建築業界の会社員や独立設計者の老後の年金を働き方の違いにより算定

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国民年金と厚生年金に加入することで老後にもらえる年金額について、建築業界で働く会社員独立して建築設計事務所を経営する個人事業主を想定してシミュレーションしました。

国民年金と厚生年金では保険料の考え方や金額も大きく変わりますが、支払った保険料の元を取るまでの年数は共に10年ほどでした。しかし、将来もらえる年金額は月額で10万円も差が出ます。

建築業界の小さな会社や個人の建築設計事務所では厚生年金に加入していない場合も多く、個人で独立した建築設計者は国民年金のみに加入しているのが一般的だと思います。

建築業界で国民年金のみに加入している方は、まずは厚生年金との違いを把握し、老後に向けた対策を考えましょう。

なお、本記事では執筆時である2017年6月の行政等による公開情報を参考にしております。建築の働き方の悩み、プロに相談しませんか?

厚生労働省のデータから知る国民年金と厚生年金で貰える年金の金額の違い

厚生労働省がまとめている「厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、H26年の国民年金受給者は平均5.7万/月、厚生年金受給者は平均15.4万円/月の年金(老齢年金)を受け取っています。

実際は加入期間の違いなどで個人差はありますが、「月に10万円近く、もらえる年金に差が出るかもしれない」という点は頭に入れておいて良いでしょう。

なお、国民年金と厚生年金の基本については下記記事が参考になります。

「建築業界で働く人に向けて国民年金と厚生年金の基本や違いを解説します」
国民年金と厚生年金の基本と違いについて建築業界で働く方に向けてまとめた記事です。

シミュレーションから知る建築設計者が将来もらえる年金の金額

この記事では、大学院卒業後に35年間、それぞれ建築業界で働くことになったAさんとBさんを想定して、もらえる年金を簡単にシミュレーションしてみました。

その結果、35年間国民年金のみ加入のAさんと、35年間厚生年金に加入したBさんとでは、もらえる年金に月額7.7万円の差が想定されることがわかりました。

Aさん_アトリエから独立 Bさん_組織設計で定年まで
年金の種類 国民年金(35年間加入) 厚生年金(35年間加入)
将来もらえる年金の概算年額 68万円 180万円
将来もらえる年金の概算月額 5.7万円 15万円
支払った年金保険料概算総額 690万円 1890万円
元が取れる年数 約10年 約10年

国民年金のみ35年間加入したAさんの場合

2017年の建築の大学院卒で社会保険未加入の小さな設計事務所に入所し、31歳で独立し建築設計事務所を開設した場合を想定しました。

・年金は一貫して国民年金のみ加入
・加入期間は建築の大学院卒業後から35年間
・学生納付特例制度を活用し、追納は行なっていない
・国民年金の保険料は月額16,490円(H29年水準)

国民年金を納める期間は40年=480月が最大です。仮に40年間欠かさず保険料を納めた場合、H29年の水準では年間で779,300円(満額)の年金がもらえます。

Aさんの加入期間は合計で35年=420月なので、もらえる年金の想定額と生涯で支払う国民年金の保険料は下記の通りです。

算定略式 満額の年金支給額×(国民年金保険料を支払った月数等/40年)
Aさんが貰える老齢基礎年金 779,300円×(420月/480月)≒年間68万円
支払った保険料概算 16,490円×420月≒690万円

Aさんは65歳から年間68万円、月5.7万円程度の老齢年金がもらえます。10年程度で元が取れる計算になります。

厚生年金に35年間加入したBさんの場合

2017年の建築の大学院卒で組織設計事務所に入社し、60歳まで35年勤めた想定です。

・年金は一貫して厚生年金に加入
・加入期間は建築の大学院卒業後から35年間
・学生納付特例制度を活用し、追納は行なっていない
・厚生年金保険料は会社との折半なので、本人負担の保険料率は数字を丸めて9%とする

厚生年金の正確な計算はかなり複雑なので、ここでは簡略化しています。

平均年収を600万と想定し、月給50万円の給料を35年間もらっていたという想定です。

算定略式 平均標準報酬額(報酬+賞与を月単位で平均したもの)×給付乗率(生年月日etcで変わる)×厚生年金を支払った月数
Bさんが貰える老齢厚生年金 50万円×(5.481/1,000)×420月≒年間115万円
Bさんが貰える老齢基礎年金 779,300円×(420月/480月)≒年間68万円(Aさんと同じ)
支払った保険料概算 50万円×9%×420月≒1890万円

・平均標準報酬額:報酬(定期的に貰える給料や手当)+賞与を月単位で平均したもの
・給付乗率:生年月日etcで変わる。今回の条件では5.481/1,000

厚生年金加入者は、国民年金にも加入していることになるので、BさんはAさんと同様に年間68万円程度の老齢基礎年金がもらえます。

結果、Bさんが貰える老齢年金の合計は、老齢厚生年金+老齢基礎年金となるため、おおよそ年間で180万円、月に直すとだいたい月15万円の老齢年金がもらえます。

Aさんと同様に、10年程度で元が取れる計算になります。

年金制度を理解してよい老後を過ごすイメージ

厚生年金は手厚いという事実は、独立した設計者や社会保険に未加入な事務所の設計者も認識しておこう

厚生年金は国民年金に比べて支払う保険料も大きくなりますが、その分将来の老齢年金の支給額も大きいです。また、元を取る年数に大きな差はありません。

また、給料の安い若手のうちは国民年金と厚生年金の負担額の差も少ないです。そのため、小規模の建築設計事務所に就職するにしても社会保険完備の事務所を選ぶというような方法も考えられます。

退職後の収入に毎月10万円の差が出るので、フリーランスや厚生年金未加入の会社、設計事務所で働いている方は、後の収入を補う方法を検討しておきましょう。

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