転職内定から入社までに確認すべき労働条件通知書や契約書の基本を解説

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転職・新卒に限らず、自分がどのような労働条件で働く事になるのか、内定から入社までに確認すべき事があります。

労働基準法の第15条では、使用者(企業)が労働者(働き手)に対して重要な労働条件について明示することや、書面で提示する事を義務づけています。

ただし、企業によっては適切な条件の明示がなかったり、面接時と異なる条件に後々気がつくなど、せっかくの就職や転職を不意にしてしまう場合があります。また、小さな会社では労働条件が口頭で済まされる場合もありますが、きちんと書面で貰いましょう。

さらに、労働条件を書面で提示されたとしても、そもそも労働条件の知識が足りなければ、自分が働く条件を正しく理解する事ができません。

そういった不利益を避けるため、確認すべき労働条件の基本的な項目を解説しました。

また、本記事は、2017年1月31日時点の厚生労働省や労働局等、行政の公開情報を参考に執筆しております。
※2017年1月31日追記(2016年5月31日公開)

内定時や入社前に確認するべき労働条件

冒頭でもお伝えした通り、労働基準法の第15条ではいくつかの労働条件について企業が働き手に明示することや、書面で提示する事を義務づけています。

明示すべき労働条件は「必ず明示」しなければならないもの7項目(内6項目は書面にて明示)と、「定めをした場合に明示」しなければならない8項目があります。

もし仮に入社後の労働条件が明示されたものと違う場合は、働き手は労働契約を解除する事ができます。

必ず明示しなければいけない7事項 定めをした場合に明示しなければならない8事項
1_労働契約の期間
2_期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
3_就業の場所及び従事すべき業務
4_労働時間・休日・休暇・交代制
・ 始業及び終業の時刻
・ 所定労働時間を超える労働の有無
・ 休憩時間
・ 休日
・ 休暇
・ 就業時転換に関する事項
5_賃金並びに昇給
・賃金の決定
・計算方法
・支払の方法
・賃金の締切
・支払の時期
6_退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
※上記1〜6については書面で明示すべき事項です
7_昇給に関する事項
8_退職手当に関する事項
・適用される労働者の範囲
・ 退職手当の決定
・ 計算方法
・ 支払方法
・ 支払いの時期
9_臨時の賃金・賞与等並びに最低賃金額に関する事項
10_労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
11_安全・衛生
12_職業訓練
13_災害補償・業務外の傷病扶助
14_表彰、制裁
15_休職

労働条件が明示される一例として、厚生労働省や東京労働局が「労働条件通知書」という書面のフォーマットを作成していますので、下記に東京労働局版を参考として示します。
労働条件通知書の雛形

通知方法は労働条件通知書だけでなく雇用契約書などの場合がある

労働条件が書面で通知される場合、労働条件通知書の場合雇用契約書の場合、そして、労働条件通知書兼雇用契約書という形の場合もあります。

まず基本として、どのパターンであっても上記の「明示すべき労働条件」が反映されている必要があります。

次に、労働契約法第6条によれば、労働契約法それ自体は双方の合意があればそれだけで成立します。その点、労働条件通知書は「通知」であると考えた場合、一方的な意思表示という捉え方もあります。

実際には労働条件が明示された後、入社するつもりがあれば合意の意思表示をする事になるかと思います。

ただ、後のトラブル防止の観点から、契約書の形で双方が押印する事で「双方の合意」をより明確にする雇用契約書の形を取る企業もあるのです。

ポイントは、どんな形であってもきちんと労働条件が明示されているかどうかです。もし雇用契約書のみで、かつ、労働条件の明示に不足があるならば、きちんと明示するよう申し入れましょう。

労働条件通知書通知書をもらうおすすめのタイミング

労働条件通知書は入社する際のどのタイミングで提示してもらうのがよいでしょうか。フリーランチでは、内定の連絡を受けた時に、労働条件通知書の提示をお願いすることを会社にも働き手にもお勧めしています。

提示された労働条件通知書から、求人内容との違いがないか、採用面接で話し合った内容がきちんと反映されているのかを確認しましょう。

そして、会社に勤めながら転職活動を行っている場合には、内定先の企業から労働条件通知書が提示されるまでは現職に退職の意思を伝えないようにしましょう。

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労働時間の原則は一日8時間、週40時間

労働時間は、労働基準法32条によると原則として一日8時間まで・一週間に40時間までと定められています。これが基本の考え方になります。更に、労働時間に関して下記のような制度があります。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、一ヶ月以内の一定期間における総労働時間を定めておき、その範囲内で社員が一日の始業・就業の時刻を自由に決めて働く制度です。社員が自由に出社・退社できる時間帯をフレキシブルタイムといいます。また、全ての社員が勤務していなければならないコアタイムを設けている場合もあります。

みなし労働時間制について

みなし労働時間制とは、実際に働いた時間に関係なく定められた労働時間分働いたとみなす労働時間の算定方法です。大きく分けて「事業場外みなし労働時間制」「裁量労働制」の二つがあります。

なお、みなし労働時間制であっても、後述する「法定時間外の残業・深夜残業・休日労働の割増賃金」は適用されます。

事業場外みなし労働時間制

事業場、つまり、会社の外で働く外勤の営業職等の場合、会社はその社員の実際の勤務時間を把握できません。

そういった時に、原則として所定労働時間労働したとみなす制度です。所定労働時間を超えて労働する必要がある場合は、業務遂行に通常必要な時間、又は労使協定で定めた時間とみなします。

裁量労働制

裁量労働制とは、具体的な指示や手段・時間配分によらず、働き手個人の裁量で業務を遂行し、実際の労働時間と関係なく労使協定の合意で定めた労働時間を働いたとみなす制度です。場所は会社内でも構いません。専門業務型企画業務型の2種類があります。

例えば、建築士不動産鑑定士と言った業務や弁護士、中小企業診断士、システムコンサルタントなどには、省令や告示で定められた専門性の高い業務に限って認められる専門業務型裁量労働制が適用できます。

ただし、建築士の指示によって作図を行うCADオペレーターといった補助的業務や、施工管理業務は含まれません。これらの業務は建築士に関連する法令の業務では無いからです。

同様に、例えば中小企業診断士の資格を持っていても、中小企業診断士以外の業務を日々行なっているような場合も適用できません

裁量労働制では、例えば一日5時間でその日の分の仕事が終わった場合でも8時間分労働したのと同じこととして賃金が計算されます。しかし、逆に1日の労働時間が10時間かかってしまったとしても、その日の分の賃金は8時間分しか発生しません。

また、裁量労働制は労働者と使用者、つまり企業や個人事業主の事務所との間で労使協定の締結が必要です。

裁量労働制について詳しくは、東京労働局の「専門業務型裁量労働制の適正な導入のために」「企画業務型裁量労働制の適正な導入のために」をリンク先よりご覧下さい。

労働条件通知書を確認しましょう

二つの時間外労働、法定時間内の残業と法定時間外の残業について

時間外労働、つまり、残業は大きく分けて2つの種類があります。一つは「法定時間内の残業」、二つ目が「法定時間外の残業」です。

法定時間外の残業をするには36協定の締結が必要

まず、労働時間は上記のように一日8時間・一週間に40時間までが基本です。そして、この一日8時間を超えて社員が働くには、いわゆる36協定(さぶろくきょうてい)と言われる労使協定を、使用者である企業と労働者・社員の代表が締結しなくてはいけません。

つまり、36協定を締結しなければ、「法定時間外の残業」をする事ができません。

詳しくは、厚生労働省が作成しているリーフレット、「時間外労働の限度に関する基準」をご覧下さい。

賃金が割増しされる残業や休日勤務

法定時間外の残業と、原則22時〜5時の深夜の労働(深夜残業)には、それぞれ25%以上の割増賃金を支払わなければいけません。そのため、22時以降の法定時間外の残業の場合、25%+25%=50%の割増賃金となります。

また、法定休日に働いた場合は35%以上の割増しになります。
割増し賃金時間の図
詳しくは、東京労働局が作成しているパンフレット「労働基準法<割増賃金編>」をご覧下さい。

休憩は労働時間が8時間を超える又は6時間超えるかで基準が異なる

休憩は、労働基準法第34条できちんと基準が定められています。

・労働時間が8時間を超える場合、少なくとも60分の休憩
・労働時間が6時間を超える場合、少なくとも45分の休憩

が与えられます。また、休憩時間は労働時間の途中に与えられることが原則です。具体的にいつ休憩時間を置かなくてはならない決まりはありませんが、例えば、終業前の最後に60分の休憩時間をとる場合、始業から8時間を超えて働き続ける事になり、好ましくありません。

休日は週1日、又は、4週で4日以上という定めがある

毎週少なくとも1日、4週間のうち4日の休日が労働基準法第35条で定める最低限の基準です。また、4週間で4日の休日の場合は、起算日を就業規則等で決めておかなく必要があります。

労働条件の休憩と休日について

最低賃金は全ての労働者が対象、ボーナスや残業代は含まれない

最低賃金は、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を決めたもので、地域ごとに設定された「地域別最低賃金」と、特定の業種に設定された「特定(産業別)最低賃金」の二つがあります。

地域によって地域別最低賃金の方が高ければそちらの金額が適用されます。

また、最低賃金にはボーナスや残業代は含まれません。最低賃金を計算する時にはこれらを除外する点に注意しましょう。

例えば、平成28年10月1日発行の東京都の地域別最低賃金は時給932円です。この金額はパートやアルバイト等を含む全ての労働者に適用されます。

最低賃金について、詳しくは「東京の最低賃金は932円、転職時の求人情報や給与明細を確認しよう」をご覧ください。

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解雇の際は事前の予告か解雇予告手当が必要です

ルールを無視した一方的な解雇により不利益を被るケースも存在します。そういった状況を避けるためにも、解雇について基本的な知識を知っておきましょう。

まず、解雇とは使用者、つまり会社から一方的に労働契約を終了させる事を言います。ただし、むやみやたらに解雇できるわけではありません。不当な解雇を避けるために、法令上の制限があります。

具体的な制限内容については、東京労働局「労働基準法のあらまし」28ページが参考になります。

また、解雇する場合は、労働基準法第20条により下記のような定めがあります。

・30日以上前に解雇を予告する
・30日以上分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う。(予告無し即時解雇の場合)

30日以上の予告ができないときは、下図のように足りない日数分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。

解雇予告

平均賃金

「平均賃金=直前3ヶ月の賃金総額(支給総額)/3ヶ月間の総日数(暦日数)」

平均賃金は解雇予告手当の他、年次有給休暇の賃金や休業手当等の算定に用いられます。

年次有給休暇は6ヶ月勤務で10日発生する権利です

有給休暇6ヶ月の継続的に勤務し、労働日の8割以上出勤した労働者に対して10日間必ず与えられる権利で、労働基準法第39条に定められています。

これは、パート・アルバイトについても同様です。

また、有給休暇が入社6ヶ月後に発生した後は、1年ごとに発生します。また、発生日からそれぞれ2年間有効なので、その期間であれば繰り越しされます。

また、有給休暇については「有給休暇が無い建築設計事務所で制度を使う現実的方法とメリット」もご覧下さい。

労働基準法が適用されない会社は無いので条件をしっかり確認しよう

労働条件を把握するために必要な基本的な情報は以上になります。

労働条件を提示するべき企業側でも、スタートアップの小さな会社や、スタッフが少数の小規模な建築設計事務所などでは労働基準法について把握しきれていない事があります。

しかし、労働基準法が適用されない会社はありません。労働条件通知書を確認することで、適切な条件で就職・転職できるようになりますし、後のトラブル予防になります。是非習慣として身につけましょう。

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