実現できないためです。
この年齢であれば、学科試験合格でも評価の対象となることもあります。設計に関係ない仕事の場合は、一級施工管理技士か宅建士のどちらかを持っていれば、評価ポイントになるでしょう。
建築や不動産業界で大規模プロジェクトに係わりたいなら一級建築士は必須ですが、転職活動をした後に新しい仕事を覚えながら、一級建築士の受験勉強をするのは非常にたいへんです。
早めの取得を目指しましょう。一級建築士を取得すると、転職活動での年収提示額が50~100万くらいは変わってくるのです。
「所属会社の評価」:どんな会社で育ってきたかは重要な評価ポイント
会社の大小関係なく、所属している企業の評価を自分にうまく結びつけて評価してもらうかを考えてみてください。
大きい企業においては大事に育ててもらえますから、ビジネスマナーがしっかりしていることや大きな会社ならではの社内調整をしっかりやりきってきたことが評価されるでしょう。
大企業の中でも厳しいことで業界内で有名な会社であれば、そこで2~3年の実務経験だとしても、生き残ってきたことは高い評価につながることもあります。
アトリエ事務所は会社の規模は小さいかもしれませんが、クライアント対応や現場に出る時期が大手企業よりも早まりますので、20代の転職であれば有利に働くことも多いのです。
それなりにハードワークしてきてスキルが身についていれば、転職市場では非常に歓迎されることでしょう。
ちなみに採用側企業では、そこそこ有名な建築家の名前さえ知らなかったり、アトリエ事務所のワークスタイルを知りませんので、職務経歴書や面接でキチンと説明できるようにすることが大切です。
業務を通じた「小さな成功体験」を企業にいかに伝えられるか
せっかく実務経験を積んだのに、社会にでてからも就職活動のような数打ちゃあたる転職活動をするのは嫌だなぁと感じられる方も多いのではないでしょうか。
20代にもライバルに差をつけられるポイントがいくつかありますので、少しだけ解説させていただきます。
ここまでは実務に関する評価ポイントに触れてきませんでしたが、実務経験のアピールポイントについてもお伝えします。
20代の転職では仕事の成果は求められていないが、「小さな成功体験」はアピールできる
30代以降の転職活動と異なり、20代の転職活動では仕事における成果は求められていません。
売上に貢献したとか、顧客を獲得したというようなアピールポイントは20代のアピールとしては盛りすぎです。
若手をアピールしたいのに、課長級の活躍をしているかのような職務経歴書もチラホラ見かけます。
もし本当にそこまで権限を与えられているのならば、なぜ現職にとどまらないのかという別の疑問が生じます。
年齢相応に順当に成長してきているのかを伝える事が大切です。
20代で大切なのは、「小さな成功体験」です。
たとえば、上司から年次面談の時にかけられた評価ポイントを具体的に説明できたり、先輩から「新人時代より〇〇の点で成長したな」とほめられたり、クライアントからプロジェクトが終わったときにかけられた感謝の言葉のような、ちょっとした「ひと言」が大事なのです。
業界経験者の目線で、志望先の企業を分析し、対策をしっかり練りましょう
20代の転職活動は、適当に転職活動をしている方が多いのも特徴です。
履歴書も職務経歴書も淡泊に作成し、応募は数打ちゃあたれ的なスタンスで、応募先に合わせて作り込んでいない人もほとんどです。
例えば財閥系の大手不動産会社だと、転職エージェント経由でも数千人規模の応募が殺到します。
ライバルと同じようなことをしていて、その中から最後の1人として勝ち上がるのは相当に難しいことでしょう。
でも、スキルでフィルタリングされない20代なら応募できてしまうのです。ただし受かることは稀ですが…。
数多く応募すれば、誰かが拾ってくれるというスタンスだと、結果的に転職活動が負担になりますし、転職活動もうまくいきません。
面接を受ける会社を調べ上げることは非常に大切です。就職活動の時は、どの会社のホームページにも同じようなことが書いているように見えていたかもしれません。
業界で働く中で同業他社の評判が耳に入ったり、業界の実務に関する知識も自然と深まっていることでしょう。
同じホームページをみても、社会に出る前と今では違って見えることでしょう。志望先の企業のホームページから、その会社独自のこだわりも見えてくるかもしれません。
そうした情報収集の先に、社会に出て実務経験がある今だからこそ、アピールできるポイントがみつかるはすです。
もし、転職エージェントを活用しているのなら、事前に下調べしてエージェントに質問をぶつけて、必要な情報を引き出してみるのもいいでしょう。
待遇だけでなく、その会社がどういう価値観を持っているのか、どういうスキルを持っている人が評価されるのか、会社の向かう方向性に自分がマッチするのか。
遠慮なく聞いてみてください。エージェントがとりあえず応募してみないとわからないという程度なら、信頼に値しないといえるでしょう。
フォーマットの決まっていない職務経歴書は、企業に対する自分のプレゼンテーションです。
企業のことを十分に理解しておけば、競争相手に大きく差をつけられるのです。
20代の転職活動は、転職活動の熱意自体が「差別化」になる年代
20代の転職活動では、採用側も、履歴書や職務経歴書、面談での受け答えをみながら、その人の将来性を判断しています。
30代からは積んできた経験がすべてですが、職務経歴書に書けるスキルが少なくても評価されるのが20代のメリットともいえます。
「熱意」が評価されるのは若い時代の転職だけです。競争相手よりもちょっと努力するだけで、就職活動では入ることができなかった企業や中途しか入社できない会社に巡り会うこともできるのです。
転職活動において、自分のことと入りたい会社のことをしっかり知っておくことは重要です。
はじめての転職活動は最大のチャンスです。志望先の選択をいい加減にすると、30代で選択枝がなくなってしまうことでしょう。
きちんとした準備をして、自分にあった会社に出会いましょう。