一級建築士合格後の転職の選択肢や年収への影響を解説します

建築業界で働いている人の多くは、一級建築士の資格取得を目指します。
一級建築士試験は、資格学校に通うと合格までに70~100万円のお金と、1000~1200時間を要する資格です。

一級建築士に合格すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

この記事では、一級建築士合格のメリットや合格後のキャリアアップについて、一級建築士を持っている転職エージェントの立場からわかりやすくまとめました。
年収アップやキャリア選択の可能性など、具体的な事例を交えて解説しています。

すでに合格された方は今後のキャリア戦略に、これから一級建築士の合格をめざすの方は受験勉強のモチベーションアップにぜひ参考にしてみてください。

一級建築士の取得は年収ベースで50~100万円変わる

苦労して合格した一級建築士ですが、資格取得の労力は報われるものだと感じます。

一級建築士は、「とっても食えない」資格だと言われています。
たしかに、資格を持っているだけで、独立して仕事の依頼がたくさん来る資格かと言われれば、そのようなことはありません。

しかし、転職市場においては、一級建築士の資格の価値は非常に高く、少なくとも年収換算で、50~100万前後の価値があります。

とくに20~30代で一級建築士に合格された方には、転職時の年収増加に大きな影響をあたえるでしょう。

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一級建築士に合格すると転職先の「幅」が広がる

一級建築士の年収面の価値だけでなく、仕事選びに「幅」をもたらします。

求人サイトや転職エージェント経由での転職が主流の組織設計事務所、ゼネコン、PM/CM会社、事業会社などの主要な転職先について、一級建築士の有無が転職にどのように評価されるのかを解説していきます。

組織設計事務所の場合

組織設計事務所の場合は、一級建築士を保有していなくても採用に影響が少ない傾向にあります。
「設計をやっていれば、いつかは一級建築士をとるだろう」という判断のもとに、建築士の資格がなくても選考の対象になりえます。

ただし、大手組織設計事務所のなかには、一級建築士を保有していないと合格するまでは契約社員という会社もあります。

ゼネコン設計部の場合

ゼネコン設計部の場合は、資格保持者である事を組織設計事務所よりも重視する傾向にあります。
準大手以下のゼネコンは中途採用も多いですが、選考時に設計実績よりも有資格者を優遇する傾向があります。

上場している会社がほとんどですので、個別の志望者の例外に対処するよりも、あらかじめ定めた社内規定に従う傾向にあるためです。

PM/CM会社のコンストラクションマネジャーの場合

一級建築士の保有は必須ではありませんが、一級建築士を保有している方の方が優遇される傾向にあります。
30代中盤までは、一級建築士をもっていなくても採用の対象になりえます。

ただし、入社後に一級建築士の取得は推奨されます。
多くのPM/CM会社は設計事務所よりも労働負荷は軽いため、きちんと勉強できるので転職後の取得もしやすい環境にあります。

デベロッパーの建築担当者の場合

第二新卒扱いでの入社枠があるほか、組織設計事務所やゼネコンで経験をつんだ方をターゲットにキャリア採用を行っています。
会社にもよりますが、デベロッパーのキャリア採用の場合は、一級建築士の取得は求められていることが多いです。

大手のデベロッパーは人気のため、キャリア採用では一級建築士に合格していないと、内定は取りにくい傾向にあります。

事業会社の施設担当の場合

製造業や鉄道・運輸系の会社など、自社で生産施設や駅舎や空港など施設を持っている会社の施設担当者です。
プロジェクトマネジャーやコンストラクションマネジャー、ファシリティマネジメントなどの名前で求人が出ていることが多いです。

事業会社の場合は、一級建築士は必須の場合がほとんどです。

仕事として設計業務をするわけではありませんが、建築をやってきた経験を担保するために有資格者であることが求められます。

こうした会社には、社員の大半が本業に従事している技術者や管理部門ばかりで、建築系の技術者はほとんどいません。
数少ない技術者として一級建築士の保有は必須になりやすいです。
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ここまで解説してきたように、実は組織設計事務所よりも、一級建築士を業務で使わない会社のほうが、一級建築士保有を転職の必須条件にする傾向にあります。

これは技術者として「成熟している」というエビデンスを、一級建築士という資格に見出しているためです。

全体の傾向からは、一級建築士を取ると、選択肢の幅が広がり、具体的には建築プラスアルファの仕事に就ける可能性が広がると言えるでしょう。

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一級建築士の勉強のため、会社を退職してしまっている場合

忙しくてどうしても一級建築士の勉強ができず、退職して勉強時間を増やし、合格にかけるという形をとる方もいるでしょう。
私も学科の勉強に出遅れ、合格できるかもう少し足りない状況だったので、退職して受験に臨みました。

合格まではいいのですが、一般的に在職中の転職に比べて、退職してからの転職活動は待遇面で不利になる傾向があります。

とはいえ、忙しい会社にいていつまでも一級建築士が取得できない方がマイナスに作用しますので、退職期間が長引かないように、うまく転職活動を進めていく事をお勧めします。

一級建築士の受験中は、業務負荷の少ない派遣社員で職歴の空白を埋めておくようなことも考えられるでしょう。

一級建築士の勉強をする人のイメージ

学科合格で製図試験を受験中の場合はどのように考えればいいのか?

学科試験は合格できたものの、あまりにも激務で製図試験のための固まりの時間がとれない職場や、炎上プロジェクトに投入されてしまっている状況も考えられます。
このような状況であれば、学科試験合格の時点での転職活動も選択肢にあることを忘れないでください。

一般的に採用サイドの評価として、学科試験が合格できないのは努力不足と評価されますが、製図試験を残しているだけの場合はほぼ合格と判断されている会社も多いように感じます。

一級建築士合格者でないと採用しないところでも、若手で学科試験を通っていれば採用の可能性は残されています。

ただし、入社後に製図を落ち続けたりすると、会社に居場所がなくなるケースもありますので、合格に向けての努力は続けてください。

また、製図試験を控えているからといっても、入社後に一級建築士の勉強に専念させてもらえるわけではありません。

転職後2~3ヶ月は新しい環境に慣れるために負荷もかかりますので、 製図試験の直前の転職は避けましょう。

一級建築士合格後にキャリアアップに成功

元々いた会社ではじっくりと、転職すれば急にアップする

一級建築士を合格した場合の価値は、所属している会社に残るか、転職するかでも大きく変わります。

現在の会社でキャリアを形成していく場合

そこそこ安定している会社にいて、会社の雰囲気が好きで、会社からの評価もされている場合は、一級建築士合格後には現在の会社で十分な経験を積んでいくことをおすすめします。

多くの会社が在籍期間が長い人を優遇する傾向にありますから、会社の中心に入り込んで裁量権を貰って自由に動けるようになることを目指しましょう。

転職してキャリアアップをする場合

小さい会社で給料が高くない会社(30代前半で450万以下が目安)で働いている場合、一級建築士に合格しても、給料があがる見込はありません。
また、一級建築士の市場価値は50~100万円/年あるといっても、合格後にいきなり100万円昇給するわけではなく、価値を見出してもらえる環境に移らなくてはいけません。

こうした会社にいる場合は、職務経歴書を整えて、転職活動で新たな活躍の場を見つけることもいいでしょう。
資格がない時点よりも、年収アップや志望できる選択肢の幅は増えるでしょう。

一級建築士合格者の平均は32歳、合格後はキャリアを見直す時期です

2016年度の一級建築士試験の合格者の平均年齢は、32.5才だそうです。
建築業界の若手は、30代前半までスキルの蓄積と、資格取得に時間とお金を費やすことになります。

この32.5歳というのは、建築業界では技術スタッフから、プロジェクト全体をみてマネジメントできるようになる移り変わりの時期です。

一級建築士合格までは、みんな同じような勉強や経験を積んでいきます。しかし、合格後は、これまで自由に使えなかった時間を自分のキャリアアップに使えるようになります。

所属している会社のなかで全体を見渡せるマネジメント能力を獲得するために自己投資するのもよし、転職して外の世界でより大きなプロジェクトや裁量権を発揮できる会社を探して腕試ししてみるのもよし、と選択できる状況にあります。

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