小さい建築設計事務所から大手企業への転職で知っておきたい事

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中小規模の建築設計事務所アトリエ建築設計事務所で設計のスキルを身につけた方が大手企業への転職した時、建築のスキルは十分でも社内で力を発揮出来ない、そんな話をよく耳にします。

なぜでしょうか。

それは、「設計」をやっていれば、建築業界の大手企業でも小さな会社やアトリエ設計事務所と同じ能力が通用し、同じような働き方が出来る、と多くの方が誤解していることが原因です。

社員が20人未満の小さな会社と違い、建築の部署だけで100名を超えるような大手ゼネコン大手デベロッパー、設計事務所でも大手組織設計事務所では、組織の中で力を発揮するための方法や社風、文化を理解している事がやりがいのある仕事に繋がります。

この記事では、社員数名の小さなアトリエ建築設計事務所と建築業界の大手企業の両方を経験した自分自身の体験と、フリーランチのキャリア相談に寄せられた転職失敗談をもとに、小さい会社と大きい会社の働き方の違いについてご紹介します。

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大きい会社に転職したら意思決定や評価のプロセスがかなり複雑になった

アトリエ設計事務所と比べて、大きな会社では物事の意思決定や周りからの評価のプロセスがかなり複雑になります。理由は単純です。

・大きな会社では、扱う建物の規模、即ち、プロジェクトの規模が大きくなる
・上記により、制約の数や動くお金の額が大きくなる

この2点については、概ねイメージ通りだと思います。
ただし、より重要なのは下記の点です。

・立場の異なる関係者が社内・社外共に増える

この点が小さな設計事務所と大手組織設計やゼネコン、大手デベロッパーでの働き方の違いを生んでいます。

同じ社内でも色々な立場の人がいるのが大手企業

同じ社内でも色々な立場の人がいるのが大手企業

私が働いていたアトリエ設計事務所は10名に満たない規模で、いわゆる意匠設計事務所でした。

所属年数の違いはありますが、社内には「所長」と「スタッフ」というシンプルな2つの立場しかありません。また、関係性がシンプルであるが故に、各々負うべき責任や走るべき方向性は概ね一致していました。

一方、大きい会社ではこの点が一致していない事が多々あります。

大手組織設計事務所であれば構造や設備の部署があり、大手ゼネコンでは施工の部署や営業の部署があり、大手デベロッパーでは用地取得や事業推進、アフターサービスの部署などがあります。

当然、社内でプロジェクトを進めていく上では各部署が連携する訳ですが、部署ごとに背負っているものが想像以上に違いました。

場合によっては部署ごとに利益相反するような場面にも出くわします。

スムーズに話を進めるために事前準備や調整が大事

また、各々の部署が持っている裁量権が異なるため、事業に与えるインパクトが大きな話になると「人」と交渉するのではなく「部署」と交渉する、より大きな話の場合、「会社」と交渉する事になります。

そのため、スムーズに話を進めるためには担当レベルの事前準備や調整が必要になりますし、その後は社内のオフィシャルな承認をとるための段取りが必要になります。

社内においては所長対スタッフ、個人対個人の交渉だけだったアトリエ設計事務所とは大きな違いがあります。

社外関係者がBtoB中心になるのが大手企業

社外との関係でも同じ事が言えます。中小規模の建築設計事務所やアトリエ建築設計事務所では、大きい会社に比べてプロジェクトの規模が小さいです。

特に、アトリエ事務所では戸建て住宅が主戦場の場合が多いでしょうし、集合住宅規模であっても、個人の地主の方がクライアント、というケースが多いと思います。

つまり、BtoCが基本だと思います。その場合、打合せの相手が決裁権を持っているという場合が比較的多いでしょう。

一方、大きい会社でのプロジェクトはBtoBが基本になるため、相手は個人ではなく組織になります。

もちろん、目の前の相手と真摯に向き合う姿勢がビジネスにおいて大切という点は会社の大小や個人法人で変わらないと思います。

ただし、相手の背景が大きく変わると言う点を理解した上で交渉に臨まないと、用意する資料や論点がズレてしまいます。

目の前の担当者も、自分と同じように打合せの結果を社内に持ち帰って承認をとらなくてはいけません。そのため、常に目の前の相手の背後にある組織を念頭において話を進める必要があります。

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小さい設計事務所から大手企業に転職して感じた違い

アトリエ設計事務所と大きな会社両方で働いた私の経験のなかで、両者の働き方や環境について感じた違いをいくつかご紹介します。

クライアント企業の担当者も建築のプロである事が多い

大きなプロジェクトに関わる社外の関係者は、クライアントを含めて企業が中心になります。

そして、大手企業がクライアントの場合、先方の窓口担当者も自分と同様に建築のプロである場合が珍しくありません。

例えば、不動産で事業を行っているような企業や施設を多く保有しているメーカーの担当者は一級建築士を持っていたりしますし、ゼネコンのベテランOBだったりします。

建築に関する共通言語が確立されている分、客観的・論理的なやり取りになる事が多い一方、相手方が自分よりもベテラン技術者の場合、個人のクライアントとは違う意味で説得が大変なことが多いです。

部署を飛び越えた依頼については手続きを踏む必要がある

私が大きな会社に転職した際の失敗談をご紹介します。

私がアトリエ設計事務所で働いていた時は、言ってみれば社内に部署が一つしかない状態と同じです。また、スタッフ一人一人が自分の業務範囲を制限せずに、所内の仕事を自主的に幅広く請負う事が推奨されていました。

しかし、大きな会社ではこの感覚で業務を行うとトラブルに繋がる恐れがあります。

私は大きい会社に移った後、他部署の上司から直接頼まれた業務を快く引き受けてしまったことがあります。しかし、この件で私は所属部署の上司から後に注意を受けました。以下が理由です。

・内容にもよるが、他部署への業務依頼は相手上長の承認をとらないと越権行為になる恐れがある。
・所属部署の承認がないままに、担当個人の行動が部としての公式な行動と誤解される恐れがある。

他部署の上司の頼みを断れという話ではなく、業務の受け方・出し方についてきちんとプロセスを踏むようにと言う話でした。

私としては良かれと思って引き受けたのですが、言われてみればその理由にも納得ができました。

これは、大きな会社に転職して感じた違いの一つです。

異動を通じて経験を積んでいく、大きな会社のキャリア形成

大きな会社の場合、多かれ少なかれ異動があります。場合によってはプロジェクトの途中で異動になり、担当が変わってしまうと言う場合もあります。

それこそ10年スパンの再開発案件だと最初と最後でメンツみんな違う。という事も珍しくないようです。

また、異動という慣習がない小さな会社にいた方にとってはデメリットに感じられるかもしれませんが、大きな会社では必ずしも異動はデメリットとは限りません。

例えば、大きな会社では小さな会社と違って業務の区分が細かくなっています。これはプロジェクト自体の規模が大きい事に拠りますが、例えば、企画・営業と設計で部署が分かれていたり、現場監理の部署が分かれていることがあります。

一方、アトリエ事務所のような小さな設計事務所では、これら全てが繋がっている場合が多いと思います。

そのため、大手企業では若手が一通りのプロセスを経験するには異動をする方が良いのです。

また、大きな会社は社内に色々な業務を行っている部署があります。自分が興味のある部署に異動の希望を出す事で、同じ会社にいながら様々な経験を積んでいる人も多く、その点は小さな会社には無いメリットであると言えます。小さい建築設計事務所から大手企業への転職で知っておきたい事

同じ設計者や建築技術者でも大きな会社に転職するなら意識を変えよう

設計や建築のスキルが十分でも、大手企業に転職する際には働き方について意識を変える必要があります。その点を誤解していると、専門的な能力はあったとしても、社内でそれを十分に発揮出来なくなる恐れがあります。

プロジェクトが大きくなると、立場の異なる関係者が社内・社外共に増えます。そして、そういった相手の立場を理解した上で仕事を進めていく事が大きな会社ではより重要になります。

また、言い換えれば、そういった複雑な条件をまとめてプロジェクトを成功させるのが大きな会社での仕事の魅力であり、小さな会社では得られにくい経験・スキルと言えます。

小さな設計事務所から建築業界の大手への転職時には、こういった点を知っておく事が大切です。

フリーランチのキャリア相談では、小さい会社から大手企業へのステップアップ転職のサポートも行っています。ご検討ください。

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