建築業界での仕事探し、求人転職情報の探し方をご存じですか?
一般的には、転職エージェントに問い合わせたり、登録型求人サイトに登録したり、求人広告で募集状況を調べる方法があります。
さらに、建築業界では知人の紹介や志望先企業のHPから応募することもまだまだ多い業界です。
この記事では、建築業界でのあらゆる求人・転職情報の探し方とメリットデメリットをまとめ、これから建築の仕事探しを考えている方に向けてポイントを解説しています。
この記事のポイント
人材紹介会社の転職エージェントを利用する
ある程度の規模の会社を志望する方は、人材紹介会社の転職エージェントを活用すれば、企業の求人情報の紹介や、転職のサポートを受けることができます。
転職エージェントは、紹介先企業から求職者の方が入社された場合に、企業側から報酬を受け取る仕組みになっています。転職エージェントは、原則として成功報酬制で成り立っています。
転職エージェントを活用した際の基本的な流れは下記です。
- 人材紹介会社のウェブサイトなどで登録を行う
- 転職エージェントと面談を行う
- 転職エージェントから求人情報を紹介され、気になる企業に転職エージェント経由で応募する
また、転職エージェントには大きく分けて「総合型」と「業界特化型」の2つのタイプがあります。
転職エージェントを利用するメリット
人材紹介会社の転職エージェントを利用して転職活動をするメリットは下記の通りです。
- フォーマットに沿った応募書類を作成すれば、毎回応募書類を新たに用意する必要が無い
- 応募の手続きを代行してもらえる
- 企業への応募や面接日程調整などもエージェントが代行してくれる
- 求職者本人に代わってエージェントが企業と条件交渉等を行ってくれる
- 総合型の転職エージェントは、他業界の求人も持っているため、異なる業界への転職に有利
- 特化型の転職エージェントは、建築・不動産業界内の転職に有利
転職エージェントを利用するデメリット
人材紹介会社の転職エージェントを利用して転職活動をするデメリットは下記の通りです。
- 総合型の転職エージェントの場合、建築業界や建築実務に精通している人間が極めて少ない
- 求職者を転職させないとエージェントに報酬が発生しないため、実質的に転職が前提のサービスになってしまう
- 人材獲得にお金を支払う習慣がない会社(小さな設計事務所など)は、紹介先としてあがってこない
- エージェントを間に挟んで転職を進めるため、担当の転職エージェントの質に転職の成功が左右される傾向がある
主要な転職エージェント
転職エージェントを総合型と業界特化型の2つに分けて、紹介します。
「総合型」
総合型の転職エージェントは人材紹介会社の中でも大手と言われるところが多く、幅広い業界や職種の求人を扱っています。主なサービス提供者は下記になります。
- リクルートエージェント
リクルート系の人材紹介会社です。 - DODAエージェントサービス
インテリジェンスが運営する人材紹介会社です。
「業界特化型」
専門特化型の転職エージェントは、建築やITエンジニア、医療など、専門性の高い職種や業界の求人を扱っています。建築業界に特化した人材紹介会社としては、このフリーランチ流仕事術を運営するフリーランチがあります。
- フリーランチ
建築や不動産業界の実務経験や一級建築士資格の保有者が相談にのる業界特化型の人材紹介会社です。
転職エージェントについてもっと知りたい方は
- 「建築系大手転職エージェントのメリットデメリットを実体験から比較解説します」
総合型の大手人材紹介会社と業界特化型のフリーランチの両方のサービスを経験された方による比較記事です。 - 「建築業界の大手転職エージェントの仕組みとメリットデメリット」
現役転職エージェントが、転職エージェントの仕組みや実態、転職エージェントを利用しても転職に失敗してしまう理由を解説しています。 - 「大手人材紹介会社でアトリエ事務所から発注者への転職に失敗した体験談」
転職エージェント経由で、発注者への転職に失敗された方の体験談や失敗しやすいポイントをまとめた記事です。
登録型求人サイトを利用する
登録型求人サイトは企業の求人情報が数多く掲載されているウェブサイトです。求人を出したい企業が求人サイトを運営する企業に掲載料を支払う事で、登録型求人サイト上に求人情報が掲載されます。
そして、ある程度大きな企業の求人情報が多いのが特徴です。求職者はあらかじめ個人情報や職務経歴書を登録する事で、希望の企業への応募ができる仕組みになっています。
ちなみに、転職エージェントと登録型求人サイト両方の運営を行なっている会社もあるので、混同しないようにしましょう。
登録型求人サイトを利用するメリット
登録型求人サイトを利用するメリットは下記の通りです。
- 建築業界全般の仕事を網羅的に知ることができる
- 掲載料が高いため、負担できる比較的大きな企業の求人情報が多い
- 採用側企業の人事担当者が登録情報を確認し、スカウトしてくることがある
- 転職エージェントよりもコスト面で安いため、中規模の求人情報が多い
登録型求人サイトを利用するデメリット
登録型求人サイトを利用するデメリットは下記の通りです。
- 求人情報の掲載料が高いため、小規模の設計事務所の求人情報がほとんど得られない
- 自力で求人情報を読み解き、適切な会社を選ぶのは難しい
- 企業への質問や年収交渉など面接段階以降の対策を自力で行う必要がある
参考までに、大手登録型転職サイトの掲載料金と内容について、だいたいの目安を下表にまとめました。最低料金の20万円の場合、写真無しで募集要項くらいしか掲載できません。
4週間の掲載料 | 20万円 | 30万円 | 50万円 | 100万円 |
---|---|---|---|---|
募集要項 | 600文字 | 800文字 | 1200文字 | 1600文字 |
採用メッセージ | 不可 | 300文字 | 600文字 | 900文字 |
社員コメント | 不可 | 1人まで | 2人まで | 3人まで |
入社後のイメージ | 不可 | 不可 | 1人まで | 1人まで |
写真 | 不可 | 3枚まで | 3枚まで | 3枚まで |
主要な登録型求人サイト
- リクナビネクスト
リクルート系の登録型求人サイトです。同じような志向の会員同士で「転職仲間」になるとお互い閲覧履歴などが分かり、参考にし合えるような機能があります。 - 日経キャリアネット
日経HR(日本経済新聞社の子会社)が運営する登録型求人サイトです。日本経済新聞電子版や日本経済新聞日曜日付けに掲載される求人広告と連動した情報提供を売りにしています。 - マイナビ転職
運営会社は2011年にマイナビに社名変更、提供サービスブランドをマイナビに統一し、先に紹介したエージェントサービス等幅広く求人情報を扱っています。その中の登録型求人サイトがマイナビ転職です。 - A-worker(エーワーカー)
建築業界、特に建築設計事務所に特化した登録型求人サイトで、転職だけでなく新卒やアルバイトの求人も同時に扱っています。
建築系の求人広告サイトを利用する
建築メディアや建築系のポータルサイトでは、それぞれの集客力を活かして、そのメディアに親和性の高い求人広告サイトを運営しています。
求人広告サイトは登録型求人サイトと違い、詳細な個人情報や職務経歴書を登録する必要がありません。そのため、求人情報に掲載されている企業への応募方法を見て、自主的に応募するというパターンが基本になります。
また、求人広告サイトは登録型求人サイトに比べて掲載料が安い場合が多く、10万円程度から掲載が可能です。そのため中小規模の設計事務所も利用しており、掲載企業の幅が広いという特徴があります。
一方、求人の内容や待遇、企業の質に関するばらつきも大きくなります。
求人広告サイトを利用するメリット
建築系の求人広告サイトを利用するメリットとして、登録型求人サイトと違う層の求人情報が集まる事が挙げられます。より詳しくご説明すると下記の通りです。
- 中小規模の工務店や設計事務所、アトリエ設計事務所の求人情報もある
- 建築業界やインテリア業界など、分野に特化した求人広告サイトがある
転職エージェントや登録型求人サイトで扱っていない求人情報はこういった求人広告サイトで確認してみましょう。
求人広告サイトを利用するデメリット
建築系の求人広告サイトを利用するデメリットは下記の通りです。
- 求人広告サイトによっては労働基準法違反の内容の求人情報でも掲載してしまっている
- 違法な求人を見分ける知識が無いと思わぬ不利益を被る恐れがある
- ブラック企業がまったくフィルタリングされていない
ハローワークを除く求人広告サイトの求人情報は労働基準法の規制の対象外となっており、掲載内容の判断はサイト運営者の方針で決まってしまいます。
求人広告サイトによっては、違法な求人も多いため、仕事を探す側に労働法の知識が必須となります。
主要な建築系の求人広告サイト
建築系の主要な求人広告サイトをご紹介します。
- アーキテクチャーフォト・ジョブボード
アーキテクチャーフォト・ネットが運営する求人広告サイトです。建築設計事務所を中心にインテリアデザインやランドスケープデザインの事務所、工務店などの求人情報が豊富です。有名アトリエ事務所の求人が数多く集まっているのが特徴です。 - id,job(インテリアデザインジョブ)
商店建築社が運営する求人広告サイトです。インテリアデザイン事務所を中心に建築設計事務所やプロダクトデザイン事務所等の求人情報が集まっています。店舗系の求人情報が多いのが特徴です。
企業の公式サイトから採用情報を探して自己応募する
志望先の求人情報がどの媒体にも掲載されていない場合は、企業の公式ウェブサイトなどを頼りに情報を集めて直接応募するという手段もあります。
自社サイトでしか応募を受けつけない企業にはいくつか理由が考えられますが、大きく2つあげられます。
- 自社のブランド力があり、人材紹介会社や登録サイトを使わなくてもリクルーティングが可能な会社
- 人材の獲得に十分な費用を払うことができない会社
自己応募の場合は、応募書類の作成から、面接や待遇などの交渉も含めて、すべて自力で行わなくてはいけません。
良い条件での転職を勝ち取るためには労働法の知識や自分の市場価値を認識している必要があります。
企業の公式サイトから自己応募するメリット
直接応募するメリットは下記の通りです。
- 応募先企業に合わせて最適な応募書類を用意できる
- 特定の会社に絞って熱心にアタックすると、会ってもらえる可能性もある
企業の公式サイトから自己応募するデメリット
直接応募するデメリットは下記の通りです。
- 履歴書や職務経歴書の作成や、企業へ書類やメールを送った後の到着確認、更には、待遇の交渉まで全て自力で行う必要がある
- 大手企業の場合でも応募に対するレスポンスが遅い場合も多い
- 小規模な建築設計事務所の場合、募集要項に待遇面の情報がない場合が多い
- 現実的に条件面の交渉が難しい事が多い
知人の紹介により企業に転職する場合
知人の紹介で求人情報を知るという場合もあると思います。特に小規模の設計事務所などは知り合いの伝手で就職するパターンがまだまだ多いです。
知人の紹介による転職のメリット
知人の紹介により企業の求人情報を知るメリットは下記の通りです。
- 知人からのお墨付きがあれば、自己応募に比べ面接を有利に進められる可能性が高い
知人の紹介による転職のデメリット
知人の紹介により企業の求人情報を知るデメリットは下記の通りです。
- 紹介による転職になるため、キャリアの整合性がとれずに「次の次」の転職に不利になるケースも多い
- 自己応募以上に労働条件の確認や交渉が難しくなりがち
- 特に、建築業界では上記の点でトラブルが多い
知人からの紹介の場合、職場環境や労働条件、社風をきちんと確認する事が特に重要です。
知人の紹介による転職の実態について知りたい方は
- 「知人の紹介で失敗するアトリエ建築設計事務所への就職転職」
知人の紹介で仕事を決めるとなぜ失敗するのか、失敗しない仕事探しはどうすればよいのかをまとめた記事です。
建築業界専門の派遣会社を利用する
建築の仕事探しではまだまだメリットを認識されていないようですが、派遣会社を活用する方法もあります。建築業界専門の派遣会社では建築専門職の派遣求人情報を知る事ができます。
派遣会社を経由することで、中途採用がなかったり、採用のハードルが高い大手企業に契約社員や正社員になる道もあります。
求人情報を得るまでの流れは人材紹介会社の転職エージェントを利用する場合とほぼ同じで、派遣会社に登録し、担当者と面談する事で求人情報を紹介してもらいます。
派遣会社を利用するメリット
建築業界専門の派遣会社を利用するメリットは下記の通りです。
- 派遣会社に登録してから仕事が決まるまでが早く、20万円以上の給料を確実にもらえる仕事も多い
- 派遣社員を採用できる企業は、建築や不動産業界の大手が多く、中途では採用がないホワイトな企業で働くことができる
- 建築系に実績のある派遣会社を選べば、いわゆるCADオペ以外の設計や施工の実務経験を活かせる求人情報もある
- 派遣社員として一定期間働いたのちに正社員・契約社員への転換が前提となる紹介予定派遣という制度もある
- 中途採用のない大手企業に派遣社員として入社して、契約社員や正社員へのスカウトされることもある
派遣会社を利用するデメリット
建築業界専門の派遣会社を利用するデメリットは下記の通りです。
- 派遣会社自体の選び方を間違えると、派遣会社の中抜きの割合が高く、待遇が悪くなるケースもある
- 派遣会社と派遣に対して前向きな考えを持つ企業を選ぶ目が必要
建築業界に強い主要な派遣会社
建築業界専門の主要な派遣会社をご紹介します。
- アクト・テクニカルサポート
鹿島グループの建築業界専門の派遣会社です。大手ゼネコンや組織設計事務所の求人を多く取り扱っています。 - アット・キャド
CADオペレーター関連の人材派遣を強みにする派遣会社です。意匠以外の求人も多く、高時給なものが多いです。
派遣会社での仕事探しについてもっと知りたい方は
- 「正社員だった私が大手派遣会社で仕事を探し、建築系の派遣会社に勤めました」
建築士としてのキャリアを再考した結果、正社員から派遣社員に鞍替えした筆者が建築業界専門の派遣会社で求人を探した時の体験をまとめた記事です。 - 「建築系大手人材派遣会社で紹介される求人内容と時給や交通費教えます」
ゼネコンや組織設計事務所、デベロッパーの実際の求人内容を元に、建築業界での派遣社員の待遇について紹介した記事です。
キャリア相談でアドバイスを受ける方法もある
フリーランチでは、転職支援や人材紹介サービスに加えて、建築業界での働き方について幅広く相談ができるキャリア相談というサービスを行っています。
このサービスがみなさんに受け入れられている背景には、これまで解説したように、建築の仕事探しはさまざまな方法があり、自身のキャリアの状況や志望先の企業に応じて、最適な仕事探しの方法が異なるためです。
キャリア相談を担当する転職コンサルタントは、建築や不動産業界の実務経験や一級建築士を有しており、建築業界の慣例や転職事情に精通しています。
このフリーランチのキャリア相談は、一般的な転職エージェントの無料相談とは異なり、転職を前提としなくても相談できるサービスです。
そのため、無理に転職を迫られる事はなく(もちろん希望される方には求人を紹介します)、中長期的な視点で意義のある建築キャリアを積んでいくために、例えば「いつどういった会社に転職するのがベストなのか」というような本質的なアドバイスを行っています。
専門性の高い建築業界での転職、求人情報の探し方から作戦を立てよう
建築業界は専門性の高い業界で、かつ、企業の規模も大小様々です。また、媒体によって求人情報の記載内容や密度もまちまちです。
- 転職エージェント:幅広い業界や職種の求人を扱っている「総合型」と、建築など専門性の高い職種や業界の求人を扱っている「業界特化型」の2つがある。
- 登録型求人サイト:企業の求人情報が数多く掲載されており、ある程度大きな企業の求人情報が多い。
- 求人広告サイト:掲載料が安い場合が多く、中小規模の設計事務所など掲載企業の幅が広いが、違法な求人もあるので労働法の知識も必要。
- 自己応募:良い条件での転職を勝ち取るためには労働法の知識や自分の市場価値を認識している必要がある。
- 知人の紹介:職場環境や労働条件、社風を自己応募以上にきちんと確認する事が重要。
- 建築業界専門の派遣会社:派遣会社を経由することで、中途採用がなかったり、採用のハードルが高い大手企業の契約社員や正社員になる道もある。
- フリーランチのキャリア相談:転職を前提としなくても相談できるため、「いつどういった会社に転職するのがベストなのか」を知ることができる。
建築業界のキャリアは長期的な視点で考える事も重要なので、目先の転職だけでなく、長い目で見てプラスになる転職になるように求人情報を探す段階からきちんと作戦を立てて臨みましょう。