日本には多くの家具メーカーが存在しますが、オフィス家具を専門に扱うメーカーといえば、コクヨ・イトーキ・オカムラ・ウチダの4社が特に知られています。
本記事では、それぞれのオフィス家具メーカーの特徴や違いを、各社のホームページを参照して、わかりやすくまとめてご紹介します。
この記事のポイント
オフィスデザインを通した働き方改革を提案するコクヨ
文具メーカーとしても有名なコクヨ株式会社。オフィス家具にも力を入れています。
「ワークスタイルも、ライフスタイルだ」というコピーにも表れているように、働き方そのものにアプローチするオフィス家具を提案しています。
コクヨの特徴として、オフィスデザインを通した働き方改革まで提案している点があげられます。
具体的には、オフィス家具を提案するだけにとどまらず、オフィス設立の検討段階から関わり、コストシミュレーション、レイアウト設計、運用・維持にいたるまで、さまざまなフェーズで働く環境の計画プロセスを提案しています。
豊富な納入実績(年間25,000件以上)を武器に、企業ごとの特徴やニーズに合わせたオフィスレイアウト、働く環境を提案しており、さまざまな実績のケーススタディをホームページからも閲覧することができます。
官公庁や公共施設、デベロッパーや建設担当者からの信頼も厚い
コクヨのオフィスデザイン実績のなかで特徴的なのが、官公庁や公共・文化施設への納入です。
特に美術館・博物館への実績が強く、展示用のガラスケースのための特設サイト「e-THEORIA.com」を開設するほど。
根津美術館やあべのハルカス美術館、東京国立博物館などにも納入しています。
さらに、デベロッパーなどの建設担当者からの信頼も厚く、日経アーキテクチュアの「採用したい建材・設備メーカーランキング オフィス家具部門」において、2012年から2015年の4年連続で1位を獲得しています。
次世代の働き方と働く環境について研究するWORK SIGHT
コクヨは、世界中の組織の働き方やワークプレイスを紹介する情報媒体「WORK SIGHT[ワークサイト]」を運営しています。
ワークスタイル戦略情報メディアである「WORKSIGHT」は、年に2回発行される紙媒体と、随時更新されるウェブ媒体のふたつのメディアを展開しながら、定期的に編集部主催のイベントを開催し、連動した研究と情報発信をおこなっています。
こうした働く環境に関する研究と情報発信を積極的におこないながら、オフィスデザインを通した働き方改革を提案するコクヨは、オフィス家具メーカーにとどまらない活動をつづけています。
最先端なオフィス環境を提案するイトーキ
1890年創業、120年以上の歴史を誇る株式会社イトーキは、革新的で先進性をもった高度なプロダクト製品を提供していることで知られています。
近年発表された「LANSheet」は、有線LANのようにケーブルの接続の必要がなく、かつ無線LANのように電波を飛ばすことなく、情報漏えいの心配をなくし、設置工事も簡単になるプロダクトです。テーブルの上に敷いたシートの上にPCを載せるだけでネット環境に接続できます。
その他イトーキの先進性は、倉庫などでの自動ピッキング装置の開発や、地震に対する耐震性能を追求しオフィスにおける災害対策にも乗り出すなど、さまざまな分野においてオフィス家具を通したイノベーションを追求しています。
オフィスでの健康管理を推進するWorkcise
そのようなイトーキの革新的な取り組みが顕著に表れているのが、「Workcise」と呼ばれる試みです。
「Workcise」は、「Work(働く)」と「Exercise(健康活動)」を組み合わせた造語で、誰かの席まで歩いて移動するなど、オフィスでの些細な行動を健康につなげる取り組みです。
立ったまま仕事ができるスタンディングスポットの提案など、Workciseを誘発する空間設計や、持ち歩くだけで「立つ」「歩く」などのオフィス活動を計測するアプリ開発のほか、Workciseが起こるオフィスづくりに適した家具製品の開発など、プロダクトから空間までを通して健康を意識したオフィス家具の提案をおこなっています。
こうしたWorkciseへの取り組みは、単なる健康に良い行動を取ろうという啓蒙ではなく、日々の働き方への意識改革が背景にあります。
ICによる効率化だけでなく、個々人の意識からも働き方を改革しようという、イトーキの先進性が垣間見える取り組みと言えるでしょう。
社外とのビジネス交流拠点「SYNQA」
イトーキは、社外との交流をもとに新しいビジネスを模索、創出、実践する場として、ITOKI Tokyo Innovation Center「SYNQA[シンカ]」を運営しています。
「SYNQA」には、自由に使えるカフェや、イトーキの共創企業や産学連携のためのプロジェクトスペースなどを完備しているほか、さまざまなイベントやワークショップを開催できるセミナールームもあり、企業の枠を越えた新しいビジネスを生み出し、発信する場として利用されています。
熟練の研究開発と物流システムのオカムラ
自動車製造からキャリアをスタートさせたオカムラ(株式会社岡村製作所)は、最新の先進技術を一貫した自社製造、熟練した手作業による製造を軸にしたオフィス家具を生み出しているメーカーです。
ユーザー調査やシミュレータの開発、大学や研究機関との共同研究を通して、外部からの知見を取り入れた研究開発を通したプロダクト立案をおこなっていることが、オカムラの特徴です。
動線から考えられた物流システム
そうしたオカムラの研究が大きく貢献している分野が、物流システムです。
物品の保管や検索、仕分けを一括管理するシステムや、高密度収納による移動棚、ロボットを用いた輸送など、物流システムのハードからソフトまでの導入をサポートしています。
オカムラは、こうした物流システムの開発により、自動車開発や物流倉庫、医療の現場などでもさまざまな実績を誇っています。
情報環境の構築からオフィス環境を提案するウチダ
ウチダ(株式会社内田洋行)は、ICTなど情報機器のオフィス環境への導入が顕著なオフィス家具メーカーです。
ウチダが開発した「SmartInfill」は、建築躯体に直接施工することなく、アルミフレームのベースにモジュールをマウントすることで、簡易にICT環境を導入することを可能にしたシステムです。
このようなオフィス家具を用いた空間設計と情報設計を組み合わせることで、主に医療や教育の現場で、豊富な導入実績を誇っています。
オフィスビル全体の総合管理システムまで構築
情報機器の導入などによるオフィス環境の構築を、ビル全体にまで広げ、ビルの総合管理までおこなっていることが、ウチダの特徴です。
「UCHIDA IoT Model」は、ビル全体に情報環境を構築することで、センサーネットワークとビル全体の総合管理システムが連携し、オフィス環境の分析から制御までを一環しておこなうことができる仕組みです。
ICTによるオフィス環境の提供だけでなく、空調などの設備機器とも連携し、CO2濃度の管理など、物理的な環境の制御を総合的に管理しています。
ワークスタイル変革のための「Change Working」
オフィス家具を通して情報環境の構築を提案するウチダは、ICTなどを駆使した働き方改革を推進するため、「Change Working」と呼ばれる取り組みをスタートさせました。
「Change Working」では、オフィス家具やICTを用いた働く環境の構築支援を、豊富な実績を背景にコンサルティングサービスを展開しています。
こうした取り組みを発信するために、「Change Working マガジン」の発行や、イベント・セミナーの開催など、積極的な情報公開をおこなっています
オフィス家具メーカーを起点としたキャリア・転職は?
オフィス家具メーカーからのキャリアアップは、どのようなルートが考えられるでしょうか?
いずれも大きな会社ですので得意分野にもよりますが、ファシリティマネジメントやFF&E調達代行、オフィス移転マネジメントなどがあげられます。事業会社やPM/CM会社などの発注者側の会社も選択肢としてはあるようです。
仕事探しについての情報は下記をご参照ください。
・「建築の転職方法や求人情報サイトの使い方をすべて解説します」
転職エージェントや求人サイトなど、建築の仕事探しについて解説した記事です
・「建築の働き方が相談できるフリーランチのキャリア相談」
自分の実績のウリになるポイントや具体的な転職先について相談できます。
働き方から考えるオフィス家具メーカー
今回ご紹介したオフィス家具メーカーの特徴は以下の通りです。
・コクヨ:オフィスデザインを通して次世代の働き方・働く環境を研究している
・イトーキ:オープンなイノベーションによって新しいビジネスと働く環境を提案
・オカムラ:熟練の研究開発をもとに効率的な物流システムを提案
・ウチダ:情報環境の構築と働き方改革の両輪
一口にオフィス家具メーカーと言っても、それぞれに特徴を持っている一方で、各社で新しい働き方への取り組みは進められており、働き方や働く環境の提案を通して、自社のオフィス家具を導入してもらうきっかけを作ろうとしています。
各社の戦略や事業領域も変化してきていますので、あらためて情報収集をされることをおすすめします。