公共事業や庁舎における発注者支援やCM業務の導入事例を紹介します

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2014年、公共工事の品質確保の促進に関する法律、略して公共工事品確法が改正されました。この改正により、公共工事の発注関係事務について外部能力を活用することができることになりました。簡単に言うと、従来の公共工事に比べ、外注を含む多様な発注方式が可能になったのです。

結果として、公共工事においてコンストラクション・マネジメント(CM)方式のプロジェクトが増加しています。この記事では、2017年10月現在の公共事業や庁舎における発注者支援業務やCM業務などの事例や実績をまとめました。

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公共工事品確法とは

公共工事の品質確保の促進に関する法律、略して公共工事品確法は、発注者となる国や地方公共団体および受注者の責務を明確にし、かつ受注者の審査(入札)を義務付けることで、公共工事の品質確保促進をおこなうために、2005年に制定された法律です。

価格競争を原則におこなわれる公共工事の入札では、談合や低価格入札、ダンピングによって、公共工事の品質が低下してしまうことが起きていたため、このような法律が制定されました。

その後、公共工事品確法は、建設産業における人材不足などを背景に、公共工事の品質確保のための人材育成や人材確保、適正な施工を目的に、多様な入札や契約の方法を定めるために、2014年に改正されました。

より単純に「品確法」と呼ばれることもありますが、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」および「住宅の品質確保の促進等に関する法律」も同様に略されるため、注意が必要です。

PM/CM業務に就いている女性

CM業務・発注者支援業務の公共事業・庁舎プロポーザル紹介

公共工事品確法の改正によって多様な発注方式が可能になり、結果としてコンストラクション・マネジメント方式の公共プロジェクトが増加しました。ここからは、CM業務として進行している公共事業・各市庁舎のプロジェクトを紹介していきます。それぞれのプロジェクトのプロポーザル結果(発注者支援)と、参画した会社の体制についてもまとめました。

プロジェクト 発注者 CM会社 CM選定日 竣工予定
町田市庁舎新築工事CM業務 東京都町田市 日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社 2008年6月 2012年完成
市原市防災庁舎建設事業管理支援業務 千葉県市原市 明豊ファシリティワークス株式会社 2014年5月 2017年12月完成予定
横浜市新市庁舎開庁準備支援業務 神奈川県横浜市 山下PMC/山下設計共同企業体 2014年7月 2021年完成予定
宮古市中心市街地拠点施設建設管理支援業務委託 岩手県宮古市 株式会社三菱地所設計 2015年7月 2018年7月完成予定、現在施工中
清瀬市新庁舎建設CM業務 東京都清瀬市 株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ 2016年2月 2020年完成予定
府中市新庁舎建設発注者技術支援業務 東京都府中市 株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ 2016年4月 2021年完成予定
世田谷区本庁舎等設計業者選定準備支援業務 東京都世田谷区 明豊ファシリティワークス株式会社 2016年11月 2026年完成予定
善通寺市新庁舎建設CM業務 香川県善通寺市 日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社 2017年5月 2020年完成予定
米沢市庁舎建替事業管理支援業務 山形県米沢市 明豊ファシリティワークス株式会社 2017年7月 2020年までの建て替えを目指す、設計者未選定
宇土市新庁舎建設基本計画策定及び基本・実施設計者選定支援業務 熊本県宇土市 明豊ファシリティワークス株式会社 2017年7月 2021年完成予定
米原市統合庁舎整備事業発注者支援業務 滋賀県米原市 明豊ファシリティワークス株式会社 2017年9月 2020年完成予定
広島県神石高原町新庁舎建設基本設計CM業務 広島県神石高原町 阪急コンストラクション・マネジメント (プロポーザル未実施?) 2019年完成予定

以下、特徴的なプロジェクトについて詳細に見ていきましょう。

町田市庁舎

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
東京都町田市 日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社 株式会社槇総合計画事務所 鹿島建設株式会社 41,510 ㎡

町田市庁舎は、日本国内ではじめて本格的にCM業務を導入した公共事業です。CM業務は日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社が受託しました。

設計性能のレビューやコストマネジメントをはじめ、維持管理やオフィスレイアウト、移転・引っ越しに関する検討、発注方式の検討まで、さまざまな業務をCMとしておこなわれました。

設計は槇文彦率いる株式会社槇総合計画事務所。施工は鹿島建設株式会社。アトリエ設計事務所や大手建設会社とのあいだの調整や、日建設計コンストラクション・マネジメントおよび日建設計マネジメントソリューションズのグループ会社による連帯体制など、プロジェクトの状況に合わせたマネジメントが評価され、CM選奨2013を受賞しています。

市原市防災庁舎

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
千葉県市原市 明豊ファシリティワークス株式会社 株式会社昭和設計(基本設計) 大成・進和特定建設工事共同企業体(実施設計・施工一括) 約 8,490 ㎡

市原市では、災害発生時の対応や、被災後の市民生活支援や復興活動拠点の充実などを目的に、防災機能と市民サービス機能を併せ持つ「防災庁舎」の建設計画が整備されました。これを受け、建設における発注者支援業務のプロポーザルがおこなわれ、明豊ファシリティワークス株式会社が選定されました。

このプロジェクトは、当初からCM業務としてVE(バリューエンジニアリング)の誘導などが明記されるなど、高度なマネジメント業務が要求されていました。

横浜市新市庁舎

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
神奈川県横浜市 山下PMC/山下設計共同企業体 竹中・西松建設共同企業体 設計・施工一括 約 146,800 ㎡

市庁舎の老朽化や都市部の人口増加に伴う業務の拡大、分散した市庁舎機能の集約などを背景に、横浜市では新庁舎の建設が計画され、CM業務に山下PMC/山下設計共同企業体がプロポーザルで選定されました。

横浜市新市庁舎は、みなとみらい線に直結する、都市部に建つ市庁舎ということもあり、飲食店やドラッグストア、銀行などが入る大規模な商業施設も導入されることも特徴のひとつです。

また、設計と施工を一括発注するデザインビルド(DB)方式が採用されていて、より戦略的なコンストラクション・マネジメントが要求される案件です。

宮古市中心市街地拠点施設

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
岩手県宮古市 株式会社三菱地所設計 株式会社久米設計 鹿島・日本国土・久米設計特定共同企業体 14,350 ㎡ (防災・地域活力創出拠点施設、市本庁舎、保健センターの合計)

東日本大震災で被害を受けた岩手県宮古市の中心市街地拠点施設のプロジェクトです。震災からの復興と、これからの地域防災拠点施設としても位置づけられ、防災・地域活力創出拠点施設、市本庁舎、保健センターの複合施設からなります。

このプロジェクトのCM業務を担当するのは、株式会社三菱地所設計。このCM業務には、デザインビルド方式かCMアットリスク方式(コンストラクション・マネジャーが最高限度額や工期を保証する条項などを決定し、工事金額等のリスクを取る方式)のふたつの方式から、比較検討し事業手法を決定する業務も含まれていました。

府中市新庁舎

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
東京都府中市 株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ 千葉学建築計画事務所・久米設計設計共同体 未定 約 33,500 ㎡

老朽化や耐震性の問題から、全庁舎の建て替えが決まった府中市の新庁舎では、発注者支援業務を委託する事業者のプロポーザルが実施され、株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツが選定されました。

同様にプロポーザルがおこなわれ、千葉学建築計画事務所・久米設計 設計共同体が選定された設計業務では、市民に開かれた庁舎という方針を実現するため、新庁舎建設に関するシンポジウムや市民モニタリング、展示ブースの設置など、さまざまな事業がおこなわれました。

新庁舎は、「おもや」と「はなれ」と呼ばれる2棟構成で設計されているため、工事では既存庁舎を残したまままず「おもや」を建設し、「おもや」の運用開始後、既存庁舎を解体、「はなれ」の建設が開始されます。

これらの複雑な工程のマネジメントをCM業務では担当する必要があります。

米原市統合庁舎

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
滋賀県米原市 明豊ファシリティワークス株式会社 株式会社山下設計 未定(実施設計・施工一括) 約 10,000 ㎡

米原市の現市庁舎は4つの庁舎に分散していて、それぞれの庁舎の老朽化や情報管理体制への不安から、統合庁舎の建設プロジェクトが発足しました。

このプロジェクトのCM業務プロポーザルで選定されたのは、明豊ファシリティワークス株式会社。基本設計者選定前からのCM業務となり、VEも含めさまざまな状況におけるマネジメントが要求されました。さらに、オフィスレイアウトを担当する事業者を決めるプロポーザルもおこなわれ、岡村製作所が選定されました。

加えて、新庁舎の建設予定地は米原駅東口に隣接した土地になりましたが、新庁舎の基本構想が策定したあと、民間事業者からの提案として「(仮称)米原駅東口周辺まちづくりプロジェクト」が発足。周辺の県有地と市有地を一体開発し、民間主導で市民のための拠点づくりが目指されました。このまちづくりプロジェクトの構想設計は、隈研吾建築都市設計事務所が担当。新庁舎の建設にあたってもこのプロジェクトとの一体的な整備が必要になるため、CM業務にはよりいっそう高度なマネジメント能力が求められるものになるでしょう。

広島県上石高原町新庁舎

発注者 CM会社 設計事務所 施工会社 延床面積
広島県神石高原町 阪急コンストラクション・マネジメント 選定中 未定 約 4,000 ㎡

広島県上石高原町の新庁舎建設にあたっては、CM業務を阪急コンストラクション・マネジメントが委託されています。林業への貢献も含め、可能な限り町内産の製材を活用することが求められています。

この新庁舎建設地のとなりには、町立病院が移転してくる予定になっていますが、この町立病院のCM業務を委託されているのも、同じく阪急コンストラクション・マネジメントです。隣接するふたつのプロジェクトのCM業務を並行しておこなうことになるので、両プロジェクトの景観計画などを総合的に検討することも求められています。

公共事業のCM業務はこれからどんどん増える

2014年に改正された公共工事品確法ですが、ここまで見てきたように、すでにたくさんの公共事業におけるCM業務が生まれています。東日本大震災や熊本地震が記憶に新しいですが、そうした事態を踏まえ、老朽化や耐震性能不足から全国の公共施設で建て替え事業の必要性が叫ばれています。このような状況を背景に、これから公共事業のCM業務はどんどん増える傾向にあるでしょう。

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