都市の開発に関わるデベロッパーは国内に複数ありますが、事業の主体となり都市に大規模な戦略を仕掛けられるデベロッパーとなるとそれほど多くはありません。
そこで、本記事では日本の都市開発に大きな影響を与える財閥系デベロッパーである三井不動産・三菱地所・住友不動産とその各グループについて、その中核であるオフィスビル事業・商業施設事業・住宅事業を中心にご紹介します。尚、本記事では各社のIR情報や公式ホームページ上の公開情報を参考にしており、数値情報は記事内容に合わせて端数等調整しております。
総合的な都市開発や街づくりが得意な三井不動産
三井不動産グループは財閥系デベロッパーの中でも特に規模が大きく、2015年度の営業収益は約1.5兆円もあります。また、中核企業である三井不動産の従業員数は1,332名、グループ全体では17,205名です。
三井不動産ではオフィスビル事業と商業施設開発事業に関しては直接関わっていますが、住宅事業に関してはグループ企業である三井不動産レジデンシャルが中心に行っています。こういった住宅事業のグループ企業への移管は後述する三菱地所についても同様です。また、主要3事業の売上高は下記の通りです。
オフィスビル事業:2,916億円
商業施設事業:2,033億円
住宅事業:3,916億円
上記のように比較的どの事業も満遍なく取組んでいます。
日本橋エリアの開発に長年関わっており、近年では「残しながら、蘇らせながら、創っていく」というコンセプトのもと、日本橋再開発計画に取組んでいます。また、東京の都心部では東京ミッドタウンや赤坂サカス、豊洲地区開発といった大規模な複合再開発が得意で、郊外でも柏の葉エリアの開発を通じて様々な取組みを行っています。
財閥系デベロッパーの中でも特に都市開発や街づくりと言える取組みが多いデベロッパーです。
また、本体の三井不動産の他に建築系技術者の転職先となるグループ企業をご紹介します。
三井不動産レジデンシャル
三井不動産グループの住宅事業を担う中核企業です。パークシティ・パークタワー・パークホームズなどのブランド名でマンション事業を展開しています。
三井不動産アーキテクチュラル・エンジニアリング
三井不動産グループで唯一建築技術者で構成された会社で、デベロッパー側のポジションで技術力を発揮することが出来ます。コンストラクション・マネジメントとエンジニアリング・ソリューションを事業の柱にしています。
丸の内の開発に長年取組んできた三菱地所
三菱地所グループは丸の内という場所をつくってきたデベロッパーです。2015年度の営業収益は約1兆円であり、中核企業である三菱地所の従業員数は737名(2016.08)、グループ全体では8,474名です。
三菱地所も三井不動産と同様に、オフィスビル事業と商業施設開発事業に関しては直接関わっていますが、住宅事業に関してはグループ企業である三菱地所レジデンスが中心に行っています。また、主要3事業の売上高は下記の通りです。
オフィスビル事業:4,223億円
商業施設事業(生活産業不動産事業):866億円
住宅事業:3,452億円
上記のように、オフィスビル事業と住宅事業の割合が大きいという特徴があります。
長年取組んで来た丸の内のエリアの開発・再開発を最大の強みとしており、都心部のビジネスエリアに力を入れてきたデベロッパーです。地方に目を向けても近年では大名古屋ビルヂングなど主要エリアの実績が目立ちます。住宅事業については、2011年の三菱地所レジデンス発足から力を入れています。また、大手組織設計事務所である三菱地所設計をグループに有しています。三菱地所設計は元々は三菱地所内の設計部門であり、現在でも主要プロジェクトの設計に関わっています。そのような背景も手伝って、三菱地所は他のデベロッパーに比べて建築的な取組みやプロジェクトに強みを持っています。
また、建築系技術者の転職先となるグループ企業を下記にご紹介します。
三菱地所設計
三菱地所設計は三菱地所グループの組織設計事務所です。もちろん、大手組織設計事務所として建築業界でも有名な企業です。
メック・デザイン・インターナショナル
インテリアの設計監理や施工、家具調度品の製造・販売を行う企業です。
三菱地所レジデンス
三菱地所グループの住宅事業を担う中核企業で、ザ・パークハウスブランドを中心に、マンション事業を展開しています。技術系部門の規模が比較的大きいマンションデベロッパーです。
販売力の強い住友不動産
住友不動産グループは先に紹介した2社に比べかなり特徴的なデベロッパーです。2015年度の営業収益は約0.85兆円であり、中核企業である住友不動産の従業員数は5,302名、グループ全体では12,116名です。
住友不動産は先に紹介した三井不動産や三菱地所に比べ、従業員数が非常に多いです。一方、新卒採用人数自体は十数名なので、中途採用や契約社員を多数採用していると考えられます。また、主要3事業ぼ売上は下記です。
オフィスビル事業(不動産賃貸事業):3,133億円
商業施設事業:-億円
住宅事業(不動産販売事業):2,747億円
上記のように、オフィスビル事業と住宅事業が中心で、商業施設については積極的な情報発信がありません。オフィスビルに関しては都心を中心にしたベルサールブランドが有名です。都内では六本木エリアで行った和泉ガーデンタワーの再開発に加え、六本木三丁目東地区第一種市街地再開発事業が進行中です。また、住宅事業(不動産販売事業)における販売力は三井不動産グループや三菱地所グループを大きくしのぎ、営業利益率は15%を超えています。これは、他の2社より5%以上高い数値です。
また、住友不動産は本体の従業員数が多いためか、三井不動産、三菱地所に比べ、技術系の事業の多くを本体会社で行っています。
住友不動産建物サービス
マンション管理やビル管理を行うグループ企業です。主に住友不動産株式会社が所有するオフィスビルや分譲マンションの受託管理業務を行っています。
財閥系デベロッパーはそれぞれ三者三様の成り立ちがある
今回は財閥系デベロッパー3社をご紹介しましたが、主要3事業の構成を見ると都市に対してどのような開発を仕掛けているデベロッパーなのか良くわかると思います。
三井不動産は主要3事業を活かした総合的な取組みとして都市に賑わいを生み出しています。
また、三菱地所は丸の内一帯のまちづくりに実績があります。その100年に渡る取組みは特筆すべきものです。
そして、住友不動産は人員構成についても、都市開発事業への取組みについても他の2社に比べて独特と言えます。
フリーランチでは設計や施工出身でデベロッパーを目指したい方、デベロッパーから転職を考えられている方の相談もお受けしています。