大手人材紹介会社でアトリエ事務所から発注者への転職に失敗した体験談

人材紹介会社を利用した場合、どのように転職活動が進んでいくのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

今回は、アトリエ事務所出身で一級建築士の私が大手人材紹介会社を使って転職活動した際に経験した事を少し苦い体験も交えつつお話したいと思います。

私は建築学科を卒業後、アトリエ事務所に数年勤務しました。

建築に対してまっすぐ向き合う日々は大変良い経験になりましたが、当時所属していたアトリエ事務所のようなスタイルでは自分が将来独立するイメージを描くことが出来ずにいることも事実でした。

そのような日々が続いていましたが、設計事務所とは少し領域をずらした発注者側の立場にも興味が沸いたことにより、世間一般でも有名な大手人材紹介会社の門を叩いたことが転職活動の始まりでした。

※2017年2月7日追記(2016年9月8日公開)

大手人材紹介会社で専門的な求人を相談した

まずは大手人材紹介会社のホームページで、これまでの経歴や職歴等を登録するところからはじめました。

きちんと登録を完了すると、後日人材紹介会社の方から連絡が来て、転職エージェントと面談をする事になりました。

サービスを受けるにあたり、特にお金を払う事も無くサービスが開始される事に不思議な気分を抱きましたが、こういった人材紹介会社は私たちのような求職者ではなく内定先企業から紹介料を貰う事で利益を出しているので登録及び紹介が無料なのです(もちろん有料のサービスも存在します)。

面談当日は履歴書、職務経歴書、そして、ポートフォリオを用意して面談に臨みました。

私の担当になった人材紹介会社のエージェントは比較的若手の方であり、建築業界での実務経験は無かったのですが、建築学科を卒業している方でした。

そのお陰か「アトリエ事務所」や「建築家」という専門的な単語に対しても反応してくれましたので、話が進みやすかったことを覚えています。

実は同じ意匠設計者であっても所属する会社や事務所によって、得られる経験や扱う業務の質がかなり異なってきます。

その点「アトリエ事務所」という単語が通じた事で共通の認識が得られたと思い安心しました。

その上で私が取組んで来た事の核は「課題を抽出しコンセプトを作成し、具体化する」事だったと伝え、そういった経験が活かせる求人の紹介をお願いしました。

また、純粋な意匠設計職については個人で調べられる事であるので、むしろそこから少しズレた求人やプロジェクトの枠組みから関われる発注者寄りの求人など、私個人では探しきれない、こぼれてしまうような求人に興味がある事も伝えました。

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転職エージェントは建築学科卒だったが業界理解は浅かった

ただ、その後に紹介された求人案件に私が期待したようなものはほとんどありませんでした。

そのことについて何度かメールでやり取りを行いコミュニケーションを図りましたが、あまり対応は変わりませんでした。

結局のところ、「一級建築士」「経験年数」「年齢」と「作図経験」で自動的に分類された求人が定期的に送られて来ているだけのように感じました。

また、積極的に私を企業に紹介してくれたり、売り込んでくれている雰囲気も感じとることがありませんでした。

この辺りの事情は「建築業界の大手転職エージェントの仕組みとメリットデメリット」の通りだったと言えます。

エージェントにすすめられていくつか応募した求人もありますが、単純にこちらの経験年数とプロジェクト数に対して、応募先企業が若手が欲しいか経験者が欲しいかの求めるものの違いによって通ったり落ちたりしていたようにも感じました。

アトリエ系事務所では費やすエネルギーや密度に対して事務所のプロジェクト数が極端に少ないところもあり、企業によってはその実態を知らない可能性があります。

そういった点での建築学科出身エージェントのフォローを期待しましたが、実際はそこまでしてくれる余裕は無いようです。

ただし、企業のホームページに掲載していない非公開の求人や、中途採用の窓口を大手の人材紹介会社経由にしている例もあるので、人材紹介会社の利用自体は全くの無駄ではないとも私は思います。

人材紹介会社経由でアトリエ事務所から教育系商材を扱う企業に出会う

そのような不安を感じる中で、教育系商材を扱う企業が空間コンサルタント職を募集しているという求人を紹介されました。

条件としては一級建築士を持ち、デザイン経験のある人間を求めているとの事でした。よく見ると建築士事務所登録もしている設計事務所でした。

その求人は純粋な建築設計職というよりは、企画提案や空間のコンサルティング、教育系の商材やプロダクトの開発を行う体勢を強化したいという話であり、また新規事業に近い形のようで、求人要項に記載している業務内容もかなり幅が広くて応募するかどうかの判断も難しいなと感じていました。

しかし、人材紹介会社のエージェントから「応募して内定を貰うまでの段階でこちらもより詳しい状況を探るので、まずは応募してみましょう!」とも都度言われていたので、その言葉に押されて私は書類を応募しました。

実際に応募してみると作り込んだポートフォリオが珍しかったのか、最終的に内定を貰うことができましたし、面接時はデザインや空間についての話が主で、教育商材だけでなくそれを使う空間から提案したいという話をいただきました。

そのための発注者に近いコンサルティング職として、建築やインテリアデザインの知見を持つ人を求めているという話には私も大いに共感できる部分だと感じました。

ただ、実際の細かい業務内容や待遇等把握については依然不明瞭な部分もありましたので、それを明解にするべくエージェントに確認をお願いしました。

大手転職エージェントに相談した体験

内定が出た!と思ったら人材紹介会社のミスで内定消滅の危機

内定の連絡をいただいた後、信じられない事が起きました。

突然エージェントから電話があり、内定先企業を怒らせてしまい私の内定を取り消したいと言われているとの事でした。

どうやら私が確認をお願いした事項を、窓口であるエージェントとは別の人間がかなり不適切な形で問い合わせたらしく、相手の心象を害してしまったことが原因のようでした。この事態は私にとっては寝耳に水でした。

エージェントも私には全く非の無い事を認めていて、上長とミスをした人間が相手先に謝罪を行い、誤解を解くので待っていて欲しいという事で決着しました。

結果、誤解はちゃんと解けたものの、相手先企業と再度面接を行うことになってしまいました。

再面接では細かい確認や条件交渉が不可能に

再面接を受けるにあたり、こちらからの質問や交渉は避け、とにかく入社意思だけ伝えるようにと言われました。

実質、内定後の業務内容確認や待遇の確認及び交渉が不可能になった上に、検討の余地無く入社を確定させなくてはいけない事態になったため、これが守られなければ内定を失う可能性があるという話でした。

この時、私には他の応募で比較検討ができる程選考状況が進んでいた企業がなかったことと、それらの企業で内定が出る確証もありませんでした。

普通の状態でなら、内定後、入社の是非を判断する期間を交渉する事もできるのでしょうが、残念ながらその猶予が認められる状況ではありませんでした。

気の動転や疲れもあり、私は入社前提で再面接を行い、すぐに再度内定を貰うことで入社する事となりました。

しかし、これが更なる苦労に繋がるとはこの時は知る由もありませんでした…

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人材紹介会社の交渉ミスが入社後も足を引っ張る事態に

人材紹介会社経由の確認や交渉が全くなされないまま入社当日を迎え、その日に面接を担当した役員に言われたのは「あなたは一級建築士を持っているし、これでウチも建設業登録の準備が整った。管理建築士も変えたかったから。」という主旨の発言でした。

この発言には内心戸惑いました。そんなことは求人要項にも、人材紹介会社の説明にも、面接時にも一切出てこなかったからです。

違和感は他にもありました。建築が本職でない業界に転職したため、経営陣が持つ建築の専門性についての認識が、「3年経てば一人前」という営業など他の職種と全く同じ認識であったことです。

また、仕事の領域も特殊な上に、資格者を欲している割には建築の実務的な経験は望めなさそうな環境であることもわかり、将来いざという時に転職が可能なキャリアを積めるのか大変不安に感じました。

転職当時は発注者というポジションに憧れもありましたが、実際に入社してみるとまとまった期間設計や施工といった分野で技術を積んでからでないと、成果を発揮しづらいことを痛感しましたし、発注者は権限も大きいですが、完成した技術者を求めており、技術的な上澄みも望めそうにありませんでした。

入社条件が違うという大きな問題もありましたが、私にとってはそもそもこのタイミングでは発注者に転職するタイミングではなかったのだろうと感じました。

最終的に試用期間終了前にこちらから退職を申し出ることになりました。

大手転職エージェントで内定取り消し!?

人材紹介会社に頼りきりではなく自分自身のために相談を

今回、大手人材紹介会社を利用したのですが、企業側から提出されたであろう募集要項と実際に求めている人材・条件にはギャップが生じうるということがわかりました。

また、担当のエージェントがたとえ建築学科を出ていても、実務経験者のリクエストと求人をきちんとマッチングできるとは限らないようです。

トラブルもありましたが私自身もそのあたりの認識が甘く、うまく立ち回ることが出来なかったこと、そして何よりも入社後の仕事内容とキャリアの形成において思い描くようなイメージができなかったことが最大の要因であったと言えます。

 

ただし、求人案件の持ち数や非公開案件の存在など、人材紹介会社もうまく使えば有益な面も多分にあるかと思います。

そのようなアンマッチや不安を払拭するべく、フリーランチではキャリア相談を通じて人材紹介会社からの紹介案件に対するアドバイスも行っております。是非ご相談ください。

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