リノベーションによるまちづくりで、「建築キャラ」が地方を拠点に楽しくまちを盛り上げる方法とは?

もちのやです。現在私は地域おこし協力隊として、空き家をリノベーションして活用し、移住者を増やすための取り組みに携わっています。空き家の納屋をつかった新しいライフスタイルの提案や、同じくまちで活動する仲間が開いたお店の改修など、小さなところから活動しています。

自分たちの手で店舗を改修

まちの魅力を改めて掘り起こし、そこに新しい需要を生み出すしくみは多くのまちで、様々な方法で取り組まれているなと感じます。

空き家のリノベーションが一般的になっている中、馬場正隆さんの著書『エリアリノベーション』では、これまでの「まちづくり」を脱却して、まちの中の小さなエリアに集中的にリノベーションによる事業開発をあつめ、かっこよく活気のあるまちをつくりだすための方法を考察していて非常に参考になりました。

そこで、『馬場正尊「エリアリノベーション」に学ぶ建築・不動産の新しい働き方でその内容についてご紹介しました。

馬場さんの著書では、これまでの専門家にまかせて細分化してしまう方法ではなく、分野の垣根をなくし、建物をつかう立場に立って設計をすすめたり、設計者が自らDIYでリノベーションしていく取り組みをすすめたりといった様々な取り組み方をする人たちのネットワークがあるまちが盛り上がっているという見方をしています。

エリアリノベーションの活動が活発なまちではさまざまな性格を持ったプレイヤーが活動していますが、その中でも「建築キャラ」「不動産キャラ」「グラフィックキャラ」「メディアキャラ」という4つのキャラクターは必須だと言います。

今回は「建築キャラ」を例に取り、これまでの建築技術者の取り組みとまちへの関わり方でどのような違いがあるのかをご紹介します。

 

「建築キャラ」は建築士だけじゃない―― まちに関わるプレイヤーの流動化がリノベーションによるまちづくりを活発にする

立山クラフト

まず「建築キャラ」とはどんなキャラクターなのかというと、建築を専業にしている人だけではなく、自分がまちに関わる中で自然と建物の改修計画に携わるようになり、自分なりのアイデアをつぎこんできた人に共通しているキャラクターだと言えます。

建築を専業でやっていない人たちは、これまでの「まちづくり」の中では専門家にまかせて自分は引いた所から見ていようという場合が多かったのかもしれません。しかし、エリアリノベーションの現場ではそんな線引きを気にせず、自分たちが住んでいるまちのためにやれることは何でもやってやろうという気概のある人がやっちゃった、という勢いを感じる物件が多々見られます。

そこには、少しバランスは悪くても自分たちの居場所をつくり、自分たちの住むまちならではの良さを押し出した空気感があります。その場所にしか無い独特のいびつさ、ヤンチャな感じが活発なまちを演出するのだと感じます。

きちんと設計された、端正だけど使いこなすためのハードルが高い施設に変わり、少しぐらいツッコミどころがあっても親しみやすく使いやすい施設を求めている人がまちの現場レベルでは多く、人が集まりやすい雰囲気が現代のまちづくりのコアになっています。

また、地方で事業を始めるメリットとして、都会に比べて格段に初期投資が少なくてすむということが挙げられます。建築や不動産専業でなくとも、家賃が安い物件を探しだし、自分たちの手で改修を行う意欲があれば誰でも始められるのです。

設計や施工の経験に関わらず、デザインやグラフックに自信のある人、元から手づくりのクラフトが好きな人がいれば小さな場所がすぐに作り出せるのです。

私も現在地域おこし協力隊として活動する中で、 小さなまちで「建築キャラ」的な立ち位置で建物の改修をすることで事業づくりのサポートをしようと思い活動しています。一見難しそうに見える仕事を分解してみんなでできることはみんなでやってみようという状況に持っていけるのが「建築キャラ」の強みだと感じています。

自分たちで床を張ったり、壁に珪藻土を塗ったりしながら、自分たちで場所の空気を変えられる体験を一緒にできるのが、その場所の空気を作り出すきっかけになります。

この作業は意外に簡単にできるよね、ここは職人さんに頼んだほうがいいよね、ということが肌で分かる人が増えてくることによって、自然とまちは生まれ変わるのではないかと感じています。

「建築キャラ」がリノベーションによるまちづくりのためにできることとは?

まちづくりアイデアを考える

それでは、「建築キャラ」がリノベーションによるまちづくりのそれぞれの事業の中で活かせる強みとは何なのでしょうか。

まず建物の改修を行う中で、設計や計画だけを立てるのではなく、実際に自ら手を動かして周囲のプレイヤーと一緒に実際に場をつくる取り組みを行うことも重要になります。

また設計の中でも場所をつくる時にかかる予算だけでなく、その場所を活用する時にかかる事業予算までを見越す必要があります。

その場をかっこ良くするためにはどれだけの投資が必要で手持ちの資金の中ではどこまでのことができるのか、という事を経験の中で捉えていなければいけません。

例えばひとつひとつの事業が100万円規模の少予算で取り組むことになるので、きちんと図面を描く時間が確保できないケースもあります。

即興的に空間の方向性をつくり、実際に施工する際の予算・スケジュールまでを捉えてそれを説明できることが重要になってくるわけです。

その際に予算・労力・工期など様々な点で足りない部分が見えてきますが、そこをほかのプレイヤーと連携して、足りない部分をどのように補っていけるのかということを考え、進めていくことになります。

建築技術者も自分なりのキャラを伸ばして楽しくまちづくりに関わる時代に

空き家の床板を使った棚作り

今後地方では人口減少と経済規模の縮小から新築需要が減っていきます。

それでもこれまで蓄えられてきたまちのストックを生かして、それぞれのまちの魅力を引き出しまちに住む人がより良い暮らしを送り、価値を生み出す場所を作り出す流れは強くなってくると思われます。

建築を専門として働く人の中でも、設計に自信のある人、施工経験のある人、マネジメントや法務といった建築を建てるための地ならしを中心にやってきた人とバックグラウンドは様々です。

それぞれが持つ経験を生かして活動する中で、「建築キャラ」だけではなく、自分の中に眠る「不動産キャラ」「グラフィックキャラ」「メディアキャラ」といった別のキャラクターが出てくるのではないでしょうか。

地方では、自分でやれそうなことはとりあえずやってみるという気楽さがあります。立場にとらわれず、その楽しさを存分に味わえるのが、リノベーションによるまちづくりの一番の魅力です。

自分が思い入れのあるまちに対して、日常的に考えていることを素直に出していける場所が増えていくと考えれば、地方で生きていくことはとても面白いです。そんな面白さを全国各地で広めている人が日々活動の場を広げています。

私も自分が住んでいるまちでさらに楽しめる場所を作っていきたいと思っていますし、他のまちでの取り組みも含めて、実際にリノベーションによるまちづくりに関わっている方をご紹介していければと思っています。

実際に地方で空き家を使った事業をしてみたいと思った方は、ご相談いただければさらに詳しくお話することも可能です。フリーランチのキャリア相談では、地方で建築・不動産に関わるスキルを活かす働き方・生き方についても対応いたしますので、ぜひご利用ください。

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