大手総合デベロッパーの多くはオフィス、商業施設、住宅の三つを主要な事業領域としていることが多いですが、その方針や事業展開には違いが見られます。
本記事では東急不動産・野村不動産・NTT都市開発の三つの大手総合デベロッパーを採り上げ、その特徴をご紹介します。
尚、本記事では執筆時のIR情報や公式ホームページ上の公開情報を参考にしており、数値情報は記事内容に合わせて端数等調整しております。
また、他の大手デベロッパーについては、「三井不動産・三菱地所・住友不動産、都市開発を行う財閥系デベロッパーを紹介」「森ビル森トラストや東京建物など不動産開発を行う大手デベロッパーを紹介」をご覧下さい。
東急不動産は商業施設の開発と渋谷エリアの開発に実績のあるデベロッパー
東急不動産ホールディングスの中核企業である東急不動産は、名前からわかる通り東急グループの総合デベロッパーです。2015年度のホールディングス全体の営業収益は8,155億円、2016年3月時点での東急不動産本体の従業員数は550名です。
中核企業の東急不動産が設立されたのは1953年で、東京急行電鉄から不動産部門が分離独立する形で設立されました。
東急不動産ホールディングスの事業別売上で大きいのは都市事業です。都市事業はオフィスと商業施設を含んでいます。
都市事業:2,587億円
住宅事業:1,177億円
管理事業:1,452億円
(2015年度)
東急不動産は、大手総合デベロッパーの中でも商業施設開発に実績を持つデベロッパーの一つです。
最近では日建設計が設計を担当した東急プラザ銀座が有名です。そして、こういった商業施設に東急ハンズや東急百貨店など、グループ力を活かした展開が可能な点も東急不動産が商業分野に強みを持つ理由の一つと言えます。
また、建築家の中村拓志が設計を担当した東急プラザ表参道原宿のような話題作の開発も行っています。その他、キュープラザ原宿やあべのキューズモールについても東急不動産が開発した商業施設です。
オフィス開発では南平台プロジェクトが進行中で、クリエイティブワーカー支援施設などを盛り込んだソフト面での取組みも注目されています。また、東急電鉄と共に渋谷駅周辺の再開発事業やにも取組んでおり、広域渋谷圏という構想を掲げ、エリア一帯の面的開発を推進しています。
住宅事業ではブランズシリーズを展開し、この5年間は大手の一角として2000〜2500戸程度の供給数で推移しています。
このように、東急不動産は特色ある商業施設の開発や渋谷エリアの開発に特徴を持つデベロッパーです。
また、東急不動産の本体以外で建築系技術者が活躍できるグループ会社としては下記の企業があります。
東急建設
東急グループのゼネコンで、東急不動産や東急電鉄のプロジェクトに参画する事が多いです。
東急設計コンサルタンツ
東急グループの組織設計事務所・コンサルタント会社です。東急建設と同様に、東急不動産や東急電鉄のプロジェクトに参画する機会が多いです。
東急設計コンサルタンツについては、「【東急】中堅組織設計事務所ってどうなの?特徴や違いを教えます!その3【INA】」の記事も参考にしてみて下さい。
野村不動産はプラウドが有名、また一級建築士に活躍の場が多いデベロッパー
野村不動産ホールディングスは、中核企業の野村不動産を中心に住宅にも力を入れているデベロッパーで、プラウドシリーズが有名です。
2015年度の野村不動産ホールディングス全体の営業収益は5,695億円となります。また、2016年8月時点での野村不動産本体の従業員数は1,812名です。
野村不動産ホールディングスの事業別売上で主要なものは、住宅部門で、全体の57.4%を占めています。
住宅部門:3,345億円
賃貸部門:1,106億円
(2015年度)
住宅部門ではプラウドやオハナシリーズの分譲マンションが有名です。2015年の年間マンション供給戸数は4,556戸であり、先に紹介した東急不動産の約2倍です。
賃貸部門では中規模オフィス事業のPMOシリーズを展開している点に特徴が見られます。住宅のプラウドに限らず、野村不動産は事業のブランド化に強みを持つデベロッパーと言えます。
また、近年では再開発事業・立替事業に力を入れています。一例としては阿佐ヶ谷住宅の建替え事業であるプラウドシティ阿佐ヶ谷や、事業協力者として野村不動産グループが選定されたJR中野駅北側の区役所・サンプラザ地区の市街地再開発事業が挙げられます。
また、野村不動産では2016年8月時点で一級建築士の在籍数が197名となっています。これは社員の10%以上の数字であり、野村不動産の特徴の一つです。また、定期的に中途採用を行っており、一級建築士に活躍の場が多いデベロッパーと言えます。
NTT都市開発は再開発事業だけでなくホテル系プロジェクトの展開も
NTT都市開発はNTTグループのデベロッパーで、オフィス事業に強みを持つデベロッパーです。また、再開発プロジェクトへの参入にも力を入れています。2015年度の営業収益は1,830億円で、2015年度末の従業員数は800名です。
事業別売上で主要なものは、オフィス・商業事業と住宅事業です。
オフィス・商業事業:1,053億円
住宅事業:644億円
(2015年度)
上記のように主力はオフィス・商業事業ですが、累計開発面積割合でいえばオフィスが商業の4倍以上あります。
主要な実績としてはアーバンネットビルシリーズをはじめ、秋葉原UDXや品川シーズンテラス、東京オペラシティーなどがあります。近年の商業事業としては、2014年開業の地域密着型商業施設であるトラッド目白があります。
また、近年ではホテルを絡めた開発プロジェクトの取組みが活発です。京都エリアではそういったプロジェクトが複数進行中で、ホテルと商業の複合開発である京都府の新風館再開発プロジェクト、元・清水小学校のホテルへのコンバージョンなど特徴的な計画が進行中です。
更に、株式会社ひらまつと協同でのスモールラグジュアリーホテルの展開や、沖縄瀬良垣プロジェクトのようなリゾート開発にも取組んでいます。
都心エリアでは再開発プロジェクトに積極的に取組んで来た実績があり、先に紹介した秋葉原UDXや、現在は大手町2丁目に約35万㎡の大手町2丁目地区第一種市街地再開発事業が進行中です。
NTT都市開発は都心の再開発プロジェクトの実績やホテル事業への積極的な展開など新しい取組みに力を入れているデベロッパーと言えます。
大手デベロッパーはそれぞれに個性があるので転職の際は下調べが大事
今回は大手デベロッパー3社をご紹介しましたが、それぞれ事業展開に特徴がることをおわかり頂けたかと思います。
東急不動産は商業施設の開発と渋谷エリアの開発に強みがあります。商業エリアを絡めた開発に実績があるデベロッパーは限られるので、興味のある方も多いと思います。
野村不動産は自社ブランドの分譲マンションに圧倒的強みを持ちますが、近年は再開発計画にも積極的です。また、一級建築士が多く所属すると言う点も特徴と言えます。
NTT都市開発は再開発事業に積極的な一方で、ホテルを軸にしたプロジェクトを地方で展開している点が特徴的です。
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