こんにちは、もちのやです。去年の3月末で会社を退職し、個人事業主として仕事を始めました。今回は地方で暮らすフリーランスとして1年が経った所で、どんな仕事をしてきたか、そしてこれからの計画にいかに繋げていくか、という話をしていきたいと思ってます。改めまして、よろしくお願いします!
現在は主に、氷見市地域おこし協力隊としての移住定住に関わる仕事と、この「フリーランチ流仕事術」を中心にライティングのお仕事をしています。また、アルバイトとして家庭教師をしています。この3つについてそれぞれご紹介していきます。
本題に入る前に、みなさんが一番気になる収入について書いておきましょう。
1.地域おこし協力隊の報償費:214万円
2.ライターとしての収入:15万円
3.家庭教師での収入:29万円
で昨年度の収入は合計258万円でした。少ないと思われるかもしれないですが、後で述べるように地域おこし協力隊の委託費の中に家と車(ガソリン込み)にかかる経費が含まれているので、約100万円ほど実質的に上乗せになっていると考えると、年収約350万円ほどの体感になります。一人暮らしなので、たまに趣味のための遠征をしたり、気になる本を買ったりする余裕がありますね。もちろん、田舎ならではの野菜を持ってきてもらうなどで食費が浮いたりする分もありますが、むしろ付き合いが増えた分会食費が少し増えてしまい、出費としては変わっていないかもしれません。
地域おこし協力隊として移住につなげる
さて、「地域おこし協力隊」という存在はそれなりに知名度が高くなってきているとは主観的に感じていますが、まだまだご存じない方も多いと思いますので簡単にご説明します。
人口減少や集落の維持などの問題を抱える地方自治体が都市の住民を受け入れ最大3年間「地域おこし協力隊」として委嘱し、地域の方達と協働して課題解決を目指した活動をするという総務省が主唱している制度です。2015年(平成27年)度現在で約2600人の隊員が全国の市町村で活動しています。地方自治体がそれぞれの主体性を持って募集することができますので、様々な立場の人間を募集することができるという自由度の高い制度です。氷見市地域おこし協力隊では農業の6次産業化・漁業を活かした都市農村交流・移住定住・婚活などの事業を進めています。
地域おこし協力隊という言葉からよくイメージされるのはフジテレビの連続ドラマ「遅咲きのヒマワリ ~ボクの人生、リニューアル~ 」でも取り上げられていたような(ちなみに私はドラマを見ないので知りませんでしたが…)、中山間地域などの小さな集落に住んで地域の方達の悩みに応えるという形ですが、伝統産業の継承や情報発信などにかかわる隊員も多いです。私の同僚の中には映像を通して地域の魅力を発信する業務を行っている者もいます。
単純に地域情報を発信するだけでなく、地域の価値観を伝えていく動画をつくっています。(撮影・編集:釜石拓真)
地域おこし協力隊は一人あたり年間約400万円の予算で、いわゆる給与としての報償費と、住宅・車にかかる費用、そして自分の活動のために利用できる活動費をまかなうようになっています。
自治体によって地域おこし協力隊の立場は違うのですが、氷見市においてはそれぞれの協力隊員が3年間の任期終了後、氷見を拠点に起業し住み続けることを求めていることからかなり活動の自由度は高くなっています。協力隊の任期中にこれらの仕事をつくる準備ができるように、協力隊活動の他で収入になる事業を行うことも可能です。
私は氷見で旅行者向けのゲストハウスの運営と、建築・不動産事業のプロデュースを行う会社を立ちあげることを目標に活動しています。ひとまず今年度中には自分が暮らしている15DKの邸宅「薮田ハウス」を、氷見での暮らしを体感できる場所として開いていこうと考えています。
少し話を戻して、地域おこし協力隊としての業務を説明していきましょう。
氷見市中心市街地の空き家調査
私は主に移住定住についての業務を担当しています。なぜこの仕事を氷見市が求めているかというと、市内の全域で空き家・空き店舗の増加が問題になってきていること、また氷見市役所が一昨年中心市街地から郊外に移転したことなど郊外のバイパス沿いやお隣の高岡市に近い新興住宅地にまちの重心が移ってきている事で中心市街地の不動産価値が低下してきているため、改めて中心市街地の魅力を掘り起こし活性化させることが求められており、そこで活動できる人材を求めていたという事情があります。
私は前職を退職する時に富山県内も街から離れた所で暮らす手段はないかと考えていて、知人がFacebookでこの地域おこし協力隊の募集をシェアしていたのを見て建築系のキャリアも活かせそうだと考えて応募したというわけです。
そこで昨年はどのような活動をしていたかというと、主には中心市街地の空き家調査事業を行っていました。氷見市の中心市街地(旧町部)には約4000軒の民家・店舗があるのですが、その中で何軒ほどが空き家なのか、そしてその空き家を移住希望者に向けて貸し出せるようにするためにはどのようにすればいいのかと言う事について考え、実際に調査をしていきました。空き家の調査自体は各町内の自治会長さんたちにご協力いただき、実際にまちなかを歩きながらチェックして地図に落とし込んでいくという作業を行っていました。
その結果氷見の中心市街地では約10%の400軒近くが空き家であることが判明し、その中で約80軒が今後移住希望者に向けて貸し出していきたいという希望を持っていることが分かりました。その空き家の中で、昔からの氷見の町家らしい住居を伝統構法を活かし最低限の耐震補強と改修によって住み心地を向上させる改修事業も行うことができました。
このように1年目だった去年は実際に事業を行うというよりもその前段階の調査事業に参画するということが多かったですね。しかし、これらの調査事業の中で古い町の区割りを理解することができたり、まちの中でも子供世代が近隣の大きな都市に近い場所に家を建てて移転するという人口動態事情などが分かったりと、まちの詳しい動向を知ることができたのがなによりの財産だと感じています。
これらの財産を活かし、今年は移住希望者が暮らし、仕事をつくるための場所をどんどん掘り起こして、住み心地のよいまちを作っていくための歩みを進めていきたいと考えています。
地域おこし協力隊に限らず、地方で暮らしていくためにどのような仕事が求められているか、そのための公益性のあるリサーチ事業を移住希望者に委託して地方に住むためのきっかけにするという事はとても良いなと感じました。これをいかに仕組みとして継続していけるかということも、このまちの地域おこし協力隊第1期生としての重要な任務ですね。これも仕事の種として育てていきたいところです。
体感ツアー企画のコーディネーション
また、空き家の調査事業と並行して移住希望者に向けた氷見の暮らし体感ツアーの企画もお手伝いしていました。移住希望者に向けた地方でのツアーは日本全国さまざまな地域で行われていますが、名所や名物の紹介で終わってしまうものではなくできるだけそのまちに暮らしている方達の姿が見え、できれば一緒に語ったり体験したりという事業にしたいという考えから、企画運営を行う会社と様々な集落で活動している人たちの間のコーディネーションを行いました。
夜の懇親会は私が住む家で20人近くの宴会をして、WEBディレクターやイラストレーターなど様々な手に職を持ったひとたちが地方での暮らしを求めていること、また地域の方達がどのような思いで移住希望者を受け入れたいと思っているのかということを伺うことができました。
納屋から始まる”あいうえお”プロジェクト
もう一つ、これは自分の趣味というかライフスタイルにも関わってくる話なのですが、古い民家の自力改修を進めるための団体を立ち上げ、活動をはじめました。
「納屋から始まる”あいうえお”プロジェクト」といい、民家に併設している「納屋」を自由に使えるように自分たちの手で改修してやろう!という動きです。
もともと和歌山県の熊野山中で全国床張り協会が主催する床張りワークショップに参加してから、自分で地方の家を安く入手して改修していきたいなと思っていたのですが、氷見に来て住むことになった家が立派すぎたので、その脇にある納屋をうまく仲間と楽しむ場所にできないかと考えてつくったものです。
昨年度は前の住人が残していた荷物を整理し、コンクリートの土間に氷見産の杉板を利用した床を張りました。そして自前で作れる薪ストーブとして、ドラム缶を利用したロケットストーブをつくるなど、自前で楽しめる改修を進めることができました。今年はこの納屋の中で楽しめるコンテンツ作りを進めていきたいと考えています。
また、商店街の空き店舗を改修した市の施設「まちづくりバンク」を活かしてまちづくりに関わる活動を進めたり、私が住んでいる薮田地区という集落の祭りに参加するなど、身近な所でのコミュニケーションをとることを中心に活動していました。
ライターとして交易の手段を得る
ライターとしての仕事は、前職の頃から建築に関わる内容でのテープ起こしなどの簡単な仕事をしていて、地方に住むことになっても続けようと考えていました。これは単純に遠隔地でもやり取りできれば仕事ができるということと、専門分野で情報を得るための経路が必要だと考えたからです。フリーランチの納見さんとは以前から建築・不動産系のイベント運営で交流があり、様々な働き方から自分に見合った働き方を見つけるカウンセリングをすると言う中で、私も地方で働くということをリアルに提示できればと思って参加することにしました。
地方に暮らしていても都市と交易しなければ満足に生きていくことはできません。最初のうちは東京に出て情報をつかむための手段として、赤字でもつながりを得るために出てきたほうが良いと思いますし、ある程度安定した収入が得られるようになれば地方で暮らすためのハードルは低くなります。インターネットが発達したことでリモートワークも十分できるようになりましたが、遠くに居ることの強みは外で交流しつながりを広げていく中にあると思うので、ライターに限らず外と繋がる仕事を持つことは重要だと感じています。
私自身はライターとしてはまだまだ手も遅いのですが、この「フリーランチ流仕事術」をメディアとして育てる中で、単純な面白さというよりは実際に必要とする人に届くことを考えて書くことを考え、スキルを磨くことができているのがありがたいです。建築に関わる分野で、特に地方を拠点にした働き方とその他の生き方を冷静に比較しながらアウトプットし続けることができればと思っています。
家庭教師の経験から地方での教育について考える
その他で言うと、現在は週に一度家庭教師をしています。これは単純に氷見に来て色んな方と合うようになった中でご縁がありまして…と言う感じなのですが、地方ではやはり教育を補完する役割が都市に比べて少ないですね。その事が子供が地方から離れるきっかけにもなっているという事を改めて感じていて、自分にも出来ることがあれば手伝っていきたいと考えています。収入としても現状の自分にとってはありがたいですけれど、それ以上に意義のあるものにできるのではないか……?と思っているところです。
ここまで、私が昨年度どのような仕事をしてきたかという事をまとめました。まだ自分で持続的に暮らすための基盤ができているわけではないのですが、仕事を作り出すために大切な地域での様々な縁を結ぶことができたと感じています。個人事業主として見知らぬまちに住み始めたと考えると非常に恵まれていますね。地方で働くフリーランス1年目としては、仕事を開拓する前に生活スタイルの違いに戸惑ったりすることも多いでしょうから、ある程度収入や生活の支えになる事業を捕まえることが重要です。そこから自分で事業を生み出せるようになれるよう、今年は進んでいきたいですね。
地方型フリーランスの働き方
【1】「なぜ地方で暮らしたいの?」という問いを大事にしよう|地方型フリーランスの働き方(1)
【2】都市に否定的だった私が田舎を受け入れて移住するまで|地方型フリーランスの働き方(2)
【3】移住時に考えたい、生活スタイルの異なる5種類の地域特性|地方型フリーランスの働き方(3)
【4】地方へ移住を決断する時に必要になる「踏み込む勇気」とは|地方型フリーランスの働き方(4)