東京の最低賃金は1013円に!転職時の求人情報や自分の給与明細を確認しよう

労働者の生活を守るために、賃金には法律で定められた最低賃金があります。
この記事では、東京の最低賃金に関する情報をご紹介します。最低賃金のチェックの方法や盲点など、知って得する情報をまとめました。

また、最低賃金は毎年変動しているので、変動に合わせて記事を更新しています。

最低賃金のチェックを怠ると、知らない間に最低賃金を下回っているかもしれません。
これは労働者だけでなく、経営者にとっても問題です。

待遇が最低賃金を下回っていないか、この機会に調べてみませんか?
随時更新:2019年8月5日更新(2016年8月25日公開)

はじめてでもわかる「最低賃金」とは?

最低賃金は、最低賃金法によって定められています。
雇用形態にかかわらず、原則としてすべての労働者に適用されるので、正社員だけでなく、アルバイト、日雇い、外国人に対しても適用されます(ただし、一般の労働者より著しく労働能力の低い労働者の場合は、都道府県労働局長の許可を得ることを条件として、個別に最低賃金の減額が認められています)。

最低賃金はおおきく次のふたつに分類されます。

1.地域別最低賃金
2.産業別最低賃金

1.地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められ、原則としてすべての労働者に適用されます。
2.産業別最低賃金(特定最低賃金)は、特定の産業に従事する労働者に対して、都道府県別に定められた最低賃金で、基本的に地域別最低賃金より高く設定されています。

基本的に適用される最低賃金は地域別最低賃金なので、今回の記事では主に地域別最低賃金についてご紹介します。

最低賃金は年々あがる!東京は2019年10月から、時給1013円になる見こみです

実は、最低賃金は毎年改定されていて、年々上昇しています。

現在の東京都の最低賃金は985円ですが、前年度の最低賃金は958円、7年前は850円でした。これは、月給に換算すると7年間で21,600円も上昇している計算になります。
ここ数年、時給換算で25~27円最低賃金が引き上げられ、2019年10月の改訂では時給1000円を超える可能性が高いと言われています。(過去7年間での平均)

▽東京の最低賃金過去8年間の変動(時給)

2019年 1,013円
2018年 985円
2017年 958円
2016年 932円
2015年 907円
2014年 888円
2013年 869円
2012年 850円

つまり、就職当時は最低賃金を割っていなかった賃金が、数年を経て下回っている可能性もあることになります。
最低賃金の確認を怠ると、このように数年で大きく変動していることがあるので、誰も気づかない間に賃金が最低賃金を下回っていることが起こりうるのです。

これは労働者にとっての問題だけではありません。経営者にとっても、気づいたら社員の待遇が最低賃金を下回っている、ということもあり得るでしょう。
また後述するように、額面上は20万円を超えていても、手当等を差し引くと最低賃金を下回っている可能性もあります。

今の自分の給料や、自社の社員の待遇が最低賃金を割っていないか、この機会に調べてみましょう。

最低賃金以上の待遇で働く人のイメージ

最低賃金は都道府県によって違う

地域別最低賃金は、各都道府県の労働局が定めているため、都道府県によって最低賃金が異なります。

2018年10月に発表された最低賃金の最高額は東京都の1,013円。最低額は鹿児島県の761円です。
その差額は224円、月給換算(160時間換算)では35,840円と、都道府県別で最低賃金に大きな差があります。

この記事では東京の最低賃金について確認していますが、各都道府県の最低賃金については、厚生労働省から一覧が公表されていますので、みなさんの暮らす都道府県の最低賃金を確認してみましょう。

手当を差し引くと最低賃金を下回ることも

それでは、実際に賃金が最低賃金を下回っていないか、チェックしていきましょう。

まずは、最低賃金の対象となる賃金を計算してみます。
最低賃金の対象となる賃金は、実際に支払われる賃金から、次の賃金や手当を差し引いたものになります。

1.臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
2.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
3.所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
4.所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
5.午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
6.精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

ここで注意すべきポイントがあります。
算定賃金の対象となる賃金は、所定労働時間・所定労働日に対して通常支払われる基本的な賃金から、6.精皆勤手当、通勤手当及び家族手当が差し引かれることに注目しましょう。

つまり、額面では最低賃金以上の待遇であっても、実際にはこのような手当を差し引いて計算してみると、最低賃金以下になっている可能性もあるのです。
まずはこのような手当を差し引いて、最低賃金の対象となる正確な賃金を把握しましょう。

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最低賃金を月給に換算して、賃金とくらべてみよう

つづいて、さきほど確認した賃金を、定められた最低賃金とくらべていきます。

最低賃金はアルバイト等にも適応されるので、時給を基準に定められています。
ここでは、わかりやすいように最低賃金を月給に換算して確認してみましょう。

1日8時間、週5日勤務で概算すると、8時間×5日×1ヶ月(4週)=160時間。
つまり、最低月給は最低賃金×160時間で計算できます。
※実際には所定労働時間が160時間を超えることもあるので、あくまで目安として計算しています。

ここでは、東京の最低賃金をもとに確認していきます。
2019年10月に発表された東京の最低賃金は、1,013円です。最低月給は最低賃金×160時間なので、

1,013円×160時間=162,080円

となります。
給与明細に記載されている月給が、この最低賃金よりも少ない場合は、賃金が最低賃金を下回っていることになります。

最低賃金を下回る金額で契約を交わしていたとしても、それは無効になり、会社は最低賃金以上の賃金を支払わなければいけません。

もしも最低賃金未満の賃金しか支払われていない場合は、給与明細など証拠となるものを持って労働基準監督署に申告しましょう。
悪質な場合は、弁護士に相談するなどして、労働基準法にもとづき、最低賃金との差額を支払ってもらうこともできます。

固定残業代(みなし残業代)が含まれる場合は要注意。計算方法とは?

設計事務所では固定残業代(みなし残業代ともよばれます)という形で残業代を前払いするケースもあります。
固定残業代は、あらかじめ定めた残業時間分の残業代を支払う制度です。

たとえば、固定残業の時間を30時間分と設定した場合は、実際の残業が30時間を超えなくても支払いますし、30時間を超えれば1分単位で残業代の支払いが必要です。
固定残業代は一見企業にとって不利な制度ですが、あらかじめ残業代を見込んでおくことで、支払い給与の大きな変動を防いだり、見た目上の給与額が大きくなるという効果を見込んでいます。

固定残業が20時間分の場合

1,013円×160時間+1,013円×20時間×1.25(時間外労働の割増賃金分)
=162,080円+25,325円=187,405円

固定残業が30時間分の場合

1,013円×160時間+1,013円×30時間×1.25(時間外労働の割増賃金分)
=162,080円+37,988円=198,268円

固定残業が45時間分の場合

1,013円×160時間+1,013円×45時間×1.25(時間外労働の割増賃金分)
=162,080円+56,982円=217,261円

固定残業が60時間分の場合

1,013円×160時間+1,013円×60時間×1.25(時間外労働の割増賃金分)
=162,080円+75,975円=238,055円

固定残業代は金額が大きいので、いつのまにか最低賃金を割っていないことを気づかないケースもあります。
計算式を理解した上で自分の時給換算がいくらなのかを確認する習慣をつけましょう。

もしも待遇が最低賃金未満だったら

最低賃金を下回る金額で契約を交わしていたとしても、それは無効になり、会社は最低賃金以上の賃金を支払わなければいけません。

もしも最低賃金未満の賃金しか支払われていない場合は、給与明細など証拠となるものを持って労働基準監督署に申告しましょう。
悪質な場合は、弁護士に相談するなどして、労働基準法にもとづき、最低賃金との差額を支払ってもらうこともできます。

最低賃金未満の賃金しか支払わない場合、会社には50万円以下の罰金が課せられてしまいます。

50万円は軽い罰則に感じると思いますが、これは法違反に対する罰金です。実際は、会社から労働者に対する未払いの賃金が別途発生するため、企業側の負担も大きくなりがちです。

労働者の方も、経営者の方も、自分や社員の待遇が最低賃金を下回っていないか、この機会にぜひチェックしてみてください。

転職やアルバイトの求人情報も要チェック

あまり知られていませんが、求人広告や求人サイトに掲載されている情報は、その情報が法律的に正しいかどうかのチェックはされていません。
求人情報がいつも正しいとは限らないのです。

たとえば求人情報に記載されている待遇が最低賃金を下回っていた場合、そのことに気づけないこともあります。

有名な求人サイトに掲載されているからといって求人情報をすべて信じるのではなく、記載されている待遇と最低賃金を比べて確認してみましょう。

最低賃金以上の待遇で働く人のイメージ

入社前に労働条件通知書で最低賃金を必ず確認しよう

最低賃金以下の待遇であることに気づかずに、入社してから会社と待遇について交渉するのは骨の折れる作業です。

フリーランチでは建築業界の方のキャリアの相談にのっているのですが、法律の規制が甘い求人サイトの掲載情報や面接での口約束で入社を決めてしまい、入社後に「こんなはずではなかった…」と感じる方が非常に多いのです。

フリーランチが転職をサポートする方には、必ず入社前に待遇や労働条件を記載した労働条件通知書を提示して貰うことを推奨しています。

労働条件通知書の提示は労働法によって義務づけられており、賃金についても記載することが定められています。

詳しくは「転職内定から入社までに確認すべき労働条件や必要書類の基本を解説」の記事を参考にして、労働条件通知書に記載されている賃金が最低賃金を割ってないか、確認してみてください。

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