建築系組織設計事務所での働き方、キャリアの積み方や転職先は?

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組織設計事務所で設計者として働いた先に、どのようなキャリアが待っているのでしょうか?

競合他社の設計事務所ゼネコン設計部はもちろん、発注側のコンストラクションマネジメント会社、デベロッパーやファンドなどの不動産開発・投資会社、自動車系企業などの施設をたくさん保有する事業会社などさまざまな可能性が考えられます。

この記事では、組織設計事務所での働き方、キャリアの育て方、経験を積んだあとの転職の可能性や、転職実態を解説します。
※2017年5月13日追記(2016年7月28日公開)

組織設計事務所の技術的経験値は5年間は必要

組織設計事務所での経験が評価されるためには、いったい何年くらいの勤務年数が必要なのでしょうか。

一般的に組織設計事務所で必要な経験としては、5年の実務経験がベースになると考えています。
アトリエ設計事務所よりも経験年数が必要となるのは、単純に建築の技術的な部分だけでなく、クライアントとの調整や折衝が複雑になるためです。

プロジェクトの要件定義やクライアントと連携して稟議を通す方法、ゼネコン選定や契約書や要項書の作成支援など、プロジェクトの規模やクライアントの会社規模が大きくなればなるほど、1つ1つのアクションに説明責任が求められるのです。

単純なものづくりの技術という観点からは、組織設計事務所における技術的な経験値は、小さい設計事務所やアトリエ事務所での成長速度に比べて劣ります。

しかし、組織設計事務所で身につく、大手企業から信頼されるような物言いやロジックの組立て方や、粘り強い説得や調整など、大きなプロジェクトを動かすためのマネジメント能力は、あなたの仕事の幅や可能性を高めているのです。

建築の働き方の悩み、プロに相談しませんか?

組織設計事務所とアトリエ事務所とは経験の質が異なる

組織設計事務所とアトリエ事務所では、職務経歴の積み上げ方も変わってきます。
一般的に小さい事務所やアトリエ事務所と比べて、経験できる物件数が少なくなる傾向にあります。

対して組織設計事務所では、1つ1つのプロジェクトでの経験の密度が問われます。1つのプロジェクトでどれくらいの経験の「幅」が重要です。

単純に「基本設計・実施設計を経験」と書きあらわすのではなく、「クライアントの役員説明会の説明資料の作成・プレゼン」「事業収支の算定」「フィージビリティスタディ」のように、プロジェクトの各段階毎に経験を棚卸ししていくことが重要です。

設計業務に付随する「やったことがないこと」を嫌がらないで取り組めるかが、組織設計事務所で成長するコツと言えるでしょう。

組織設計事務所出身者が転職を考える理由は?

組織設計事務所での5年以上の経験を獲得したら、どのようなキャリアを歩むことができるのでしょうか。組織設計事務所からのよくある転職先をご紹介いたします。

そもそも組織設計事務所にいて、転職を考えるきっかけはどのようなものでしょうか。
組織設計事務所からの転職理由として、下記のような相談が寄せられています。

・発注側として、より上流側から建築に携わりたい
・所属している組織設計事務所がオリンピック以降厳しそうだ
・「作品性」と「経済性(売上貢献度)」の2軸が混同されて、社内評価があいまい
・社内政治に巻き込まれてしまった
・同僚に比べて十分な経験が積めてないように感じる

※転職エージェントである僕の立場から見ると、組織設計事務所で5年働いてキャリア形成が本当に不十分なケースは稀です

組織設計事務所で働く人のイメージ

組織設計事務所出身者の次のキャリア、転職先は?

組織設計事務所でこうした悩みをいだいていた方は、どのような会社に転職されるのでしょうか。

デベロッパーへ転職する場合

組織設計事務所からの転職先の主流の1つはデベロッパーです。
とはいえ三菱地所や三井不動産などの最大手のデベロッパーに転職エージェント経由で行けるかというと、現実的に難しいです。
そもそも求人がでていないことと、求人がでても1000人単位の応募があるためです。

こうした会社には公募以外にも入ることができるケースもあり、たとえばプロジェクトで一緒になったデベロッパーの担当者からスカウトされることもあるようです。

転職エージェントでの求人は、東急不動産や野村不動産東京建物などの求人が良くでています。
応募が殺到するので激戦ですが、組織設計事務所やゼネコン設計部出身者が採用される確率が高いようです。

組織設計事務所からのキャリアとして、デベロッパーが良い点は複数の用途を経験できる点です。
収益用途と呼ばれるマンション、商業、オフィス、物流倉庫、ホテル、及び複合施設がデベロッパーの主戦場です。同一用途をひたすら作り込んできたデベロッパーには、非常に多くの知見が眠っています。

デベロッパーは会社によってかなりカルチャーの差がでます。また、技術者の扱いも、総合職的な扱いをしてくれる会社と非主流の技術者として扱われる会社とで2分されます。
入社後の自分がどのような立場・権限を持つのかを確認した上で、転職先を選びましょう。

これまでいた組織設計事務所と違って、デベロッパーの経営は安定しています。建物から得られる利益というのは非常に大きいため、責任も多い反面、じっくりとプロジェクトに向き合うことができるのでやり甲斐も感じられるでしょう。

しかし、非財閥系のマンションの専業デベロッパーは、景気の浮き沈みで一気に景気が傾きますので、他に選択肢があるならお勧めはしません。

発注者サイドのPM/CM会社に転職する場合

組織設計事務所からの転職先として、発注者サイドのプロジェクトマネジメント(PM)コンストラクションマネジメント(CM)の会社に転職することが考えられます。

こうした会社に転職する利点としては、転職先でもスキルの積み上げが期待できるからです。
設計や施工といった技術力の積み上げは設計事務所やゼネコンに比べると及びませんが、プロジェクトマネジャーやコンストラクションマネジャーとして、建設プロジェクトの発注の経験を積むことができます。

PM/CM会社では、発注者の右腕となって、たくさんの建設プロジェクトの発注を支援しています。
おおよそ設計で経験できる物件の3倍以上の発注を経験することができるはずです。

様々な発注者と仕事をすることによって、いろいろな会社の発注方法や発注スタイルを経験することができます。

また、発注先としてデザイナーや建築家、組織設計事務所やゼネコン、特殊な資材等を生産するメーカーとのコネクションが多数できるため、あなたが次の転職先でこれらの人脈を生かすことができるでしょう。

将来的に発注者を目指している方も、プロジェクトマネジメントやコンストラクションマネジメントの仕事を経験することによって、いろいろな発注者のやり方を吸収することができるようになります。

組織設計事務所からPM/CM会社への転職の実態について詳しく知りたい方は、設計や施工からコンストラクションマネジャーへの転職事例や仕事の内容を紹介をご覧ください。

事業会社の施設部門に転職する場合

製造業などで施設をたくさん持っている会社の施設担当者になる道が考えられます。たとえば日産やトヨタ系列の会社で管財部や施設部といった部署に転職される方もいます。生命保険会社や信託銀行など管理している資産がたくさんある会社も稀に求人を出しています。

事業会社では、建設プロジェクト全体を見据えてコントロールできようになるのが大きなメリットです。また、設計事務所やゼネコンでは考えられないようなすばらしい福利厚生もついています。

反面、会社の本業(たとえば自動車製造)とは異なるスキルセットを持つ人間になりますので、どうしても外様的なポジションとして扱われがちです。
また、社内に建築の技術者も少ないので、技術的な上澄みが望めなくなります。

きちんとした発注図書の作成や選定プロセスを実行して、発注能力を高めていかないと次の転職先に困る可能性があります。

特にスキルレベルが十分でない若手設計者がいきなり事業会社に転職するのは、キャリア形成の観点から大きなリスクが存在しています。
若手設計者が事業会社への転職事例をまとめた大手人材紹介会社でアトリエ事務所から発注者への転職に失敗した体験談をご覧ください。

事業会社への転職は、組織設計事務所での10年以上のまとまったキャリアを持って、裁量権の高い転職先の選択肢として、転職してみるのはいいでしょう。

ゼネコン設計部に転職する場合

数年前は考えられなかったのですが、ゼネコンの設計部が募集をかけているケースが増えています。
2014年の公共工事の品確法の改正により、公共施設でゼネコンが設計施工一括発注方式(デザインビルド)で参画できるようになりました。

準大手のゼネコンは、売上高に比べて設計者の数が足りなくなってきているため、設計者の採用を増やしています。

組織設計事務所からの転職という観点では、ゼネコンの設計部の設計と、組織設計事務所の設計とは、大きな違いがあることは覚えておきましょう。
設計の技術は蓄積されるけど、異なる設計方法を新たに学ぶくらいの感覚でいたほうが新しい環境に早くなじむことができるはずです。

大手ゼネコンは上場企業がほとんどですので、会社を選べば待遇は組織設計事務所時代よりも良くなるでしょう。

より規模の大きい組織設計事務所に転職する場合

組織設計事務所から組織設計事務所という転職ルートも考えられます。
たとえば三菱地所設計やNTTファシリティーズのように、大口顧客があり、売上が安定しているように見える大手組織設計事務所に行きたいと考えられている転職希望者も多いです。

若いうちに転職するにはいい選択肢だと思いますが、組織設計事務所にいて転職を希望される方の悩みは組織設計事務所のビジネスモデルから起因していることが多いため、数年後に再び悩むことが多いようです。
また、大手組織設計事務所といっても、会社によって社風が異なりますので、組織設計事務所ってみんな同じ?業界大手10社の概要大公開!を参考に情報収集を進めてみてください。

中堅以下の組織設計事務所にいる場合は、大手組織設計事務所をワンステップはさんでから、発注側に行くというキャリア形成も考えられるでしょう。

ただし、多くの組織設計事務所は中途採用の待遇が十分でない現実があります。

重要なプロジェクトはプロパー(生え抜き)の社員が担当していたり、入社直後の待遇が契約社員からであったり、パワハラ等の問題がある管理職の下に中途社員をあてがう会社が多いのです。

組織設計事務所への中途での転職は、十分な情報収集を行ったうえで決断されることをお勧めします。

組織設計事務所で働くイメージ

組織設計事務所からの転職は、次のキャリアの選択肢があるかどうか?

組織設計事務所からの転職は、次のキャリアの選択肢がありそうかという観点で職場を選ぶことが重要です。

  • 組織設計事務所同士の横の転職やゼネコン設計部への転職を目指す場合は、設計者としての裁量権が転職前と後でどのように変わるかを確認した上で転職してみてください。
  • 事業会社やデベロッパー、PM/CM会社などの発注者側への転職を目指す場合は、自分のスキルが活かせるかを十分に吟味してください。

キャリア形成の観点からは、組織設計事務所を経験した後に、デベロッパーやPM/CM会社で働くことは、キャリア形成の王道になりつつあります。

発注者としてのスキルと技術者としてのスキルを並行して伸ばせるため、技術者としての選択肢を減らさずに経験を積むことができるのが魅力的です。

フリーランチのキャリア相談には、多くの組織設計事務所出身の方から働き方や転職先に関するご相談をいただいています。

次のキャリアアップをフリーランチと一緒に考えてみませんか?詳細はキャリア相談の案内ページをご確認ください。

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