移住時に考えたい、生活スタイルの異なる5種類の地域特性|地方型フリーランスの働き方(3)

「地方」は一括りでは語れない

都市に否定的だった私が田舎を受け入れて移住するまで|地方型フリーランスの働き方(2)では地方で暮らしたいと思う人のマインドとして「田舎肯定」型「都市否定」型があり、私自身は小さな頃から「都市否定」型だったけれど、情報化が進む中で地方にも風通しがよい場所があると知った事から少し「田舎肯定」型にシフトしてきて、結果として富山県氷見市に移住することになったと言うことを語らせていただきました。

今は氷見市の海沿いにある集落に住んでいるのですが、1年前までは富山市の中心部、JR富山駅から歩いて2分のところに住んでいました。

ひとくちに地方といっても新幹線が止まる駅の中心街と海沿いの小さな集落では暮らし方や人との関わり方が全く違います。

この違いを知り、自分がフリーランスとして働きながら暮らすために見合った場所を探すためにはどうすればよいか今回はお伝えしたいと思います。

そのために、地方都市から更に踏み込んだ田舎までを、5つのグループに分けてみたいと思います。実際に富山市内での生活と、氷見市に移住してから市内の様々な集落を見て、5つに分けられるのではないかと考えました。

この5つを分かりやすく説明するために、「まちの中心←→周辺」「若年層が多い←→高齢層が多い」という2つの軸からなるマトリクスを使って説明いたします。

5つの地域の分類は、以下のようになります。

  1. 地方都市の中心街
  2. 地方都市のベッドタウン
  3. 小さな町の市街地
  4. 地方の一般的な集落
  5. 周辺部の小さな集落

この5つをマトリクスに配置すると、以下のようになります。

地域種別マトリクス

こうやって見ると分かりやすいですが、実は3と5が高齢者が非常に多いことから地域の持つ課題が近かったりします。地域での祭りや催しが維持できなくなってきているので住人の中に孤立する人が増えてきたり、これまで作り上げてきた道路、建物、水などのインフラの維持であったりといった課題があります。

一つの市の中でもコミュニティの単位によってこれまで挙げた5つのどれかに近い性質を持っていて、すぐ近くでも違う課題を抱えていることもよくあります。

こういった小さなコミュニティ単位での人口分布は国勢調査のデータとして公開されていて、地域づくりの研究にも活かされています。

 

kitakyu

ここで取り上げているのは、北九州市の町内単位での高齢者人口比率を表した図です。繁華街と山間集落の両方がある都市では特に差が大きく出ることなどがわかります。

このように町内・集落ごとに人口分布図をつくるなど、行政の方でさまざまな分析をしています。
住んでみたいと思う場所があれば、そこの役所に集落の規模と人口分布を聞いてみてそこをきっかけに話をしてみるのがよいかなと思います。

地域のあり方と暮らし方

さて、ここから今挙げた5つのコミュニティのパターンに合わせてどんな暮らし方が向いているか簡単に紹介したいと思います。

1.地方都市の中心街

私が住んでいた富山市の富山駅周辺が例としていいのではないかと思います。それこそ地方に暮らしているという実感もそこまで抱くことがなく暮らすことができるのではないでしょうか。さまざまな地域をショーケースのように見ることができるのは面白いですが、逆に言えば享楽的な暮らし方で実感できる喜びが少ないとも言えるかもしれません。

また、交通網が発達している事も重要で、車がなくても生活を楽しめる場所であれば独身者や高齢で初めての地方生活という方の入り口として良いと思います。

2.地方都市のベッドタウン

中心市街地から車で2-30分ぐらいの場所に多いです。
子供連れの若い世帯が非常に多く、面白い人に出会えるととても楽しい生活が送れるのではないでしょうか。尖ったことをしている飲食店などの店舗はこのあたりにあるパターンが多いです。自然環境に対しては趣味的に関わる程度ですが、気楽でよいでしょう。車を持っている人、子供がいる世帯の人はここで人の繋がりをつくるべし、です。

ただし、人間関係的にはあまり都市と変わらない悩みが付いてきますので、暮らし方そのものを変えなければあまり地方へ来た意味がないと言えます。

3.小さな町の市街地

氷見に引っ越してきて、古くからの商店街で空き家の調査に携わっていてこの地域は思ったより住みこなすのが大変だと感じています。昔ながらの商店街を中心にした市街地では、街のインフラがあまり更新されないまま住人が高齢化しているので、これまでの街の遺産を活かして自ら商売をする勢いがなければ暮らすのは結構大変です。

住環境としても郊外に比べると少し手狭なので、買い物等で郊外に出るのであれば暮らすのも2のあたりでよいか、となります。その流れから人口減少のスパイラルに陥っている場所も少なくありません。ただ昔から人が集まる場所には何らかの理由があり、また歴史的な積み重ねがあることから人々の思い入れも強いので、真剣に取り組めばまち全体の活性化も見込めます。

リスクは高いが暮らし方を確立した時のリターンも大きい、チャレンジャー向けです。

4.地方の一般的な集落

現在私が住んでいるのもちょうどこの分類にあたります。山あいから海の近くまで、街の周辺部にある集落でたいていは数十人~数百人といった規模のものです。

いきなり暮らし始めるにはハードルが高いですが、暮らしの実感を得たい層には一番オススメ

住居も広く畑を耕したり山に入ったり、海が近ければ釣りや漁師の知り合いになるなど、金銭では得られないもののやり取りが濃い。これらのやり取りはありがたいですが、その集落を支えるための人材としてとても有望視されているのでその期待にうまく応えるか、上手に外していくか、スタンスを定める必要があります。

できないことをやると非常にしんどいのでなるべくその集落の方達が期待していることを汲みとって、何ができるかを丁寧に話していきましょう。

5.周辺部の小さな集落

一般的に「限界集落」というとイメージされるような、自然に飲み込まれそうな集落です。

※ちなみに「限界集落」という言葉の定義は先ほど取り上げた地域・集落ごとの人口構成から、65歳以上の人口が50%を超える集落とされています。つまり町中にあっても「限界集落」と言えるような場所があるというわけです。

話を戻します。その集落に知り合いがいない限り、すぐに入ることは難しいでしょう。人付き合いが少なくなっているのでそれを盛りたてる必要性があり、責任を負うことはないにしてもいきなり重要なプレイヤーとして入ることになります。

ただし集まって住んでいる事も少ないので、日常生活ではあまり気負うことなく自分の好きな事に没頭することは可能です。芸術家がこのような集落に入っているパターンもよくあります。自分の時間を思う存分に取りたい方は、戦略的に狙うべき場所と言えます。

 

地域によって変わってくる人間関係、そしてお金

これらの分類の中での違いが最も明確に現れるのは、コミュニティを維持するための付き合いとお金ですね。

特にお金は場所によって本当にまちまちで、町内会費としてもらうところもあれば今でも「年貢」という呼び方をする場所もあったり……。そのお金をどのように使うかという性質も含めてなかなか住んでみないとわからないですが、できれば住みたい場所の近くの方に(こっそり)聞いてみるのが大事です。

または時間をかけて短期滞在を繰り返すなど、地域に住むためのステップを踏む事ですね。

地方に住むために最初に入ると良い場所としては、
1.地方都市の中心街2.地方都市のベッドタウンが良いでしょう。そこで様々な地域でのイベントや取り組みを体感し、自分が望む活動ができる場所を見極めて入り込むべきではないかと感じます。

実際に家を買うなり借りるなりするための地ならしが大事だったりするので、常に通えるぐらいの位置に住むことがまず必要になります。その点を考慮して、地方ぐらしの第一歩を踏み出すことが必要です。

地方へ移住を決断する時に必要になる「踏み込む勇気」とは|地方型フリーランスの働き方(4)